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フェアリーブレイド ~旧き約定の剣と、新しき紲の剣~  作者: エキストリーム納豆
四. 冒険者達
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31. 冒険者ガメオ王都へ行く

 神聖王国。

 魔王に立ち向かう為に勇者をバックアップする組織として神の信徒たちが集まったのを母体に、およそ1000年前に建国されたと言われているその国は、現在も魔物の脅威に晒される世界に於いて最も重要な国として平時には栄華を誇っていた。

 その王都は大陸で最も栄えた都と嘗ては言われたものだが、現在は魔導技術の発達で各都市や外国の都市も発展目覚ましく最大の都とまでは断言できない。


 ただ、田舎育ちの少年や大した旅の経験もないフェアリーにとっては、これ以上なく刺激的な新世界であることに間違いはない。




「ほ~~~・・・すげぇ」


『建物大きい!人いっぱい!お店たくさん!』



 まだ門の前だというのに、圧倒してくる巨大なスケールの景色を前に語彙が労働を放棄した。

 だがそこにいる人々の口から漏れ聞く話を総合すると、これでも最強の勇者とかいう人物が負傷して半年以上経つ今もなお臥せっており、加えて蠢動する魔王派なる組織や活性化する魔物と言った悪いニュースが続き活気はかなり落ちているらしい。

 ザアレは『本気だともっとすごいの?!』と感想を漏らしたが、ガメオは逆に助かったと思っていた。

 地図らしきものは受け取っていたが、これ以上人がごった返していたら門での足止めが長くなるし、目当てのドワーフの職人の許に辿り着けるのか余計不安だったからだ。

 そもそもその職人が今もここに居を構えているかが不明だが。



『それにしてもナントカの指って、変わった名前だね?』


「仇名とか称号とかそう言うのだろ多分。まー実際相当変わったドワーフらしいけど、話聞いてくれるかな」



 旅姿の子供二人組と言うのはこういった都会の方が却って目立たないらしく、ガラの悪い男たちに絡まれるような事も特になかった。

 しかし地図が不正確というよりヴギルが居た頃との不整合もあるのだろう、工房街に辿り着く前に迷ってしまい、一泊しないとどうにもならない時間になってしまった。

 そこで冒険者ギルドの宿を借りることに決めたのだが、そこでもあまりに近代的で巨大な建物にガメオはショックを受けた。

 拠点の街のギルドでも故郷の集会所などとは比べ物にならないぐらい立派なのに、さらに上の次元過ぎて良く分からない構造物がドン、である。

 さらには受付や対応も信じられないぐらい丁寧であり、そんな施設が冒険者なら規定通りの料金で宿を利用できるのだから、都そのものの規模や熱気と合わせてずっと殴られ続けている気分が止まらなかった。

 さすがに料理は多少高くついたが、それでも各地の新鮮な食材を腕のいい料理人が腕を振るった質の違いを考えると十分以上に元が取れていると言えた。


 ガメオは正直、自分のように妙なショックを受けずに心から純粋に楽しんでいる様子のザアレがうらやましかった。



『探すのは明日でもいいから、もう少し街を見て回ろうよ!』


「ん・・・そうだな。夕飯にはちょっと早いぐらいだったしな」



 少し陽が傾きかけた時刻には、天を衝く神代の巨人か何かが戯れに作ったようなこの街はまた違う表情を見せた。

 帰路に就く人が喧騒に見え始める中、夜だけ開く魔道具ランプ付きの露店が大通りの両サイドにいそいそと準備を始め、雑然としながらも全体としては不思議とどこか秩序だった動きのようだった。

 その景色を二人で眺めていると、流石に少しづつ空の赤味が強くなってきた。


 ふと、気持ち行き交う人のざわめきが大きくなった気がした。



「シグナム様だ!炎の勇者シグナム様が≪超嵐亀(トーネトータス)≫討伐から凱旋したぞー!」



 通りを埋め尽くす人波の中に一段高く、馬に乗った騎士たちの一団が見えた。

 その先頭には、浅黒い肌に火のように真紅の髪をした鎧姿の女性がいた。


 炎のシグナム。


 金勇者の称号を持ち、四本の聖剣の一つを与えられた最強の勇者の一角。

 その二つ名の通り炎の魔法を得意とし、それ以外がほとんど使えない特化型だが威力は強力で、尚且つ彼女に率いられた隊は燃え上がる勇気を持って敵を呑み込む烈火のような働きを見せると言う。

 元は騎士団所属だが現在は聖剣の勇者として独立した立場となっており、騎士団や神官戦士から隊を借りるという大きな権限が王と教会から与えられている。


 人々の歓声に笑顔で応えるその姿は、まさに英雄伝説の主人公だ。



 ふと横に何かが気になって目を遣ったガメオは、人々に囲まれるシグナムを見るザアレの様子がおかしい事に気付いた。

 顔面蒼白で目の焦点は合わず、呼吸は不規則で粗く浅く、全身をフルフルと細かく震わせていた。

 まるで光と祝福に包まれるあの勇者の事を、絶対見てはならない恐怖の顕現を目にしてしまったかの様な視線で見詰めながら、心を圧し潰されているようだった。



「・・・ザアレ、宿に戻るぞ」


『―――ッ、ァ―――!』


「話は後で良い。今はここを離れるんだ」



 ギルドに取った部屋に戻った時には陽がますます傾き、影の方が多くなった通りに並ぶ魔導街灯がポツポツと灯りだしていた。

 勇者を称える歓声はなおも続いていたが、通りに面した部屋を選んでしまった事をガメオは少し後悔した。


 ギルドの職員が「立ち眩みを起こした宿泊客」のために、気を利かせて何か飲み物を持って来てくれた。

 翅を隠す余裕もなくなったザアレの正体がバレないかガメオは冷やりとしたが、扉を開けずに部屋の前に置くという非常に心配りのあるサービスだった。

 あえてやや温めに用意されたその飲み物で、漸くザアレは喋れる程度には落ち着けた。

 美味なものにはそれだけ強い精霊が宿り、その分フェアリーなどの妖精族にとってもより大きな効果がある。

 ほんのり果実の香りと不思議な甘みのあるそれは、人名を冠した何とかカクテルとか言う名前だったか。


 しかしザアレの口から語られた内容で、今度はガメオが戦慄する番だった。



『あの人―――赤い髪の女の人、フェアリー族を殺した事がある。それも一人二人じゃなく、た―――たくさん、数えきれない、ぐらい』


「何だって?あの、勇者って呼ばれてた奴が!?」



 答えは、恐怖と憔悴の残滓が抜けないままの首肯だった。

 妖精の眼というのは魔法や精霊に関する不思議なものを見ることができる一方、そんなものも見えてしまうのか。

 その視界がどの様な恐ろしい存在を捉えてしまったのか、ガメオには想像もつかない。

 ザアレの頭に、剣ダコだらけの暖かい手が乗せられた。



「心配するなよ、今はおれがいる。見ててやるから休めよ」



 目に涙を溜めたまま、ザアレはガメオに思いっきり抱き着いた。

 いつも通りの腕力や勢いがなく、体から震えが抜けていないのがハッキリと分かった。


(ここは思ったより長居しないほうがよさそうだな・・・)と、ザアレが眠りに就くまで見守ったガメオは一人考えていた。

 影の薄かったシグナムさんをやっと出せましたやったぜ。

Q:トーネトータスってどんな魔物?

A:ガ○ラ。

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