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フェアリーブレイド ~旧き約定の剣と、新しき紲の剣~  作者: エキストリーム納豆
四. 冒険者達
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28. 冒険者ガメオ

 数十匹の異常肥大した鼠の魔物・ビッグラットの群れの左右から複数の≪火矢≫と≪風刃≫の魔法が撃ち込まれ、逃げ場がなくなったところに前衛が殺到した。

 その先端を最も早く駆ける、冒険者となるには些か幼い黒髪の少年の手には使い込まれた()()()()()()()があった。

 体格と比べると普通のロングソード程度に見えるそれが鮮やかに振るわれるたび、瘴気に侵され異常化した命を確実に奪っていった。



「へえ、ガキと思ったが意外とやるじゃねえか。剣筋は粗いが狙いもタイミングもいい、訓練よりも実戦で鍛えたクチか」



 初級冒険者の研修を兼ねた合同依頼の引率に付いてきた斧使いの中級冒険者が、黒髪の少年冒険者に賞賛の意を込めた声をかけた。

 だが、それは半分誤解だった。

 かなりの実戦は経験しているものの、間違いなく達人と呼べる剣士の正式な指導を受けてこれなのである。


 ただ、少年ガメオの身体能力は獣人一歩前並み、強敵との死闘で培われた戦闘勘は一人前以上なので、同じ初級である他を露骨に引き離しているのである。




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




『ガメオの剣、生き返ってから意外と様になってませんかね?』


『力任せの硬さが取れてやっと柔らかさが入ったぐらいか。技を直接体に通すのが効いたのか―――死線をくぐった経験なのかはわからんが』



 飛竜討伐戦から眠り続けていたガメオが一月振りに目を覚ましてから漸く体を動かせるようになると、それまでどれだけ訓練に勤しんでも素人丸出しの力任せ剣術から脱却できなかったのが、明らかに技にとって必要な柔らかさを手に入れていた。

 と言ってもやっと技の概念を手に入れた剣の初心者レベルで、その中にヴギル達の剣の影響が見て取れるといった具合だ。

 とりあえず訓練で武器のみでの打ち合いならば、フィジカルの差でセバーやピアルザ相手には五本に一本ぐらい取れる程度にはなっている。

 しかし妖精郷と言うのは少年にとって学べるものはあまりにも少ない。


 リハビリを兼ねた訓練で既に半年近くが経過していた。




「・・・冒険者?おれが?」


『妖精の剣だけ学ぶのは、恐らくはこれ以上は枷になる。お前は人間で、加えて実戦と実践の中でこそより多く実りを得る様に思えるからな』



 ヴギルが提案したのは、ガメオに冒険者としての経験を積ませることだった。

 戦いの技術だけでなく様々な技術や知恵を学ぶ生き方として、命さえ失わないならこれ以上最適なものはなく、ヴギルと一緒にパーティーを組んでいたランツェも賛成した。

 さらには通常は頭を悩ませる最大の問題である拠点についても、もしもの場合は各地に道が空いている妖精郷と言うチート拠点を頼れるのだ。



『ま、手っ取り早く色々覚えるには最適――最低限の下地があればだけどな。オレッチがやってた頃とも大した違いはねーって外回りの物見も言ってるし、まー今のお前なら大丈夫だろ』


『しかしここで、魔剣が目立つという問題が出てくる。冒険者志望の子供が其のような物を行く先々で見せびらかしていた場合、どんな問題が起こるかなど言うまでもあるまい―――そこで、だ』



 机の上にゴトリと、鞘に入った一振りの剣が置かれた。

 魔剣は剣としては大振りで柄も両手で持てる造りなのに対し、それよりおよそ半分よりちょっと長い程度の長さで完全に片手用。

 所謂ショートソードと言うものであった。



『戦士団の予備として余っていた魔法も仕掛けもない、正真正銘何の変哲もないショートソードだ。人の目がある場所ではそれを帯びて使うと良い。この位であれば農民の倅あたりが親から貰ってもおかしくないからな』


「人目に付かない所でだけ魔剣使うのはいいんだけどさ、でかい魔剣を持ち歩くには背負うしかないのはどうしたらいい?」



 その時、壁に立てかけられた魔剣がフワリと宙に浮いたと思ったら、そのまま見えない布に包まれるように消えた。

≪収納≫の魔法だ。



『えへへ、そこはバッチリ任せてよ。ちゃんとあたしが持ってるから』



 いつもの様に屈託のない、それでいて悪戯な笑みのザアレがガメオの隣に降り立った。

 それと同時にモリナシの香りが室内に軽く漂った。



「・・・ちょっと待って。何か、まるでザアレが一緒についてくるみたいな話になってるように聞こえるんだけど」


『まるで、じゃないよ?一緒にいるの、嫌?』


「いやそうじゃなくて、危険じゃないのか?瘴気が増えて魔物も増えてるし、フェアリーを狙うロクデナシ的な人間だって珍しくないんだろ?」


『今のザアレであれば問題はない。鱗粉や血を通じてガメオとの(きずな)が強く結ばれて瘴気への抵抗力は今までの比ではない。またザアレの力は同じフェアリー族からさえも感知できないレベルで身隠しする事が可能だ。自分一人隠れるだけなら紲を結んだ者以外、この世のどこにも見つけ出せる者はいない』


『ねえお願いガメオ、邪魔はしないから連れて行って』


『ここまで言われてんだ、いい加減覚悟決めろ』



 全方位から同時に攻められ、暫くの全く無駄な逡巡の末にガメオは折れた。



「・・・あーもうわかったよ!付いて来ていいよ!」


『やった、ありがとう大好き!』



 不安げな表情を一瞬でぱーっと明るくさせたザアレが、ぴょこんと軽く跳んでガメオの首に抱きついた。



『只一つ、強く心に留めて欲しい。ザアレを戦いの力としては考えない事だ』


「それはもちろんいいけど、何でなんだ?」


『それがフェアリー族の≪祝福者≫としての意味を失わせる事だからだ』


「・・・?」


『だから、戦士長は一番大事なとこで難解な物言いを――あーもうオレッチが説明するわ。簡単に言うとフェアリー族ってーのは、「殺すつもりの攻撃で敵を殺しちまった」場合、オレタチみてーに≪戦士化≫しちまうのさ。そして後戻りは絶対に出来ねえ』



 フェアリーは戦士化した者を例外とすれば身や気配を隠すのをはじめ、あまり戦闘向きとは言えない魔法が基本的に得意だ。

 それでも使い方次第では殺意を達成するための十分な攻撃手段になる。



『我等戦士と言うのは、戦わないフェアリー族を守るために在り方の本領から外れた者だ。ならなくて良いのなら―――なってはいけない』




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~




『お疲れ様!ガメオ褒められてたね!』


「あー・・・素人の割にはやるってさ」



 拠点に選んだ街の冒険者ギルドで報酬、というより実質支度金に近い金額を受け取ったガメオが建物の外に出たところでザアレが声をかけた。

 ビッグラットの群れを駆除するのは初めての冒険者に取り敢えずやらせるのに最適で、街からの依頼と言う形で登録したばかりの者に研修を兼ねて合同でやらせるのが制度として出来ている。

 もちろん冒険者と言う自由業なので受けないのも自由だが、簡単な上に通常よりも相当色のついた報酬を取らないと言う意味はあまりない。


 フェアリーは触覚と翅さえ隠してしまえば人間の少年少女と大差なく、ザアレは整い過ぎて目立つ顔をわざと汚したうえでフードを被っていた。



『褒められたんだから素直に喜べばいいんじゃない?』


「まー、それもそうなんだけどな」



 宿を探してしばらく歩いていると、何かの気配がした。

(あ、これランツェが言ってたやつだ)と察した時には、三人組のガラの悪い男たちがニヤニヤしながらガメオを取り囲んでいた。

 身なりからすると冒険者のようで、ますますそれだと確信した。

 初心者狩りと言うやつだ。

 ザアレは状況を察知した瞬間に姿を消していたが、紲を繋いだガメオにはすぐそこにいるのが分かる。

 フェアリーの本気の身隠しと言うのは、目の前で消えても「最初からそんなのいなかった」と見ていた者の頭が勝手に判断してしまうので騒ぎにもならない。



「な~あ少年、分不相応なお金稼いじゃったんだろ?使い方教えてやるから貸してくんね?まあ返す予定はねーけどな」



 ゲラゲラゲラ、と三方向からの下品な嘲笑があった。

 ソロで、子供で、ビッグラット研修を終えたばかりで多少金がある。

 狙われる理由としては100点満点だ。


 正直目の前の男達は、妖精戦士達やあの竜に感じるような圧力はない。

 戦士として圧力を抑えているのではなく、全開近くで威圧してきてこの程度なのだ―――だから初心者狩りなどに堕しているんだろうが。

 とは言えどんな強者や達人でさえも死ぬ攻撃を食らえば死ぬし、人の命を奪う威力を出すだけなら素人でも可能なために油断はできない。

 そして相手は3人で、こちらは囲まれている。



「何とか言えよォ!俺たち金なくて困ってる・・・ん・・・だああッ!?」



 初心者狩りのチンピラの一人が急に何かに驚き、怯えだした。

 残る二人も同じ方向に恐る恐る視線を向け、そして追随するような形で似たようなリアクションを取った。



「あの~、貴方たち、まだそんな事やってるんですか?・・・その、そういう事、やめた方が良いと思う・・・んですけど」



 そこにいたのは、狼の耳と尻尾を生やした獣人の少女だった。

 眉毛を下げ、喋りも態度も妙におどおどした印象のある彼女に対し、男たちが露骨に心底恐れる様子を見せていたのをガメオはかなりシュールに感じた。

 きずなに紲って文字を使ってる理由?

 僕がボカロボイロ方面の人だからだよ(モロだし)


 修正:王都には後から移動する形にしたので冒険者活動始めた街を王都じゃなくしました。

 ガバってすまない。

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