20. 閑話 - 青い石
いたいよ
くるしいよ
なんで
おにいちゃん
なんで
いったのに
いっしょににげようって
いったのに
なんで
あたしだけ
なんで
その世界は、赤と黒と痛みしかなかった。
孤独と絶望以外を抱くことが許されなかった。
ずっと。
あの日からずっとそうだ。
ある時、何もなくなった。
地獄の底のような苦しみが無くなった代わりに、本当に何もなくなった。
疲れていた。
このまま眠ってしまってもいいと思った。
そこに、誰かが光を差し込んだ。
闇の中に溶けて混じったそれは、彼女としての象取り戻した。
取り戻さなくても良かったのに。
ずっと眠っていたかったのに。
思い出したくなかったのに。
忘れていたかったのに。
あの時、お兄ちゃんに置き去りにされたことを。
≪―――そうだね、置き去りにするなんてひどいお兄ちゃんだね≫
(あなたは・・・誰?お兄ちゃんを知ってるの?)
≪友達だよ。キミのお兄ちゃんの事が大好きな友達だよ≫
(友達・・・)
≪されたことは忘れなくてもいいし、許さなくてもいい。でもこれだけは聞いて≫
(おにい・・・ちゃんは・・・)
≪キミのお兄ちゃんはキミの事を忘れた事は無いよ。喪った事で一杯苦しんで悲しんだし、取り戻すために勝てないかもしれない敵にだって構わず向かっていった≫
(でも・・・それでも、あの時あたしは・・・)
≪もう、置いてきぼりになんかしないよ≫
一層強い光が差し込み、二つの影を照らした。
一つは人間の幼い少女、もう一つは蝶の翅を持つフェアリーだ。
≪ううん、二度と置いてきぼりになんかさせない。アタシが一緒にいる限り。だから―――――――もう泣かないで、シィタちゃん≫
その青い石は、魔石と呼ばれる鉱石の一種だった。
古来より鉱石には不思議な力が宿ると言われ、魔石はその作用がより強いものだ。
青い魔石は、人の強い思いを中に閉じ込める力があった。
とは言えフェアリーのような強い魔法を使う者であれば、それを媒介に遠くに魔法を使うなども可能だが、ほとんどの人間には実感できるほどの大した恩恵もない。
ゆえにただちょっと綺麗な石として女の子が集めるとか、その程度の扱いでしかなかった。
石に込められていた哀しい思いは、必ずしも本人の物とイコールではない。
言わば、その瞬間の心が焼き付いたに過ぎない。
石の中にある想いだけを癒しても、大した意味はないかもしれない。
人よりも遥かに神秘の理に近しいフェアリーの知識をもってしても、生命や魂と言う物が何なのかが分かっているわけではない。
一度命を落としマナに還ったそれに何か影響があるかもしれないし、何もないかもしれない。
ただ―――ザアレは、そこにある余りにも哀しい孤独が千年、万年とそのまま残り続けるのを見過ごせなかっただけだ。
青い石の中に少しだけ見られたくすみは消え、晴れ渡った空のような透き通った青色が残った。
絶対入れたかったけど入れるとこなかったから閑話にしました
挿絵付けたから許して




