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優しい死神  作者: ミナセ
13/14

12:探し人




 伊藤と琴美がこんな話をしている事を知らない光希は、環を探し続けた。

 会って、どうするなんて考えてもいなかった。

 ただ、最後にこの気持ちを伝えることができたらいい。

 魂を見た時はその美しさに汚したくないと思い、それ以上の怖さに怯んでしまった。

 だが、この世界でなら。

 生前の姿を取っているのだから魂の形は関係ない。


 今からでもいい。

 四十九日のギリギリまで、一緒にいたいと言ったら環は付き合ってくれるだろうか。

 刻一刻と近づく期限を前に光希の中で湧きあがるのは焦りと不安。

 難しいと頭でわかっていたのに、こんなにも会えなくなると焦りが出て、最後まで見届けたはずなのに、魂を送ることができなかったのかと、不安が生まれた。

 噂一つ届かなかった。


 もしかしたら環はここにやってきて、魂の選定が終わった直後に天国に行ってしまったのではないか。

(ちょっと待った。魂の選定……?)


 なぜこの二人のことを忘れていたのか。

 環とこの世界で直接話をしたのはこの二人なのだ。

 環がどんな選択をしたのかもわかっているし、この世界にいるかどうかも分かっているのは二人なのに、どうして今まで思い至らなかったのか。


「常に冷静にいられるようにしていたら、こんなことには……!」

 冷静さを欠いては周りが見えなくなる。

 わかっていた。

 だが環に関しては熱くなって周りが見えなくなっていた。


 肩で息をしながらやってきた、魂の選定場所。

 基本的に二人は忙しいのだが、休憩時間くらいはある。

 その時間を狙って光希はここにやってきた。

 小さくノックをして、中に入ると真玉はお茶を飲みながら、井筒はソファに座りながら思い思いに休みを取っていた。

 急にやってきた光希に、真玉は嫌な顔を見せずに招き入れた。


「どうぞ、座ってください」

 勧められるままに井筒の前にあるソファに腰を下ろすと井筒が不思議そうに声をかけた。

「光希がここに来るなんて珍しいじゃねえか。何かあったのか?」

「……少し前にやってきた魂について聞きたいことがあります」

 光希の言葉に二人は顔を見合わせた。


「何故、気にするんですか?」

「お前今までそんなこと聞きに来たことなんて一度もないだろ」

「何かその人物に思い入れでもあるのでしょうか?」

「特別な人間ってことか? 死神が? それはないだろ。あったら大問題だ」

 まるで光希がこれまで何をしていたのかを知っているかのような口ぶりに、光希は一瞬言葉を詰まらせた。


「……いえ、あまりにも綺麗な魂だったので、どんな道を選んだのか気になっただけなんです」

「そうか。光希は見るのは初めてだったか」

「なるほど。今までとは違う魂だったから気になる、というのも頷けます。ですが、ここでの出来事は外に話すことは禁じられています。例えそれが同じ死神だったとしても。気になるのはわかりますが……」

 申し訳なさそうに頭を下げる真玉に光希は内心でやはり駄目だったかと溜息をつきながら、用意していた言葉を返した。


「いえ、わかっていたことですから。失礼しました」

 痛い所を突かれてしまった手前、光希はそれ以上のことを二人に聞く事はできなかった。

 見えたと思った光は手をすり抜けて元の状況に戻ってしまった。

「あー光希。良い事かどうかはわからねえけど、一つ教えてやる」

「なんですか?」

「完全な魂って噂あっただろ。あれはこの人のことなんだよ」

 井筒がこの人と言ったのは、他でもない真玉。

 その真玉も照れたような困ったような表情を浮かべていた。


「っえ?」

 これまで長い間、死神として多くの魂を狩ってきたが、一度も綺麗な形の魂を見たことがなかった。

 初めて見たのが環だったのだ。まさかこんな近くにその持ち主がいたとは思わなかった。

 だが、それ以上に。


「何をそんなに驚いてるんだよ?」

「いや、だって、綺麗な球体の魂ってことですよね? 未練なんてなかったんじゃないんですか?」

 一般的に死神達の中では、未練があるから魂の形が歪むとされている。

 だからこそ、歪みのない球体の魂は未練が全くない魂だと思われている。

 それなのに何故、真玉は死神になってしまったのか。

 この道を選んでしまったのか。


「……色々と、あったんですよ。君にはいずれお話する機会があるかもしれません。その時が来たら聞いてください」

 静かな、だが凛とした声だった。

 理由も説明されていないのに、ああそうなのか、と納得させられてしまいそうになるような、そんな響きだった。

「まあなんだ。ここまできた駄賃みたいなモンだ。あとは自分で考えろ」


 今のはどういう事なのか。

 きっとあの二人は環の魂を見ている。

 真玉と同じということは、まだ異界にいると伝えているのだろうか。

 行き先は教えることはできないが、この世界にはまだ環がいると言いたかったのだろうか。

「探し続けろって意味に捉えますよ!」


 だがどこをどう探せばいいのか、もうわからなかった。

 ここが最後の可能性だったのだ。それが潰れた今は、人に頼る他なかった。

 本当なら環の特徴を伝えて仲間である世良達にも見かけたら教えて欲しいと言いたかった。

 人手が増えれば増えるだけ環を見つけ出す可能性は広がる。

 だが、光希と環の出会いが出会いなだけに、おいそれと人には頼めなかった。


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