イロヅキendZ 貴女色に染める
――――強い雨が落ちいく
――からだが冷たい
――――誰かボクを助けて
『お花さん!つめたいでしょわたしのカサあげるね』
――ありがとう
『バイバイお花さん。またね』
――うん、またね
______
王たちは私を殺そうとしている。間違いない。
「逃げよう!」
イロヅキは私の手をひいて、さっきまではなかった階段を登る。
「――――ここは白の王の世界、誰にも介入なんてさせない」
イロヅキは私を横に抱えると、窓から飛び降りて、森の中へ入る。
右に左に木々が頬をかすれながら、なんども走る。
――だんだんつかれて、私の走る速度が遅れてきた。
「いたぞ!」
逃げてもまるで無駄といわんばかりに、各色のトランプ兵は四方から迫る。
「ねえイロヅキ、私をおいて逃げて!」
イロヅキは関係ないので、巻き込みたくない。
「……やだね」
トランプ兵はイロヅキの素早い鎌捌きによって全滅した。
会ったばかりなのに、どうしてここまでして助けてくれるんだろうか。
倒れた幾多の兵を蹴っていきながら先へ走る。
―――中心にあるのは塔。
―――頂上にたどりつく。
「待ってたよイロヅキ―――いいや、裏切り者!!」
―――ドン”
黒い衣服の男は、大きな斧を床に叩きつける。
「モノクロ―――」
「本来ならお前がそこの女を殺す役目なのに俺がやることになるなんてね」
「……え?」
「初めから殺すつもりなんてなかった。勝手にボクを仲間扱いしたのはオマエ」
「なあ色無形子こいつはお前を元の世界へ戻る前に殺さないと、死ぬ運命なんだ」
――イロヅキが、死ぬ。いきなりそんなことを言われても受け止められない。
「……余計なこというなよ!!」
イロヅキが顔をしかめた。
「正確にはここに迷い込んだ少女をイロヅキが殺し
少女が選んだ男を俺が殺すっていう筋書きなんだけど
お前いままで何度死んだっけなぁ……」
これまでに私のようにこの世界へ来た少女がいて、イロヅキはそのたびに死んだという。
「いいよ、それでも。何度――死んだとしても」
「そっか、じゃあ今回も死ね」
「やめて!」
私は気がつけば、イロヅキとモノクロの間に割って入っていた。
「形子!?」
イロヅキが鎌を引いた。
「……ちっ!」
モノクロは苛立ちを見せ、斧横に投げ捨て、この場を去った。
私たちはしばらくその場に立ち尽くしていた。
「元の世界へ帰りたいよね?」
イロヅキは長い沈黙を切る。
私はすぐに返事はできなかった。
「……嫌」
本当は帰りたいけど、私が帰ったら、彼は死んでしまう。
モノクロに言われずに、知らないままだったら私はすぐに帰っていて、イロヅキがいなくなっていたんだろう。
「――いいんだ」
「なんで……」
「ボクは君に救われたから」
ほんの一瞬、幼い頃を思い出した。
雨と傘とそして――――
「バイバイ」
イロヅキは床に黒い穴をあける。
「いやだよーー!!」
私は堕ちていく――――――
________
元の世界に戻った私は、昔どこかに咲いていた一輪の白百合に傘をかけたことを思い出した。
花が咲いている場所を探したけれど、あれはそこらに生えるものじゃない。
「あるわけないよね……」
それにあの白百合の花がイロヅキの筈がない。
「あ……雨」
私は異世界から帰ってきたばかり、傘を持っているわけがない。
―――会いたい。
イロヅキに会いたい。
神様、彼がこの世界にいないなら、もう一度向こうに連れていってよ。
「――よかったらこの傘をどうぞ」
見知らぬ白髪<はくはつ>の青年が、傘をかけてくれた。大人が持っているには小さいピンクの傘だ。
彼は以前どこかで見かけた不思議な青年と、どことなく似ている。
「……ありがとうございます。でも、その傘は受けとれません」
「―――ボクがわからないの?」
「え?」
「ボクはイロヅキだよ」
「―――!?」
ピエロメイクをしていたのがあの青年であることに衝撃を覚えた。
「でもどうして……」
彼と二度逢えて嬉しく思うが、こうもあっさり再開してしまうなんて。
「君がボクを選んでくれたから。あの世界の神様がボクの魂をここに寄越してくれたんだよ」
「……そうなんだ」
―――雨が弱まり空が光った。
「雨止んだね」
「うん」
「形子どうしたの?」
「もういなくならないよね?」
もしかしたらあの世界もや神様もいなくて、私はまだ夢を見ているような気がしてならない。
「夢じゃないよ」
イロヅキは手を繋いだ。
「ほんとうだ……」




