共通 選択
――――これは形に拘る少女が、形を失った世界に、魅入られる物語。
青国に人の上に立つ者がいた。
赤し国に愛を失くしたものがいた。
黄き国に叡智貪るものがいた。
緑の国に貧しきものがいた。
彼等は異なる世界に魅入られ、迷い、自ら諦めた。
世界は主を4人にわけた。
なぜ、主は一人ではないか、形とは一つではないからだ。
何が正しく誰が謝りか。
彼等は各々、主の素をもつ。
たった一人に相応しき者を、を決めかねた。
故にその世界は、彼等を総て主とした。
「テスト何点だった?」
「あーテスト?いちおー赤点じゃない」
悪い成績でも気にせず見せる。
「卵焼き失敗した~まっずー!」
「食べられればいいじゃん」
腹に入れば同じ。
「なんかーこの香水あんま好きじゃない」
匂いなんて臭くないならいいじゃん。
「右のほう、形が…3センチくらい狂ってる!こんなんじゃダメ!やり直す!」
「そんなことないとおもうよ?」
「ちょー上手いよ?」
「プロになるには妥協は出来ないの!」
私は何事も適当なのだが、完璧な形に唯一、譲れない強い拘りがある。
形に固執しすぎてしまう節がある。
小さな頃に、画家の父に連れられて来た美術展でとても美しい石像を観た日から、私は彫刻家になりたくてずっと作品をコンクールに出したり、何度も優勝してきた。
「今年も優勝すれば…きっとプロになれる…」
徹夜で石を砕き、頭に浮かんだ形を出す。
「決まらない…」
手が止まった。
使いすぎて傷んだわけではない。
何を作りたかったのかわからなくなったのだ。
「期限は明日なのに…」
私は今年、高校を卒業する。
有名な美術大学に入るには、実力がなければダメだと父が言っていた。
同じ美術関係とは言え、画家と彫刻家では細部は違う。
ただ、父の言うことは間違ってはいない。
「君の求める完璧な形は…」
「粉々に砕けるよ!」
チラりと視界にうつるのは奇抜な格好をした二人の男。
なんだか眠気が――――。
私は意識を手放した。
「この気色、綺麗なのに違和感がある」
整っているのに歪んでいる。
はっきりしているのにぼやけている。
澄んでいるのに濁っている。
止まっているのに滲んでいる。
しばらく呆けながら気色を観ていると、遠くから足音が聴こえた。
「侵入者だ!!」
さっきまで遠くにいたはずなのに、急に近くに現れた兵士に追いかけられる。
驚くより先に捕まりたくない、死にたくないと思った。
一先ず広そうな建物に逃げ込んだ。
「なんですか貴女は」
金髪の変な頭のガリ勉そうな男に睨まれた。
「ふーん」
緑の髪の男は私を見るなり退屈そうな顔をして窓辺に寄りかかっている。
何者かと言われてどう答えるべきか、すぐ頭に浮かんだのは…。
「私はこの世界を完璧な形にするべく来た…侵入者!?」
なぜそんなことを言ったのか自分でもわからない。
口が勝手に言ったというか、云わされたのだ。
「侵入者だってさ」
「道理で外が騒がしいわけだ」
「ごめんなさい今のは誰かに喋らされたの!兵士に突き出すのだけは止めて!あと殺されるのもいやだ」
「誰か?」
「多分ここに連れてきた変な格好をした二人の男」
覚えている特長は変な格好だけだ。
「変な格好ね…わからないので絵に描いてください」
「わかった」
絵は専門ではないけど彫刻のデザイン程度には描ける。
「特に珍しくもないでしょう」
「そんな…」
この世界ではあれが普通なの?
落ち着く間もなく、扉が勢いよく開かれた。
「頭が高い…」
ムチを持った偉そうな銀髪と、髪の長い赤毛の中性的な人が部下をぞろぞろ引き連れて現れた。
王冠をしているということはつまり、兵士に侵入者を捕まえさせる立場なわけで…。
「陛下だ!!陛下だ!!」
ざわざわと騒がしくなる。
いままでどこにいたのか、今のでようやくここが図書館であることが認識できた。
銀髪の男は頭に王冠、ご丁寧に首の下にスペードのマークをつけている。
冷たそうで鬼畜そうな人だな、いますぐこの場を逃げ出したくなった。
「我こそはカタルナ国のスペクタクルの王・スピード」
「私はハティマニカの王、アルハード」
「…僕はダイレイスの王…イルダヤです」
「俺はクーゲイラの王クライス」
全員が王様だったなんて気がつかなかった。
特にクライスという男はだらしなくYシャツにシワを作ってダルそうにしていて、とても偉い人には見えなかった。
ついでにイルダヤは図書館の管理人みたいな、印象があって王様なんて思わなかった。
アルハードはどちらかと言うと隣にいたスピードの側近に見えたからびっくりした。
「侵入者よ、お前はこの国に害を成すつもりか」
そんなはずない。目が覚めたらいきなりここにいただけなのだ。
「そんなことしません!」
そんなこと相手にわかるわけないけど、しっかり否定しよう。
「…ふむ」
スピード王は何かを考えている。
「何やら他の王も意見があるようだ言うがよい」
「では失礼します」
イルダヤが言いたいことがあるらしい。
「この際この少女がなんなのかはさて置き、なぜこちらの国に現れたのかを論ずるべきでは?」
イルダヤが何を言っているのかは難しくてはっきり理解できないけど、一応話をそらしてくれているので感謝したい。
「それはなぜだ?私はこの娘の存在自体が気になっているのだが」
スピードにチラ見どころかガン見されている。
「おやおや、一等キング様はやぼったい趣味がおありなようで…」
クライスはとても失礼なことを言っている。
しかし、彫像ばかりで恋愛経験などゼロの私が、微妙に違うけど、男子と噂になるなんて嬉しいような?
「彼女に対する処遇は我々がすべきだと思います」
「つまり?」
「彼女に判断の余地を与え、その王が処分を下すということです」
「それは妙案ですね」
それって私が死刑に処されたい王様を選ぶって意味なのかな。
選べないし選びたくない。
みんな侵入者の私の事情なんて興味ないだろう。
スピードはいわずもがな、さっきまで優しそうに見えていたアルハーデはこんなこと持ちかける時点で私を処刑する気ありありだと思う。
イルダヤとクライスは想像がつきそうでつかない。
本ばかり読んでいるイルダヤは私を放置しておいて思い出した頃に処刑しに来そうだ。
クライスは美人が好きそうで、私のようなのはタイプじゃないはずで、じゃあ、死刑。とあっさりしていそう。
「それは妙案ですね」
クライスは偉い相手にへこへこするばかりで、自分の意見は出さないつもりらしい。
なんだか王様同士なのにランクがあるみたい。
「待て」
「どうされました」
「王たる我等がなぜ選ばれるなど上から目線で…行動されなければならん?」
「私は上から目線という言葉が貴方の頭に入っていたことに驚きましたよ」
「王様は情けがあるものですよ誰を選んでも結果は変わらないのだし…」
「意外だなお前はこの少女を逃がす気があるとばかり」
「三等王こそ…本に気をとられてその隙に侵入者が逃げ出すなんてことに…」
こいつら仲悪いのかな。
「まあいい、選べ。適当は許さん」
話が進まないということで折れなそうなスピードが折れてくれた。
さて、選べと言われても結果は一緒らしいし…。




