ニンゲン
私が勇者だと……
と、あまりに見当違いな発言を聞き一瞬固まってしまった。
しかし確認はできた。私を見て勇者と言うことは私がいた世界でもないということだ。
私のいた世界では人間は脆いが故に狡猾で弱いが故に賢かった。
だからこそ方法は知らないが何らかの方法で我らと人間を区別する何かがあった。
故に私のことがわからないこの世界は私がいた世界ではないだろう。
まあ、無論ただの推察である以上絶対ではないのだが
「それで……私が勇者たる所以を教えてはくれないか?」
「理由ですか…?それは当然この召喚が勇者を召喚するものだからですわ」
当然と来たか……事実として私のような魔物…いや、魔族を召喚できてしまったのだから勇者を召喚するものではないのだが。
まあ、この状態で言っても意味はないだろうから黙っておくとしよう。
「そうか。 …それで、勇者と言うものは何をすればよいのだ?ただ遊ばせるために呼んだわけではあるまい」
「話ができる様でありがたいのですがそういった話は我が王国の偉い人としてくださいな。そういうことには疎いので」
まあそれはそうだろう。
魔術を使えるものの大半は己の魔術の推進のみに興味があるものが大半でありそれ以外の私利私欲に使うものは基本的に強力な魔術は使えないというのがセオリーだ。
まあ、セオリーである以上無論例外があるのだが。
「そうか。なら国王のところに案内してはくれないか?」
「別に構わないのですが……」
ですが、ときたか。なにがしかの理由で私と王を会わせることを止められているのか
「それとも、王自体に会わせられない理由があるか…… か」
しかしそれならば何かしらの対策を一部の魂を何かに付与するなどしていそうなものだが……
いや、もしかすると と物思いにふけっていると驚きの声の後に
「な、なんで王があんな状態になっていると知って!?」
と甲高い悲鳴のような声が耳に届いた。 …いやしかし鳴き声というのはいつ聞いても煩わしいものだ。
そんな念が届いたのか、軽く咳払いをした後
「私では上手く説明できませんし。案内しますわ、王の入る間へ」