ショウカン
結局、少女を泣き止ますのに小一時間程度も有してしまった。
本来ならば魔術でも使い強制的に泣き止ますつもりだったのだが何か特殊な訓練でも受けているのかある程度上位の洗脳魔術すらも弾かれてしまった。
しかしあのランクの洗脳魔術となると訓練や修行だけではなくなにか特別な能力がないと難しいはずだが……
「もう!わたくしを無視し過ぎですわよ!」
と少し深くまで思考していると藪から棒に声をかけてきた。
「ええと……何か用でもあるのかね?」
「ようやく反応してくれましたわね。ええ、無論ですわ!まず用がないのなら召喚したり致しませんわ」
「そうか?わざわざ私を召喚したのだ。何がお望みだ?」
そう私がわざと大きな態度をとり答えると、なぜか相手は頭を抱えて何やらぶつぶつと呟き始めた。
「……もしかして何かの手違いで他国の王族や貴族でも連れてきてしまいましたの!?
拙いですわ、それだと国際問題に……しかし召喚魔法は他国の人間は知らないはず。
しかしわたくしやと他の宮廷魔法士が観測出来ている魔法干渉範囲内の世界には魔法やそれに属する魔素使用技術は観測されていませんし……」
とまあ、声が完全に漏れ出ているのには気付いているのだろうか。
恐らく気づいていないだろうし特に目ぼしい情報も持っていないようなので注意してやることにした。
「ところで、召喚者よ。声が漏れているようだが魔力通話でもないのなら音を遮断する結界でも張ったらどうかね?」
「うるさいですわね!聞こえていたのならばすぐに教えてくださいな!人としてそれぐらいは当然ではなくて!?」
「ふむ、確かに人間には必要であろうな」
一応、肯定しておくような言葉を発する。
まあどうせ、私は人間ではないからな。肯定しても守る必要もなかろう。
「でしょう?……というか今のって………」
「ええ、全て余すところも洩らすところもなく聞いたが?」
当然だろうといった風に言い放つ。
「聞いたが?じゃないですわ!ならばさっさとさっきの質問に答えてくださいな!」
「ふむ……先ほどの質問とは?」
「さっきの!ですわよ!貴方はどこの者ですの!?」
「どこの…と言われても困るのだが……名も無き国と言ったところか」
私が作った。というより作ったということにされている国には正式な名前はなかった筈だ。まあ名自体が必要ないだけなのだが
「なるほど、どこの国かはわかりませんが心配はなさそうですわね」
「国同士の問題には確かに私では発展する余地もないか。良かったな、心配が減って」
「『良かったな』じゃないですわよ!いったい誰のせいだと!」
誰のも何も
「君のせいだろう?君が勝手に私を召喚した。違うか?」
「うぐっ……違いませんわね……」
そうだな…少し意地悪をしてみることにしようか。心の中で笑みを浮かべ実行してみることにした。
「だろう?ならば人間として何か言うことがあるのではないか?」
「ご…ごめんなさい……ですわ…」
「ああ、良い。私は寛大だ。故に許そう」
「あ、ありがとうございますわ」
さて、少し脱線が過ぎたか?まあ戻せば関係ないかと元々の質問を再度切り出す。
「ところで話を戻すがどんな願いを叶えるために私を呼んだのだ?」
魔王であった私が呼ばれたのだかなり大きい願いであるのは確定であろうが……
「ああそうでしたわね。きたるべき魔王の復活の為、貴方……つまり勇者である貴方を勇者召喚で呼んだのですわ!!」