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オワリ

なんで!何故だ!

そう心の中で毒を吐いている間にも剣戟は金属と金属がぶつかり合う音は鳴り止まない。


なんで!私が!我が!儂が!こんな脆弱な存在に、負けなくてはならない!

相手を睨み付けながらそう声を張り上げるが相手の剣は止まるどころか更に勢いを増していく。


そうか……吾輩はここまでなのか。鳴り止まぬ音の中薄れていく意識の中、ふとそう思った。

自身が魔物と生まれ幾年、ただ魔物というだけで殺された仲間たちは数知れず最早、途中から数えることを辞め、しかしその仲間たちの敵を討ち、襲い掛かる敵は薙ぎ払いだが決して障害となるもの以外は殺さず。

そんな無謀とも呼べる事を時を忘れるまで続け、いつの間にか僕の周りには己の始まりを知る者は誰一人としていなかった。

その時にはもう自分の名を呼ぶ者はいなく、周りは皆「魔王」と呼び、そしてその「魔王」を祀り上げ始めた。

それから周りは「魔王」でない魔王の声を聞かなくなっていた。

それも当然だ、周りは「自分」ではなく「僕」でもなく偶像としての存在としての「魔王」が欲しかっただけなのだから。

だから、だからこそ「魔王」を敵対する種族を敵対しない存在をただ望まれるままに殺し、操り、壊していった。

その頃にはもうまともな意識は何処かへと消え、残ったのはただ演じているという自我と演じていなくてはならないという強迫観念にも似た何かに突き動かされてただの舞台装置として最後もよくあるお約束として諸悪の根源である「魔王」は倒される。

そう、最後だからかわからないが浮上した意識の中そんな答えが頭をよぎる。

だから、ならばこそ「魔王」を倒してくれた。「魔王」を切り捨ててくれたこの「勇者」には言葉が必要だろう。人間を賛美した言葉を、すべては終わったのだという労いの言葉を、これで役目を終われるという感謝の言葉を。……ただ一言に、たった一言に込めて

――――「よくぞ、私を倒した。勇者よ」と


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