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【第一話】4:Dum docent discunt.

 何も見えない。それでも何かが居るのはわかる。それを感じた肌が怖気立つ。

 得体の知れない不気味さ。その中に死を感じれば感じるほど、強く引き込まれていく。

 狂い咲くような死の香り。それを拒むのではなく逃げるのではなく立ち向かうことが生きること。強すぎるそれを払拭した後の爽快ったらない。ああ、今日も俺は生きている。そう思える。だからだ。俺が死の匂いに惹かれてしまうのは。こればっかりは仕方ない。俺はそういう生き物なんだから。

 攻めるつもりで一撃、一撃振り下ろす度に追い詰められていくのが解る。どうすれば挽回出来るのか全く解らない。それでも向かって行くしかない。一瞬でも気ぃ抜いたらやばい。本当に死ぬ。それでも本当に、今は楽しくて堪らない。

 一秒でも長くこうやって目の前のあいつと踊っていられるんなら俺はそれはそれで幸せなこと何じゃないかとさえ思う。

 あいつはどこか俺に似ている。同じ眼をしている。それは戦ってる時の俺じゃない。それ以外の俺の眼で、あの日のあいつは戦っていた。戦うことを楽しんでいない。あいつは死にたいばかりで戦っている。いつかの俺にそっくりだ。なのにあいつはあの頃の俺よりももっと強い。

 妙な気分だった。だけどぞくぞくした。たぶんそれは俺にとっての条件反射だ。

 戦っちゃいけねぇって頭では解ってる。それでも滾る心が抑えられない。殺さないで止めるとか最初は考えてたが、もう駄目だ。そんな甘いこと言ってたら終わっちまう。俺が死んで終わってしまう。

 あいつはそれまでバトル相手として一度の感心も持ったこともねぇ。はっきり言って対象外。そんくらいあいつは普通のガキだった。そんな普通のガキが、一度でも俺に怯えを感じさせた。こいつとやり合えば死ぬかもしんねぇ。そう思って、俺の心は躍った。魂が震える。

 そいつを助けに来たとかそんなことは頭から消えちまった。得体の知れない強い奴が目の前にいる。損なら俺はどうするか。決まってる。一つしかない。唯目の前のこいつとどっちが上かやり合いてぇ。それだけだった。

 俺は俺に負けた奴には興味ねぇ。俺は俺より強い奴にしか興味がねぇ。今の俺があいつに興味を持ち始めているのは、俺が自覚しているからだ。その気になれば、あいつが俺を殺せるんだっていうことを。あの時、兄貴がああしなかったなら……俺、たぶん死んでたんだろうな。

 俺がエルムっていうガキに興味を持ち始めたのは、あの一戦が原因だ。

 不思議なもんで、一度興味を持つとそれまで気にも留めていなかったことが突然気になり始めたりもする。それは俺が今まで気付いていなかっただけで、意外と見ていたんだなということを俺に教える。

 俺は思いの外、結構あいつを見ていないようで見ていたんだ。目には映っていた。唯それに気付けなかっただけ。あいつはいなかったんじゃない。確かにそこにいたはずだった。


 *


 「兄さんの馬鹿ぁああああああああああああああああああああああああああ!」

 「喧しいわこの愚妹っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!」

 「……ふぁあ、何騒いでんだリィナ、レスタ兄ぃ。人がせっかく昼寝してたってのに」

 「昼寝って時間じゃないでしょ」「昼寝と言う時間ではなかろうが」


 欠伸ながらに声のする方へ顔を上げたロイルを睨み付ける緑の目が四つ。

 変なところでリィナと兄貴は言葉が揃う。


 「……あれ、もう夜か」


 ヴァレスタの目が緑になるのは夜になった証拠だ。昼間は赤い眼が、太陽光を失うとこうして変色する。

 レスタ兄ぃは混血だ。その目はアレキサンドライト。光によって色を変える石にそっくりな変色眼。正確には逆アレキサンドライト。赤と緑の入れ替わりが逆なのだ。

 蝋燭の炎で石は赤くなるけど、兄貴の目は緑に変わる。太陽光に当たれば石は緑になるけれど、兄貴の目は赤に変わる。

 灯りの種類によってそれは誤魔化せるし、いつもは色硝子を目に入れるのと、視覚数術とで二重に外見対策を行っている。それで兄貴は黒髪赤目のタロック人として生きているわけだが……

 今日はもうグライドは帰ったみたいだし、長時間硝子を入れているのは健康上あまり良いことではない。硝子は外したのだろう。それはわかる。

 おかしな点はもう一点。視覚数術が解けている。兄貴はそれをエルムにやらせていたはずだ。あの子供は補助系の数術に長けている。兄貴はそういう小回りの利く数術を扱えなかったはずだ。


(あいつになんかあったのか……?)


 聞いても2人の機嫌を損ねそうな気配しかしなかったので、ロイルは眠い目を擦りながら、2人の会話に耳を澄ませた。


 「全く!あれほど私が言ったのに!どうして兄さんはそうなの!?こんなお金貰って来てっ……」

 「ふん、あのゴミが10億だぞ?10億もあれば各方面に根回しが利く。解体してあれを売るよりあのゴミにそれだけの値段が付いたことは喜ばしいことだ」

 「そうじゃないでしょ!?エルム君は基本良い子だけど……素直じゃないの!自分の弱音を他人に言えるような子じゃないの!兄さんはあの子の飼い主なんだからちゃんとその辺解ってあげないと駄目だってあんなに言ったのに!!」

 「黙れ。誰があんなゴミの飼い主なものか!元を付けろ元を」


 リィナが自分以外を叱る姿は新鮮だ。昔のリィナはヴァレスタに文句を言うことなんか出来なかった。そんなリィナの変化を見守りつつ、対するヴァレスタの言葉に俺の口から呆れの息が溢れ出す。


(兄貴、相変わらずだなぁ……)


 兄は相変わらず子供だ。年下の自分でさえそう思う。

 この男は何かを誰かを大切にすると言う才能に欠けている。皆無と言っても良いかもしれない。傷付ける才能には長けているのに。

 それでもある種の力強さみたいな雰囲気があるし、商人としては有能だから、それなりに支援者は付く。しかしプライベートではこんなものだ。グライドの前での態度はあれは仕事モードの一環のようなもの。一皮剥けばこんなもの。

 人を惹き付ける光のような何かが兄にあるのは確かだが、それはあまりに凶暴、凶悪な光。長く傍には居られない。その光は周りの人間を傷付ける。

 ……それは火に似ていると俺は思う。集まる人間達は虫。その身をもって炎を燃やす糧となる。兄は人を傷付け自ら輝く存在だ。


 「リィナ」

 「ロイル……」


 何で私を止めるのよ。そう言いたげな表情でリィナが振り返る。それに対して俺は、もう止めておけと首を振って教えてやった。

 レスタ(にぃ)がエルムにとって有害という可能性は確かにある。離れた方が幸せって事もある。


 「あのねロイル。私だって、西に帰ったって話なら文句は言わないけど……これはそういうレベルの話じゃないのっ!!」


 言われてみれば金がどうとか言っていた。


 「まさか兄貴……」

 「そのまさか!兄さんったらエルム君のこと売り飛ばして来ちゃったの!迎えに行ってきてって頼んだのにどうしてそうなるのよおかしいわよ兄さんっ!一回頭の中身解剖してきた方いいんじゃないの!?いかれているわ!!」

 「失敬な。最初に馬鹿をしたのはあいつの方だ。あんな店に連れて行かれて言われるがまま働かされて、俺にこの金を手切れ金と寄越したのはあいつなのだぞ!?」

 「あーぁ……流石兄貴」


 昔付き合ってた女とか、仕えていた使用人とかも些細な喧嘩でとんでもないところに売り飛ばしたりしてたなと思い出す。兄はそういう人間だ。

 しみじみと呟くロイルにヴァレスタは踏ん反り返って自慢げだ。


 「ふっ……当然だ」

 「ロイル……貴方はどうして……もうっ!」


 素直な感想を呟いただけなのに、何故かリィナに怒られた。今のは褒めたと言うより、行き過ぎた呆れはある意味感嘆。ある意味では褒めていると言えるのかもしれないが。


(……にしても、ちょと昼寝してる内にめんどくせーことになったな)


 兄貴は確かに鬼畜で性悪で根性悪で性格に難があるけど、まさかそこまでやるとは思わなかった。面倒臭い話だが、数年来の顔見知りがそんな事になるとは、流石に捨て置けない。

 自分がさっさとアルムとエルムを助けることが出来なかったから、こんなことになってしまった。

 その責任を感じているから何とかしたくて俺はここに留まっていた。けれどそのエルムがここにいないなら何とか連れ戻して……西に帰りたいと言うのなら送り届けなければならない。


(でもあいつ……何考えてんだか、よくわかんねーし)


 子供の癖に単純な思考じゃない。複雑な心を抱えている。繊細なのだろう。迂闊に踏み込めば、あいつの心を傷付けてしまうだろうと解る。少しだけ、エルムは昔の自分に似ている。ああいう時期は他人が世話を焼いても何にもならない。自分自身で答えを見つけるまでこっちがやれることは何もない。それが余計なお世話であることも多いのだ。

 そういう躊躇無く踏み込むことが出来るヴァレスタは、時に彼を救うかもしれない。昔のロイルがそうだったように。それでもヴァレスタのそう言うところは、此方の心を時に無惨に踏みつける。


(俺は馬鹿だったからあの程度で済んだけどな……エルムは俺と違ぇし)


 あの子供はよく考える。盲目に兄が善人で味方なのだと信じていていた馬鹿な自分とは違う。エルムはヴァレスタが悪人で、それでいて打算的な人間だと理解している。

 それでも西に帰りたくないからエルムはここに留まっていた。


(………居場所が、無い……か)


 それも身に覚えのある感情だ。


 「にしても……腹減ったなー」

 「ロイル……」

 「飯食い行こうぜリィナ」


 そんな調子じゃ何も作ってないんだろうと言えばリィナは一度此方を睨む。それににやりと笑み返せば、全てを察した彼女が頷く。


 「そうね。行きましょロイル。じゃあね兄さん」

 「待て愚妹!私はおいそれと出歩けない身なのだぞ!?料理を作らないのならば出前を取る金を置いていけ!」

 「今日という今日は愛想尽きたわ。元々底辺だけどね。兄さんなんか勝手に餓死すればいいのよ」

 「リィナが言うとシャレにならねーな」


 リィナの今の発言にはヴァレスタへの昔の怨みが籠もっていた。一度餓死させられそうになった人間が言うと説得力が物凄い。


 「ロイルっ!貴様もか!?」

 「わりーレスタ兄ぃ。俺腹減ってて細けぇこと今考えらんねー、俺馬鹿だし頭回んねーし」


 尚も何やら騒いでいる兄を残して扉を閉める。建物を出たところで振り返ってみるも、外に付いてくる様子はなかった。


 「んじゃリィナ、その店行こうぜ。さっさとエルムの奴迎えに行ってやんねーと」

 「ロイル……」

 「ああもう、泣くなよリィナ……」


 リィナに泣かれると弱い。狼狽えれば、すぐにリィナが微笑んだ。


 「嬉しいのよ私は。ロイルがエルム君の……誰かのことを心配出来るようになったなんて」

 「……?」


 リィナの言っていることの意味がよくわからない。目を瞬かせる俺にリィナはもう一度くすりと笑った。


 「格好良くなったって言ってるの」

 「俺は何時でもかっけーし」

 「ふふっ……そうね。それじゃ行きましょう。こっちよ」


 俺は請負組織だ。請け負ったからには仕事ってのを最後までやらなきゃいけねぇって俺に言ったのはリィナだ。俺の仕事はエルムとアルムの2人を助けること。今のはその延長だ。でも……


(助けるって……どういう事なんだろうな)


 敵を倒す。ぶちのめす。そういう仕事は簡単だ。俺が強けりゃそれでいい。

 兄貴の所に2人が捕まってるって聞いたから、俺はそれは無理だと判断した。兄貴は俺より強い。頭も良い。力押しで勝てるような相手じゃない。だから俺も頭を使わなきゃならない。だから取引を持ちかけたんだ。

 2人の解放を条件に、親父の暗殺。それに成功すれば俺が王。そこで王位を兄貴に譲る。失敗しても俺は反逆者。王位継承権を失うし、反逆罪に問われた俺を兄貴が捕まえれば兄貴の株が上がる。玉座へ近づく。だけど結果はそのどちらでもなくなった。

 親父は親父でなくて、俺は逃げる間もなく捕らえられた。セネトレアという国は、俺も兄貴も知らない何かが奥底に潜んでいる。俺はそれに触れてしまった。

 西に帰れないってのは俺も同じだ。今の俺は表に出ればすぐに捕まる。兄貴の下だからこそ、身の安全が保証されているに過ぎない。あれが影武者だったとしても、俺が反逆罪を犯したっていうのは間違いねぇし、そんな俺を捕らえて手柄を手にしようという兄弟は城の中に大勢いる。西裏町に行けば、兄貴がリフル相手に使ったような手を使おうとする奴らが絶対出てくる。その時はリィナにも危険が及ぶ。リィナは兄貴の傍にいたくねぇかもしれねぇ。だけど、兄貴の傍が一番安全な場所なんだ。兄貴からはリィナを俺が守る。それできっと大丈夫。俺の前では兄貴はリィナに酷いことはしない。兄貴は何だかんだで……甘いところもあるんだ。


(兄貴がああなったのは……半分俺のせいでもあるからな)


 だからだ。だからエルムを放っておけないだけだ。

 兄貴がエルムにあんな態度を取るのは昔の俺が原因だ。それでエルムが苦しめられている以上、俺があいつを助けなきゃならない。それって当然のことだ。


(俺、全然格好良くなんかねーや)


 それでもああ言わなけりゃ、俺は面倒臭過ぎる俺の心を飼い慣らせないのだから仕方ない。


 「助ける……か」


 言うのは簡単。それでも本当に難しい。結局の所俺があいつにしてやれることなんか何もないのかもしれない。人の心はそれだけ複雑だから。


 「ロイル……?」


 溜息を合図に、俯いている俺に気付いてリィナが俺を見る。


 「あのさ、リィナ」

 「何?」

 「俺はどうすればあいつを助けることが出来んのか、リィナには解るか?」

 「何?突然そんな……」

 「俺は兄貴とは違ぇし。兄貴みてぇな生まれ持ったカリスマみてぇなもんもないだろ」


 リィナはじっと俺の話を聞く。否定も肯定もせず黙ったままそれを聞く。


 「俺は力業で助けることは出来る。だけどそんな風なやり方で、俺はこの依頼を終わらせられねぇ気がするぜ」

 「…………そうね」

 「リィナがレスタ兄ぃのこと嫌いだってのは俺も知ってる。俺もあの件に関してはまだ兄貴を許してねぇ。それでも俺は昔兄貴を本当に兄ちゃんみたいに思ってたし、大好きだった。あの城で俺にとって唯一の味方だったんだ」


 異母兄も異母姉も異母妹も異母弟も。みんな俺の命を狙っていた。死ねばいいのにとみんなの顔に書いてあった。そんな場所で、兄貴だけは違った。

 そういう奴らの敵意を跳ね返してくれた。追い払ってくれた。兄貴の顔には書いてあった。そんなことを言う貴様らが死ねと。

 強くなればいいと兄貴は言った。俺が立派な王になれば、他の兄弟達も俺を認めるようになる。外見だけじゃなくて、中身も伴えば誰にも馬鹿にされない王になれると兄貴は言った。別に俺は王になんかなりたくなかった。でも兄貴がそれを望んでいた。その期待に応えたいとあの日の俺は思ったんだ。

 無気力だった俺にそう思わせるだけの起爆剤。兄貴は人を焚き付けるような力があった。

 褒める訳じゃない。それでもそれは本当だ。


 「兄貴は悪人だ。俺もそれは解ってる。それでも兄貴には俺にはねぇもんがある。だから俺じゃエルムを助けらんねぇんじゃねぇかな……」

 「…………エルム君が、兄さんに魅せられてる部分があるってのは否定しないわ、私も」


 ヴァレスタを決して褒めず、それでもそれをリィナは肯定。


 「悔しいけれど、兄さんじゃなきゃエルム君をどうこうできないってのは確か。私達に出来ることは限られる」


 リィナは小さく溜息。それがリィナの前髪を僅かに揺らす。


 「エルム君は……誰かに寄り掛かるってこと知らないのよ。自分一人で頑張らなきゃって思って生きてきた子だから……」


 エルムを語るリィナも、エルムに自分を重ね見ているようだ。リィナもそういう風に生きてきた奴だから。


 「今のあの子は頑張る理由を無くしてしまったんだわ。今までそういう風に生きてきたから条件反射で兄さんに言われるがままいろいろ頑張ろうとするんだけど、我に返ったら何で頑張っているんだろうって……わからなくなったんでしょうね」


 そうだ。考えてみるまでもなく、おかしな話だ。

 元々エルムは人質。その価値がなくなった時にヴァレスタはエルムを殺すつもりだった。そんな2人が主従関係に収まっている今はどこか歪だ。一体何があってそんな展開になったのか。俺はよくは知らない。俺が気を失って居る内に……いつの間にかそんな話になっていたんだから。

 目を覚ましたときには2人はgimmickにはいなかった。そしてエルムは行方不明になったヴァレスタを支えながら帰ってきた。あの時のヴァレスタは弱っていた。今だってまだ本調子とは言えない。逃げようと思えば幾らだって逃げることは出来たはずだ。見捨てることも復讐することも出来たはず。それでもエルムはそうしなかった。


(我に返ったっつーより……むしろ今が血迷ってるような匂いだな)


 それもそれでおかしな話ではある。しかしはっきりしていることもある。強がって苦しんで生きているエルムを変えられるのはあの人格破綻者であるヴァレスタなのだろうということ。


 「エルム君に強い影響力を持っている……肝心の兄さんがあれでしょう?このまま放って置いて良い方向に進むとは私には思えない」


 子供らしくないあの子供を、子供らしくさせるのは、子供よりも子供な大人げないあの兄貴。兄貴に関わった途端エルムはがらりと変わる。良くも悪くも……影響が強く現れる。

 リィナはその危険性を指摘している。

 でも、エルムを救えるのも傷付けるのもどっちも兄貴だ。多分他の人間じゃそうはなれない。それくらい兄貴は強烈な人間だ。……出会ったら最後。

 兄貴に出会う前に他に救いを見い出せる相手に出会えていたならそれでよかった。でもエルムはそういう相手に出会えなかった。出会う前に兄貴と出会ってしまった。それじゃ、もう遅い。

 兄貴はそう簡単に忘れられるような人間じゃない。良い奴でも悪い奴でも、後から出会えば比較してしまう。兄貴の強烈な印象、傲慢さ……それを塗り替えられるほどの相手。そういう奴を見つけなければエルムはそれに変わる救いを見出すことは出来ない。


(たぶん、そんな奴……いねぇよ)


 ヴァレスタはお世辞にも良い人間とは言えない人間。それでもそんな人間の傲慢さにエルムは救われていた。だからエルムがヴァレスタから逃げると言うことは、離れると言うことは……自分から救われることを拒むこと。

 これ以上傷つくのが嫌で、今の傷が絶対に他では癒えないと知っているのにそうしている。救われてもどうせまた傷付けられる。もっと深く、もっと鋭利に抉られるかもしれない。あいつはそれが嫌なんだろう。


 「……どっちがあいつのためなんだろうな」


 兄貴が善人だったなら話は簡単だったのに。こっちが正解だと胸を張って教えてやれる。しかし現実として兄貴は黒だ。何処へ逃げても何処へ収まってもエルムに安息は訪れない。安心できるはずの居場所……それになれるかもしれないあの男が、一番の危険地帯という可能性。

 そのどちらの側面もヴァレスタは持っている。だから安易にエルムの決断を咎めるわけにもいかない。


 「……ロイルは、エルム君のことどう思う?」

 「どうって……?」


 突然リィナに振られた話題。その意図がわからない。


 「私は西にいた頃はそうね……近所に住んでる男の子……その位の認識だった。本当はもっと傍にいたんだからもっと近くに感じてもおかしくなかったはずなのにね。だって同じ宿の中に暮らしてたわけでしょ?毎日のように顔を合わせていたはずなんだもの」

 「………だな」


 確かにそうだ。毎日のように会っていたはずなのに、エルムの印象は限りなく薄い。あんな目立つ髪の色をしているのに、居たのか居ないのか思い出せないような希薄さがある。

 それも今では考えられないことだ。目が覚めてすぐに異変に気付けたのは、今のエルムはそこまで存在感がないわけではないからだ。


 「エルム君は、息を殺して生きていたんだってこっちに来てわかったの。誰にも見つからないように生きていたんだわ。……何年も一緒にいたのに、私……エルム君があんな顔するんだって知らなかった。……エルム君を変えたのは、紛れもなく兄さんなんだわ」


 確かにここ最近のエルムは生き生きしていた。怒るしふて腐れるし毒舌も吐く。……兄貴の傍では。

 自分たちの前では以前とそんなに変わらない態度。相変わらず敬語だし丁寧な受け答え。一定の距離を保ったまま。

 この間戦ったときのような遠慮のなさがそこには感じられない。あっちがエルムの本当なんだと知った以上、今まで通りとは行かない。どうしても違和感が芽生える。

 そういう意味ではエルムはアスカとも似ている。本当は強いのにわざと面倒くさがって弱い振りをしている。自分に嘘を吐いて生きている。アスカは別にそれで良い。本人がそれを何とも思っていない。

 それでもエルムは違う。そうやって生きることが本当に苦しそう。それなのにそうやって生きているのは……やっぱり昔の自分にそっくりだ。


(全部、捨てちまえばいいのに)


 そうすりゃ楽になれる。唯、戦うことを楽しめる。生きるとか死ぬとか、そんなこともどうでもよくなる。どう生きるか何て、どうでもいい。

 今を生きてる。生きているって実感できる。誰が俺の死を願っていても、誰が俺を怨んでいても、俺はこうして勝って生きている。俺は俺の強さを実感できる。生きることは強いこと。強いことが生きること。弱い奴から死んでいく。弱肉強食が世界の真理。

 誰かを騙すこととか、陥れることとか……そんなことが世界の真理であるはずがない。強ければいい。そうすればそういう汚い全てに打ち勝つことが出来る。……そういう醜さから逃げることが出来るんだ。

 そんな風に命を狙われるなら俺は全然辛くない。どっちが上か。純粋な力比べ。その過程で死ぬならそれはそれで仕方ねぇし、俺は笑って死ねる。どっちが勝っても恨みっこ無し。そういう真剣勝負が俺は好きだ。明日のことなんか何もわからない。俺は今しか生きられない人間だ。そういう刹那を渡り歩く人間の、同じ匂いを感じ取って、そういう奴らと貪り合うのがいい。そういう奴ってそこまで生に執着ないんだ。今を楽しめるなら何時死んでも良いって心のどこかで思ってる。誰を怨むこともない。怨むならそういう風にしか生きられない自分を怨んでいるだろう。

 エルムのはそれとはちょっと違う。あれは死んでも良いじゃなくて、死にたい。死んでしまいたい。どこか虚ろなのは変わらないが、決定的に何かが違う。

 あの時はその迫力にただ興奮した。それでも後から冷静になって考えてみると、どうしてあそこまで惹き付けられたのかがわからない。あれはいつものバトルとは何か違う。……エルムは死にたいけど自分では死ねない。殺してくれと言いながら戦っているようだった。

 いくら強そうだからって俺はそういう相手とやり合うのはあんまり好きじゃないはずだ。殺した後に怨まれるのも嫌だが、感謝される殺しっていうのも気分は良くない。感謝ってのは互いに力を出し切った戦いへのものであるべきで、その死に感謝するものじゃない。その良い戦いのために俺や相手が死んでしまうのだとしたら、それは仕方のないことではあるが。

 もっとも、馬鹿な俺が考えてもこれ以上は埒があかない。わからないもんをずっと考えていることこそ馬鹿。なら他のことでも考えてみるか。わからないことは幾らでもある。


 俺自身、俺がおかしい自覚はある。助けるはずなのに戦って殺していたかもしれない。

 これまで俺の中で人間の認識ってのは3種類に分けられていた。

 1つ目は殺せない相手。こいつは殺したくない、つまりは戦いたくないって相手。幾ら強くてもそいつは無理だ。交戦対象として見ることが出来ない。

 2つ目は殺したい相手。こいつとは戦いたい。死ぬか殺すか白黒つくまでとことんガチでやり合いたいって人間。こういう奴が死んでも俺はたぶん悲しまない。

 3つ目はどうでもいい相手。守る価値も戦う価値もない相手。だから興味がない。

 言うなれば、エルムは4つ目だった。1から3の全ての側面を持っていた。3つ目のように弱いから交戦相手としての興味は皆無で、それでも弱いから守ろうと思った……1つ目のように。その程度には親しみがあった。それでも万が一死んでも1つ目程悲しまない。

 俺があいつに持っていたのはそんな、なんとも中途半端な親しみ。

 そこに戦闘能力の開花が成って、2つ目の興味が加わった。だから俺は矛盾した親しみをあいつに持っていることになる。頭では守らなきゃならないってわかってる。それでも欲だ。戦いたいって欲が捨て切れていない。またあいつが暴走したら、俺はきっと浮かれる。

 兄貴ほどじゃねぇけど俺も俺で危険なんだろう。だから兄貴の真似をしてエルムを助けようとしても、俺じゃ無理だ。殺してしまう。俺が助けてやるから戻ってこいとは……とてもじゃないが、言えないのだ。

 それならリィナに何とか上手いこと言ってもらうしかないんだろう。


 「……っにしても、何で兄貴なんだろうなー…」


 それはそれで考えれば考えるほど謎だ。それをカリスマとか生まれ持った魅力とか素質とか天性の何とかとかいう言葉でも片付けてしまえばそれまでだが、世の中納得できないことはある。

 首を傾げる俺にリィナは肩をすくめて溜息で応えた。


 「兄さんは最低だから」

 「それが理由なのか?」

 「そうよ」


 リィナが述べる答えにロイルは一瞬言葉を失った。それはヴァレスタにある良い点などではなく確実に悪い点だ。悪いものには悪いものの魅力とか引力とかは存在する。しかしそれは悪い中でも惹かれる部類ではない箇所だ。

 わけがわからないままの俺を置いてきぼりで、リィナは1人で何もかもを理解したように頷き出した。


 「だから年上だからって敬語で敬おうって気持ちもなくなる。精神年齢が自分よりずっと下なんだもの。当然だわ。でもそれは……エルム君から壁を一つ取ったって事。それはエルム君に優しくしても駄目。最低で子供な兄さんだからこそ出来たことなのよ」


 礼儀正しいあの子供。それは言い換えれば誰に対しても他人行儀。誰とでも他人。それを兄貴は最低であることで、その防御壁をぶっ壊したのだとリィナが語る。


 「……それじゃ、俺らやっぱり何も出来なくね?」


 同じ事をやれと言われてもそれは無理だ。ヴァレスタがたった数日で成し遂げたそれは、今まで何年もかかって自分たちには出来なかったこと。それが今できるとは思えない。

 思わず歩みが遅れるロイルの手を掴む者がいた。リィナだった。


 「それでもロイル、貴方にしか出来ないこともきっとある。貴方には貴方の美徳がある。そして貴方と彼には似ているところもある。通じ合える部分もあるわ」


 もう一度此方を見上げたリィナは、力強い笑みでロイルを見る。


 「兄さんが折れないのはもうどうしようもないわ。ああ言う人なんだもの。今更人格矯正なんて難しい年よ。だから申し訳ないけれど、エルム君に折れて貰うしかない」


 なんとも理不尽な話だが、一理ある。兄貴はもう手遅れだ。そんな気がする。兄貴は理不尽の権化みたいなものだから。


 「私達はエルム君がどうしたいのか、その気持ちを引き出す手伝いをしてあげるのが大切だと思うわ。彼が自分の気持ちに素直になれるように、助けてあげること……それが私達のやるべき仕事。違う……?」

 「リィナはすげーな……」


 相方の言葉は魔法のようだ。何をすればいいのか解らなかった状況から、一気に目的が明確なものへと変わる。人を焚き付けるものはリィナにもあるのかもしれない。少なくとも俺は焚き付けられている。彼女の言葉に。


 「やれそう?」

 「ああ、んな気がしてきたぜ」


 ロイルは笑う。久々に腹の底からの笑みをリィナに向けられたような気がした。


 *


 妙な内装。鼻につく匂い。頭がガンガンする。空気が違う。慣れない場所に居心地の悪さをロイルは感じる。


 「いらっしゃいませー」


 リィナとロイルを迎えるのはまだ10にも満たないような子供。冬場だというのに物凄い露出度の衣装。金髪緑眼だからカーネフェル人。


(カーネフェリーってことは女か)


 席に通されるまでの間、リィナの表情が少し硬くなっていた。リィナもカーネフェル人。他人事とは思えないんだろう。リィナは厳しいけど……優しいから。

 自分の力でどうにも出来ないことは割り切っているけれど、それでもそれを悲しく思う心はあるんだ。

 リィナのそういう顔を見るのは泣き顔の次に辛い。そんな顔をさせないためにどうすればいいのか。考えてみても答えは一向に見あたらない。

 この国がおかしいとはロイルも思う。こんな子供がこんないかがわしい店で働かされている現状は。それでもそれを自分が変えられたかと言えば難しい。大人しく玉座を継いでもお飾りの王が国を変えることは出来ない。議会を暴力で押さえ込んだとしても腐りきったこの国は、金こそ全て。すぐに命を狙われ暗殺されてジエンドだ。


(俺は王の器じゃない)


 全てを救えないのなら、それが出来る人間にその座を譲るのが一番だ。ヴァレスタには王の才能がある。それでも心がない。

 もし兄が王になったなら、奴隷貿易を終わらせること……こんなおかしな状況を変えることが出来るのかも知れない。いや、出来る。絶対に。唯、兄は絶対にそれを行わないだろう。なぜなら兄は金の亡者だ。金になるのなら、こんな子供でも赤子でもいかがわしい仕事を斡旋するだろう。兄はそういう男だ。

 どうにもならないこと。それは自分の力ではどうしようもないこと。それを諦めることが肝心。割り切ることが肝心。

 自分の限界を、力量を知って……そこで守りたいものを、その範囲を決めるんだ。それを見誤れば人は何もかもを無くしてしまう。かつての自分はそれを見誤った。頑張っても無駄だったのに。俺には才能がないから。出来ないことをやろうとしても痛い目見るだけだ。自分が。

 リィナはロイルがエルムの心配をしていることを喜んだ。それはロイルが守れる範囲を広げた……もっと強くなったと思ったからに違いない。


(…………本当にそうなのか?)


 自分が手を伸ばした所は、踏み込んだところは崖の先。それで自分まで落ちていってしまう可能性。

 なるべく何も抱え込まないように生きてきた。無関心に生きてきた。大事なモノはリィナだけだった。たった一つを決めたなら、後は簡単。それ以外はどうでも良い。

 アスカの事は気に入っていた。戦うのも下らない話をするのも好きだった。それでも仮に奴が死んでも悲しむことはない。リィナ以外はそういうモノだった。

 自分自身とエルムを重ねてしまうこと。それは危険なことなのかもしれない。今だって、十分らしくないことをしている自覚はある。


(でも、まー………今更っつぅのか?)


 今更だ。いきなり踏み込んできたわけじゃない。じわじわと浸食されて行った。

 リィナも言っていたが、あの宿で暮らした数年間……特別に親しかったわけじゃない。それでも仕事で遠出をしていなければ毎日のように顔を合わせる関係だった。会話だってそれなりにはする。

 記憶に残っているエルムは本当に少ない。それでもその僅かな表情のどれもが酷く悲し気で、寂しそうなこと。それが誰かに似ているような気がして。それは誰だろうと、少しずつ、少しずつ、考えるようになったんだと思う。自分の中でも知らない内にエルムについて考えることがあったのだろう。思いだしたように彼の姿を認識した時は、その背中に元気出せよと言ってやりたくなった。それでも何に対して落ち込んでいるのかわからない。それを理解できるほど親しくはない。そこまでよくも見ていない。それでも何となく気になった。

 そして突然あいつらが消えた。

 面倒事はアスカが担当。そのはずだったのに、アスカも仕事で帰って来ない。双子が消えてディジットは暗い顔。洛叉もどこかへ行方を眩ます。

 宿に生じた違和感。今までの当たり前が当たり前じゃなくなっていく感覚。1人、また1人消え……安心できるあの宿の空気が揺らいでいった。

 俺が依頼を受けたのは、その当たり前を取り戻したかったからだ。俺はあの宿のあの雰囲気が嫌いじゃなかった。誰も俺を殺そうとも思っていない。俺を憎いとも思っていない。あの感じが凄く好きだった。あの空気を生み出すための歯車の一つは、エルムにもあった。だからそう、今更。

 あいつが死んだとしても俺が泣いたりはしないだろうし、怒り狂ったりしないだろうけど、それでもたぶん少しは寂しいと俺は思うんだろう。

 だから俺は、そうなるのは嫌だと思う。

 東に来てからもそう。西にいた頃よりもっと身近で暮らしているから、余計眼に付く。話もする。新しく知ったことも多い。

 リィナと一緒に俺の世話を焼いてくれる。緑茶はリィナのが美味しいが、あいつの淹れる紅茶は美味い。料理の腕もなかなかだ。マメな性格で繊細なモノを作る。

 リィナは何でもやれると言えばやれるけど、過去のトラウマのせいで料理に関しては不味くはないが酷い。ゲテモノ料理も作る。食べられるものは何でも食べてみる。味付けは悪くないが、如何せん食材が酷い。普通にやれば普通に美味しく作れるのに、普通食べないような場所まで食材に使う勿体ない神経がリィナにはある。別にそんなものまで食材にしないでもいいんじゃないかと思いたくなるようなモノまで使ったりする。

 リィナが美味しそうに食べるから美味いんだろうと思ってその気で食べると腹壊したり寝込んだり……生きてきた環境と身体のつくりが違うんだって事を教えられる。

 俺はリィナと同じ楽しみを共有したいという気持ちがあって、同じ物を同じように美味しいと思いたいが、戦い以外で死ぬのだけは御免だった。

 リィナの食欲、その向かう方向は少しおかしい。変な食材を見つけると率先して買ってきてしまったりする。それが彼女には美味しそうに見えるんだと言う。食わず嫌いは良くないと思ったが、俺がリィナとの生活で学んだことは、食わず嫌いは素晴らしいということだ。俺の視覚嗅覚、直感は正しかった。宿にいた頃は下に下りれば良かったが、こっちに来て兄貴が台所をリィナに任せてしまったせいで調理場は酷いことになった。その買い出しに付き合いストッパーとして働いているのがエルムだ。もしリィナ1人で毎日買い出しに行こうものなら……リィナは兄貴への復讐を三日で遂げてしまうんじゃないだろうか?そうだ。冗談じゃない。エルムがいなくなったら、普通に食える料理の品数が減るんだぞ?


(これは何が何でも連れ戻さねぇと……)


 最悪の事態を想像してしまいった。メニューと一緒に運ばれてきた水を思いきりロイルは啜る。


 「ご注文、ご指名は?」

 「私はグリーンティーと、それから今日入った新人の赤髪で桜色の目の混血の男の子」


 リィナはさらっとエルムを指名。この異様な空間に酔うこともなくしれっと注文してしまうのだから凄い。


 「はい、かしこまりましたー。其方のお客様は?」

 「え?んじゃ麦酒とこのつまみセットってのを」

 「はい。麦酒とつまみっと……それでお客様のご指名は?」

 「?それって絶対やらなきゃいけねぇのか?」


 予算的にどうなのだろう。エルムを迎えに説得に来たのだが、指名料がとてつもなく高価。少しの時間なのにこんなにぼるかという値段。エルムが混血だということを今更のように思い知らされる。この間まで近所のガキみたいな付き合いだったのに。つい今朝までは居候みたいなものだったのに。


 「いえ、強制ではございませんが……」

 「浮気したら殺すわよ?」

 「……ああ、俺こいつの付き添いなんで」

 「ええ。今日は私の彼の前で若い子といちゃいちゃして見せつけるっていうというジェラシープレイなんですよ」


 にこやかに微笑むリィナが示してくれた逃げ道で、店員は愛想笑いで引き下がる。


 「助かった。あんがとなリィナ」

 「別に気にしなくて良いわよ。本気だし」


 つまり本気で殺すと。


(女って怖ぇえ)


 冷や汗が額に浮かぶのをロイルは感じた。


 「ていうか俺が何時浮気したんだ?」


 心当たりがまるでない。

 父の不誠実さを見て育ったから、浮気は殺人よりも重いと個人的には思っているだけに、そんなことを言われると焦りが生じる。


 「ふふ、冗談よ」


 焦る俺の姿を見つめ、くすくすとリィナが笑い眼を細める。そこでやっとからかわれたのだと気付く。


(女って怖ぇえ……)


 気恥ずかしさから胸の中で同じ言葉を繰り返す。

この二人も15章じゃもう…と思うと何か欝だ。

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