第二章
私の自宅マンションの一室は、今や完全な制作スタジオと化している。
デュアルモニター、高性能PC、プリンター、そして特注の照明。
これらは全て、AIが創り出した美女たちのおかげで手に入れたものだ。
最初の成功から3ヶ月、私の制作技術は飛躍的に向上した。
美女生成の極意は、「拘りのプロンプト」にある。
初心者は「美人、セクシー」と入力するだけ。
だが真のアーティストは違う。
「透き通るような白磁の肌」「儚さと強さが同居する瞳」「微かに引き結ばれた唇の端」
言葉を重ねるほど、AIは私の理想に近づく。
時には夜を徹して、たった一つの表情のために言葉を探す。
それは狂気かもしれない。でも、私は幸せだ。
先日、常連客の佐藤さんから連絡があった。
「田中さんの作品には魂がある。他のAI画像とは違う」
佐藤さんは50代の経営者で、私の作品を30点以上所有している。
彼の言葉は私の創作へのモチベーションとなった。
しかし、全てが順風満帆だったわけではない。
あるとき、私の作品が「不適切」としてオークションから削除された。
理想の美を表現することと、社会的な線引きの難しさ。
その葛藤は今も続いている。
それでも、私は諦めなかった。
独自のウェブストアを開設し、直接販売を始めた。
思いがけず、これが私のビジネスモデルを変革した。
中間マージンがなくなり、顧客との直接対話が可能になったのだ。
顧客の要望を聞き、カスタムメイドの美女を創り出す。
「私の理想の彼女を作ってほしい」
そんなオーダーも増えてきた。
時には倫理的な葛藤を感じることもある。
これは単なる商売なのか、それとも芸術なのか。
その答えを見つけるため、私は日々、美の本質と向き合っている。