ズレた世界
ズレた世界一話目となります。
黒いオーガ参戦です!
では本編へGO!
集まっていく亜人は次第にオークション会場である加工祭の中心を囲んでおり、ジャック達が目指す場所でもある。
他の亜人も人を襲ったりしているが、この状況で誰もが混乱している中で冷静に事態終息に向かって進んでいる者達が数名居る過程で、同時にこの状況で嫌がらせを普通に行えるものも現れ始めていた。
ドドナはビルディングの屋上から高笑いを続けながら亜人達が蔓延り襲撃し続ける地獄を見守っている。
その隣でメロンは高らかに歌声を周囲へと響かせており、その歌声は空をどす黒く渦巻かせていく。
「珍しいね。メロンが少しとは言え本気を出すなんて。破滅の歌声か…状況を悪化させるには十分だよね。厄災のホビットも動いたみたいだし、じゃあ僕も少し本気を出してみようかな…」
ドドナはポーチの中から薬品の入った小瓶を取り出してコルクのような蓋を開けて中の薬品を気化させていく。
気化していく薬品はとあるトラブルを引き起こすには十分なもので、次第に空には何か人型の化け物を呼び出しつつあった。
すると、メロンの後ろから「ドスン」という衝撃音と共に黒いオーガであるヴェルズリが現着した。
「あれ? もう一週間ほどは動けないと思ったけど? 意外と動けた?」
「まあな。リハビリでもしようかと思ってな。面白そうなことになっているな。俺も一枚噛ませろ」
「物理的にかませろって意味? それと…その大きな斧はどうやって準備したわけ?」
「まあ。良いじゃねぇかよ。ボスが用意してくれた武器だよ。何を呼び出すんだ?」
「鉄巨人だよ。この街を覆う厄災のホビットの呪いを付与した強大な呪い、それを増幅し、増幅した分だけを収束させた鉄巨人」
「へえ…俺も一緒に襲っても良いか?」
「はぁ…僕達は今回は直接手を出さないって決めているんだけど? 行くときは事前に「自分の意思で来た」って宣言してね。巻き込まない様に」
ヴェルズリが高笑いを続けながら大きくジャンプしていく。
俺達が会場に向けて走っていくと、会場の周りを無数の亜人達が囲っており、あれを突破するのは少し難しいかもしれないと考えていると、その亜人達を踏みつぶすように全長五メートルはあろうかという鉄巨人が現れた。
片刃の大剣を肩に乗せて現れ、全身に西洋風の鎧を身に纏っているような体をしているが、あの中身は全くの別だ。
この唐突の出現と言い…どうにも強化されているところを見る限りドドナとメロンの仕業だろう。
此処で状況を引っ掻き回そうと考えていての行動だ。
そこまでは良かったが、その鉄巨人と共に現れた存在だけは俺とディラブとリアンとアンヌの表情を曇らせた。
「また会えたな!! 元勇者一行!!! 俺も参加させてくれよ! この下らないお祭りを燃え上がらせてやるよ!!!」
生きていることは十分わかっている事だったし、別に良いのだがこの際ドドナの約束をこんな形で保護にしてくれるとは思いもしなかった。
まあ、こいつの単独行動な気がするし、多分それを理由として持ち出すのは分かり切っていた。
「加工祭なんてクダラナイお祭りを賑やかに変えてやろうと言っているんだ!」
「ドドナというホビットからは直接対峙は無しって話だったと思うんだが?」
「それはそっちの話。これは俺個人の参戦だ!!」
「誰? この人…この野蛮人」
「オーク大陸で出会った敵じゃよ。また厄介な奴が参戦したのう。てっきり当分は出てこないと踏んだのだが」
それは俺も同じ意見でてっきり出てこないと思ったからこそ真面目に驚愕しているのだ。
逆を言えばこいつらのボスはこの場所に何か興味が湧きつつある。
こいつはその為に呼ばれたのだ。
「何の為に来た? 何か目的があるんだろう? それこそ…お前が急遽来なくてはいけない理由。同時にドドナやメロンでは出来ない理由が」
「ふうん。なるほどね。まあな…でも。教えねぇよ! 知りたければ無理矢理にでも聞いたらどうだ?」
明らかに誘っているのが分かるのだが、ここは敢えて誘いに乗ることにして俺はブラックホールを作って正面へと向かって放つ。
するとヴェルズリがブラックホールの射程へと入ってきて、そのまま重たい斧を片手で振り上げてブラックホール目掛けて振り下ろす。
すると、ブラックホールがそのまま消えてしまい、魔力の塊となって消える。
驚きを隠せない皆に対して、俺とディラブだけが内心「やはり」と思わずにはいられなあった。
「術式そのものを解体したのか? 術式を解体して魔力の塊に変えたのか?」
「そのようだ。呪術には呪術の術式を解体する術がある。あの斧はそれを呪術だけではなく。魔力で構築している全ての術式を解除出来るようだ。俺の斧でも出来るが…同レベルだな」
「ほう。何となく理解していたが。やはりその斧もこれと同じレベルか。さては初代赤鬼のオーガが所有していた斧だな。やはりあの王家が持っていたか。それも欲しい逸品だったんだがな」
「何とかして鉄巨人にブラックホールを当てたいが、多分あのヴェルズリはどんな状況でも確実に俺の術式を解除してしまうだろう」
「なら。私達がヴェルズリと亜人を何とかするしかないよね」
ネリビットは登山したときも使用したオリジナルのバズーカ、メイビットは小型のハンドガン型の銃を握りしめる。
このパーティーメンバー現在後方支援職が多いな。
バランスが悪い。
やはり俺が突っ込んでいくことが出来ない分不利になっている気がする。
やはり簡単なもので良いから武器を何処かで調達するべきだろうか。
「お祭りだ! 精々賑わいながら戦おう! どうせ厄災のホビットはもうこの街には居ないんだからな!」
「だろうな。秘書に奇妙な依頼をしたのがその厄災のホビット自身ならもうこの街には居ないという事になる。そうか…このトラブルの原因がお前が来た理由か!?」
「どうだろうな!」
俺は建物の方をジッと見てみると、建物の最上階辺りから邪悪な気配をはっきりと感じ取れた。
何かある。
多分だが、厄災のホビットが作った逸品がこの建物の中に。
だが、どうして今まで俺達のセンサーに反応しなかった?
「多分だけど。この建物をズレた世界越しに結界を張っていたからよ。今まではズレた場所に隠していたのよ。それが結界事この世界に現れた。結界が気配の妨害をしていたのなら、接近しないと分からなかったと思うし。隠し場所としては完璧よ」
「はい。その為に世界をズラした。ズラした目的はそれですね。隠し場所を見つけつつ、秘書達を雇った目的は実力者達に牽制しつつ世界のズレに気づかせない事。そして、バレても詮索し辛い状況を完成させるためです」
「ハハハ! 賢いお嬢ちゃんだ。俺は好きだぜ。他の連中は嫌いみたいだけどな…俺は楽しめればそれで良いんだよ! さあ! 来いよ!!」
どうでしたか?
そろそろ浮遊大陸についても多少は切り込んでいきたいと思っております。
では次は双厄のホビット第十八話でお会いしましょう!




