加工祭 10
加工祭十話目となります。
いよいよ事態が動き始めます。
では本編へGO!
世界のズレという現象は意図的に起こせる良いなものではないのだが、しかしある程度の条件を揃える事なら意図的に起こすることは出来る。
で、この場合意図的に揃えられたかどうかはズレた空間へと入れば分かることで、このズレは俺がエレベーターに乗り込んだ瞬間に現れたものだ。
俺が原因という事は無いだろうからと思いドアを開けてみると、全く同じような場所に出た。
これもまた珍しいことではないのだ。
このズレとは結局で世界というべきレベルで空間がズレることで生じるもので、中身は凡そ同じような見た目をしている。
ただ、何かズレの原因と言うべき人間の影響を受けている部分があるはずなので、それを見つけて修正すれば消えるはず。
ただ、このズレた世界にはズレた世界にしか生息しないモンスターが存在しており、それは人の形を取りながらも人ならざる者としての姿を取っている。
ある人はそれを『悪魔』と呼び、ある人は『天使』とも言うが、全体的に『亜人』と呼ぶ人間が殆どだ。
触手で体を構築しているような見た目をしており、頭部には小さい穴が開いているが、穴の奥には真っ暗な闇が見えるだけ。
手の指は尖っており五本きちんと存在しているわけだが、体自体は細くユラユラと揺れながら歩ている。
これが亜人族である。
このズレた世界にしか存在しない特殊な存在であり、発生理由も消滅理由もまるで判明しておらず、世界が空間事ズレた場合のみ発生しズレが修正すると消える。
だが、生じて『人』を食べるという事だけは分かっており、ズレた世界に入ってしまった人はこの亜人に襲われるのだ。
地下一階の細い道に一体ユラユラと揺れながらとどまっており、猫背になっているその体、顔と上半身事俺の方へと向き直り、俺をしっかりと視認したのか下半身事俺の方へと向き直る。
攻撃が来るなと思いつい剣を取りそうな動作を取ってから「そういえば無いんだった」と思い至り深いため息を吐き出すと、俺は後ろを気にすることなく余裕をもって避けると後ろのドアが開いた。
流石の流石に「え?」と思っていると、物凄い衝撃音と共に俺は顔面蒼白になってしまい、内心焦ってしまう。
亜人の伸びた両手による刺殺攻撃で生じた砂煙に似た何か、その何かから小さい人のような者が突っ込んでいき亜人の体を粉々にしてしまった。
「なんで居るんだ? アンヌ」
「え? ジャックが居なくなっているから。ジャックの部屋に入ったらディラブが寝ているだけだし。起こしてみると「知らん」しか言わないから。したら、エレベーターが地下一階からやってくるし…」
行動力が怖い。何この推理力に行動力。
俺が地下一階に居るって予測して全く迷うことなく行動しているし、攻撃が来てもまるでダメージが無いし。お前怖いな。
「だって…ディラブを盾にしたもん」
よく見るとディラブが武器でしっかりと防いでいるのが良く分かるが、こいつこの土壇場で仲間を盾にしやがった。
俺はディラブの後から続いてくるかもしれないエロ爺を期待していたが、ディラブはそっと扉を閉める。
「リアンはどうした?」
「え? いつの間にかロープが取られていてね。ベットに入ってきたから殴りつけたら気絶したの」
「…それは…」
そこから「俺がロープを外した」事「多分お前を起こそうとしていたと思う」と言おうと思ったが、なんか駄目な気がして止めておくことにした。
ディラブは「で?」ととてもワクワクしながら瞳を輝かせて俺に尋ねる。
「これはなんだ? 今度はどんなトラブルを連れてきたんだ?」
「あのね…エレベーターに乗って下に降りようと思ったらこの建物にズレが起きたのが分かったから解除しに来ただけだ」
「世界のズレね…この街規模で起きていることじゃ無い? 街に来てから小規模だけど至る所で起きているみたいだし。ジャックはずっとホテルに居たから気が付かなかったけど」
「え? なんで閉じないわけ?」
「至る所で発生しているし…一回一回修正していたらきり無いもん」
「なのね。お前聖女だろう? そういうズレを修正するのもお前の仕事だろうに」
「多分街規模で発生しているみたいよ。発生原因も良く分からないから放置していたんだもん。お祭りと関係あるのかなって」
「要するにこのズレとやらを修正するには如何すればいいのだ?」
「発生原因を修正すればいいの。でも…止めておいた方が良いと思うよ。私だから気が付いたことだけど。まあ、外を見れば分かるかな」
アンヌに案内されるように俺達は一階へと戻っていき、そのまま一階外へと出てみると俺は唖然とした。
本来ズレた世界とはズレている部分だけが見えていて、そこから先ははっきりとした壁が作られているのだ。
しかし、どういうわけかこの街を丸々巻き込んだ形で存在している。
所々に壁が作られている点を見てもまだ町全てを覆うまでは出来ていないようだが、それもきっと明日の祭りの最終日までには完成しそうだった。
「でしょ? 強いていうならあの私達が昨日行ったあの場所だけ結界みたいなものを建物の中から張られていて見えない様に接近されない様にされているみたい」
「…じゃああの建物自体がこのズレの原因か?」
「多分だけど。あそこから街全域に対して浸食が進んでいるみたいだし…間違いが無いと思うけど」
「入れないのか?」
「どうかしら。お祭り中に偶然でも入れる場所を見つけて接近してみたけど、そもそも結界が張られているからそれ以上先にはいけないし」
「破壊すればいいだろう。アンヌなら出来る」
「無理。ルールによる制約を掛けてあるから。あれはこの場所に居る限りは有効よ」
「建物の中には出入口は無いのか?」
「在ったら気が付く。俺達が反応しなかったという事は無いという事だ。出入口を封じており、かつ何かの制約を掛けて結界を絶対にしているんだろう。まあ、時間制限と言った感じか」
俺の頭の中で嫌な予感がしてしまうが、これでは確かに明日まで動きようがない気がする。
そんなことで俺は亜人を軽く相手をしながら来た道を戻り、元の場所に戻ってきたわけだが、この日はそのまま三人で街中を回って犯人捜しだが、結局見つかることは無かった。
そんなことをして翌日。
お祭りでも参加しながら様子を見ようという話になり、みんなでホテル前で準備をしていると、街中に設置されているスピーカーから発声テストの声が聞こえてきて、そのまま宣言が始まる。
スピーカーから聞こえてきた「スタート」という声と同時だった。
同時に昨日ホテルから感じる強烈なズレが急に近づいてくる気配を感じ取る。
何かが起きていると思ったその瞬間、眩い光と共に加工祭の中心部分にある建物に強力な結界が現れる。
そして、街中にこの世界には存在しない『亜人』が現れて人々を襲い始めた。
「何が起きている!?」
「ズレていた世界とこの世界が一時的に融合しているんだ! 早めに修正しないとヤバいことになるぞ」
「発生原因は昨日話していた通りあのオークション会場じゃな」
俺はホテルの入り口で焦った様子を見せているジュアリーの秘書の存在が目に入った。
俺は逃げようとする彼を捕まえて物陰に連れて行き脅しつける。
「此処で殺されるか。大人しく吐き出して捕まるか。どっちだ?」
「ち、違う! 僕じゃない! こんなことになるとは思わなかったんだ!」
「どういう意味だ?」
「僕は雇われただけなんだ! 街中に杭を刺して回れって! ジュアリーさんの部屋に手紙を置けって! まさかこんなことに」
どうやら何人か雇った人間が居るようだな。
だが、今だけはあの場所へと移動することが重要なようだ。
どうでしたか?
次回はあのキャラクターが再登場です!
では次は双厄のホビット第十七話でお会いしましょう!




