加工祭 5
加工祭五話目となります。
ドドナ再びです。
では本編へGO!
加工祭の本番は三日間に掛けて行われ、基本は作った商品を売り出すフリーマーケットを下地にしたお祭りであり、ホビット中から様々な人達がやってきてここで売る。
売る商品は『加工済みの商品』のみとなっており、それも自分で作った商品だけを売り出すことを目的にしており、中にはこの加工祭で一躍有名になる人物だっているぐらいだ。
それだけこの加工祭の盛り上がりは大したもので、中でも最終日に行われるオークションは金持ちが集まり、一攫千金を目指す者達からすれば夢である。
誰でも参加できる気安さやこの街自体が催し物として盛り上げている事もあり、この加工祭はいつの間にかお祭りとして認識することとなった。
当日からの参加も出来るらしく、俺とリアンとネリビットとメイビットの四名で当日の参加を目指すことにした。
街の中心に三階建ての城のような石造りの建物が立っており、元は有名な地主が住んでいたらしいが騙されて借金まみれになった後建物は街が買い取ったそうだ。
「そうなんだ。ジャック兄ちゃんは良く知っているね。来たことあるの?」
「調べただけだ。調べれば大体の事は分かるさ。情報は知ることは何事も有利になるぞ」
「だよね。ネリビットはもう少しちゃんと知りなさい。直感で動く癖止めたら?」
「良いんだよ。姉ちゃんと違って俺はあまりそういうのは得意じゃないんだもん。爺はどうなんだよ」
「儂…すっかり爺で定着したのう。まあ、情報は最低限でも知っておけば売る時も有利じゃと思うぞ。ニーズに応える。客層の幅は? 売る時の基本じゃぞ」
俺が黙り込んだままリアンをジッと見ると、リアンは「何じゃ?」と不思議そうな顔を俺の方へと向けた。
なんというか…こうして聞いてみるとリアンが…
「まともに見えるから不思議だな」
「失敬じゃな!! 儂は常にまともじゃぞ!」
俺はこの世の不思議を見たような気持ちになってしまい首を傾げながら建物の中へと入っていく。
建物は石造りで出来ている意外に、大きな堀に囲まれていて防衛用の設備が所々に残っているが、そんなに攻め込んでくる人間が居たのだろうか。
降ろされている橋を渡って建物の中へと入っていき、入ってすぐにある受付に代表して俺が受付用紙を貰いそこに素早く記載していく。
まあ、本来であればネリビットとメイビットが書くべきなのかもしれないが、二人はまだ未成年。
此処は大人として俺かリアンが書くべきだろうと判断。
「フリースペースは好きな場所を選んで使ってください。何処でも構いません。商品が無くなった時点で終了です」
「フリースペース以外は事前予約が必要ですか?」
「はい。当日の方は皆フリースペースのみとなっております」
俺達は受付の方から説明して貰ってからそのまま一階全域にあるフリースペースを見て回るわけだが、まあ朝の七時というのにすっかりめぼしい場所は抑えられている。
どうしたものか。
「やはり目ぼしいところは抑えられているのう。端っこの目立たない場所なら結構余っておるが」
「ええ。売るなら目立つところが良い」
と言われても困る。
無いものは無いと思って諦めて中心から外れて行こうとしたところで、滅茶苦茶良いスペースが余っていることに気が付いた。
ネリビットが「此処で良くない?」と元気よく話しかけるが、俺やリアンやメイビットは此処が開いている理由が分かってしまった。
対面に目立って仕方がない売店が存在しているのだ。
並んでいる商品も値段としては若干高めだが、アクセサリーから家具などまで様々である。
転売屋ではなかろうかと俺とリアンはすっかり疑っており、人気だけを言えば確かにあるようだ。
この目の前でやると確かに皆嫌かもしれない。
「他にするか?」
「どうかのう。端っこに行ってもあまり大差ないように思えるがのう。儂としてはあれに負けんぐらいの商品が在ればいい勝負できそうじゃが」
「ていうか。あれって転売屋じゃないのか?」
「確かこの加工祭の運営方針上転売も許されているはずです。無論オークションは禁止ですが、フリースペースだけなら許されているはずです」
「此処で良くねえ? どうせ端っこに行っても似た感じだろ?」
「まあ。ネリビットがそれでいいなら俺は構わない。メイビットは?」
「構いません。多分何処に行っても変わらないですし、ここで悩む方が勿体ない気がします」
メイビットは持ってきたカバンから綺麗な紫色の布地を木材で出来た大きな商品置き場へと敷く。
元々フリースペースには一定の間隔ごとに木材で作られたお店が用意されており、それを自由にデコレーションしていいらしい。
実際目の前のお店は金色とか豪華に装飾しており、正直に言えばあまり良い趣味とは言えないだろう。
というか悪趣味。
「で? 何を売るんだ?」
「えっとですね…昔作ったネックレスや指輪です。シンプルな奴から装飾に拘った品まで様々です。基本は貴金属品だけですよ。大きい商品は錬金術では作りにくいですから」
メイビットが取り出す品はどれも完成度が高く細かい部分まで錬金術で作り上げられているのが分かった。
俺は弟のメイビットの方は何を売るつもりなのかと聞いてみると、これまた豪華な品が出てきた。
基本は同じ貴金属なのだが、細かい装飾やシンプルさで勝負をするメイビットとは違ってこちらは派手な装飾やぱっと見で目立つ品ばかりが並んでいる。
性格が出るな。
「どれも品が良さそうだな。何というか性能も良さそうだ」
「はい。性能はやはり錬金術としては一番考えている部分ですね。それを伝えられたらいいんですけど」
確かに性能なんてぱっと見で分かる部分じゃないだろう。
特に素人目で判断できることじゃ無いのでこればかりは事前に策を講じたほうが良さそうだ。
分かり易く何か書いて見せるか。
しかし、商品が多いこの状況でそんなことをし始めたらきりがない。
そう思って考え込んでいると俺は邪悪な気配を感じ取り、気配がやってきた方向へと向かって顔を向ける。
そこにはメイランドで俺達と接近遭遇したドドナがニタリと笑いながらこちらを見ていた。
俺は三人の前に立ち警戒心を丸出しにする。
「警戒しないでよ。流石にここで暴れるほど常識知らずじゃないよ。加工祭には毎年参加しているんだよね。こういう催し物は意外な掘り出し物があるからさ」
「どうだろうな。先日メイランドで大きな騒ぎを起こしておいて」
「ハハハ。あれはルールを破る方が悪いんだよ。オークションで普通に購入したのならあそこまで派手な行動はしなかったよ。でも…新しいお仲間? なら気を付けなよ。今回の加工祭は随分きな臭い匂いがするから」
「トラブルを起こすつもりか?」
「僕が? まさか。言っただろう? 此処で馬鹿なことをするほど愚かじゃないよ。まあ、面白そうなら引っ掻き回すぐらいはするけどさ。まあ…その必要が無いぐらい今回の加工祭はきな臭いよね。面白くなりそう」
こいつ等が言うと冗談に聞こえない。
どうでしたか?
次回はいよいよ女優ジュアリーとの会話が描かれる予定です。
では次は双厄のホビット第十二話でお会いしましょう!




