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人を呪わば穴二つ

村での出来事の最終話というかエピローグ回みたいなお話ですね。

では本編へGO!

 人を呪わば穴二つという言葉を嫌と言うほど俺とアンヌは良く身に染みて理解しており、その理由を何度も何度も教科書で、実際に見て経験してきているのだ。

 人を呪った時自分も呪っているのだという自覚を持たなくてはいけない。

 本来呪術と呪いは全くの別物で、それ故に呪いは裏家業の人間でさえ基本手を出さないのだ。

 呪いに対しても女神の加護は十分に発動するわけだが、この場合手を出さない理由は呪いを解呪した際にその呪いそのものは帰る場所を求めるものだ。

 この場合は呪いを遣わした者の元へと帰り呪うのである。

 それ故に教会も、ディフェンダーも、そして各種族のトップさえも呪いを使う者は例外なく『下法』と呼ぶのだ。

 危険でそれでいて下手をすると呪い返しで街一つを滅ぼしかねない危険は術、本来であればこんな素人集団である一つの村が勝手に手を出せるような案件ではないが、この場合彼らが催眠に掛かっているという事が悪い意味で作用してしまった。

 いや、今思えば初めっからこうなることを予想して催眠を掛け、呪いを教えていたのかもしれない。

 一度催眠に掛かれば徐々に脳の安全弁が外れていくらしいのだ。

 危険な事でも「大丈夫」と認識できてしまい、最後には危険な事でも平気で手を出すのだとか。


 俺とアンヌはそういう簡単な思い込みで呪いに手を出し、一つの集落を滅ぼしたという案件を一度だけ遭遇したことがある。

 アンヌはそれ以来『解呪』という作業を何処か嫌がるようになったわけだが、今回もあまりいい顔をしていなかった。

 そういう意味では彼女はあのトラウマを未だに払しょくできていないのだと分かる。

 俺だって本当ならこんなことをしたいわけじゃないが、解呪をする際の決まりはきっちり守らないと近くの街などが被害を受ける場合があるのだ。

 特にここはメイランドが近くにある村であり、規模も村の中では大き目の千人異常が住んでいる。

 この村の全員が呪いに手を出したと考えれば一体どんな呪い返しがやってくるのかなんてことは俺には想像すらできない。

 だから俺はアンヌに『ディフェンダーへの連絡』を任せたのだ。


 ネリビットに言わなかったのは、言えば傷つく可能性があるからと考えたからだ。

 どんな悲しいことをされても故郷は故郷である。

 約束通り俺達があの村を出る際のゴタゴタも終えて、そのまま約一日が経過しようとした際、ネリビットと姉のメイビットが目を覚ました。


「お、おはよう…あれ? 此処何処?」

「ああ。隣の大き目の街だ。もう夜だけどな。メイビットちゃんも大丈夫かな? 呪いは完全に解呪されているはずだけど」

「はい…解呪したんですね」


 何となく分かっていたが、この姉の方は賢く相当知識も豊富なようで、解呪するという事の意味を知っていたようだ。

 この子、解呪出来たのにあえて甘んじていたのかもしれない。


「うん。君の気持ちは尊いがこの場合彼らに無用の罪を抱かせるだけさ。それに、一度呪いを使えば下法だ。下法は狩る。これが決まりなんだ」

「? どういう意味?」

「あのね。ネリビット。呪いを解呪すると呪いは呪った本人に帰るの。それがどんな形で発言するか分からないけど、村の人達全員で行ったのなら多分あの村の人達は…」

「全滅したよ。翌朝にはダンジョン化していた。最もキング種は俺が魔術で一撃で倒したから心配しないで良い。それと…」


 俺はカバンの中から一枚の大きな布を取り出して二人に手渡す。

 リアンが気が付いたことだったが、二人が住んでいたあの家はロストテクノロジーで出来た錬金術の品物だった。

 どうやら家そのものは別空間に存在しており、あの布を敷いている間はこの場所に呼び出すことが出来るようだ。

 まるであの場所に家があるかのように見せていただけなのだろう。


「知らなかった。姉ちゃんは?」

「母さんからそういう機能があるとは聞いていたけど…使ったのは初めてで。あの村はもう…」

「現在立ち入り禁止だそうだ。ホビット政府は既にあの村については情報統制をしているようだな。どのみち下法に手を出したような連中をかばう事は出来ないし。ディフェンダーは当面ダンジョンの領域が拡大しない様に『要監視対象空域』として見るようだ」

「それって何なの? ディフェンダーって何?」


 俺は二人にディフェンダーと政府との関係を軽く話した。


「既にナーガ政府は俺達がオーガ政府と会談の段取りを建てている間に階段を終えていたようでな。もう必要が無いんだそうだ。最も俺達は別の用事があるからな」

「勇者の剣作りですよね? 火山の麓にあると聞いたことがあります。あの…私もお兄ちゃんって呼んでも良いですか?」

「? うん。構わないけど」


 なんだろうか?

 この子達に俺はどう見られているのかが少し気になるところであるが、まあそこは言及したりするようなことじゃない。


「あのアンヌ…お姉ちゃんは何か気にしていましたか?」

「アンヌ? まあ…あれは一種のトラウマがな。でも、この町で今加工祭をしているって聞いたら一瞬でテンション爆上りでそのまま買い物しに行って帰ってこないな?」


 二人は「え?」と聞き替えてくるので俺は肩をすくめながら「どこにいるのやら」とヘラヘラしながら言う。


「トラウマって? 聞いても良いですか?」

「う~ん。まあ隠し事することじゃないか。かいつまんで言うと今から五年前かな? まだ二十になる少し前ぐらいかな? その際に俺とアンヌは呪いを掛けられたという依頼をこっそり受けてな。その人の解呪をすることにしたんだけど…その人一人や二人だったわけじゃないらしく、小さい集落で二、三十人がまとめて呪いを使っていたんだ。解呪したら案の定呪い返しが起きてな。その結果…」


 集落を襲う亡霊の誕生であり、教会のお偉いさん曰く『呪い返しにあった者達の怨霊であり、モンスター化してしまった成れの果て』だった。


「ダンジョン化こそ免れたけれど、その怨霊によって十分すぎる被害が出てな。そのままその集落は閉鎖されたんだよ。それ以来アンヌは意図的に解呪の作業をどうにも嫌がるようになってな。だけど。君たちが気にする必要はない。君達は完全に被害者なんだ。誰かは知らないが。どうやらホビットの双子を狙って動いている人間が居るようだ」


 これはディフェンダーも同じ見解らしく、下手をすれば彼らが裏で動いている可能性も全くないわけじゃないが、にしてはやり方が遠回り過ぎる気がする。

 彼等なら直接襲撃していただろう事は想像に難くない。

 となると、別人が居るという事だ。


「それでな。二つアイデアがある。ディフェンダーや政府としては君たちを保護したいそうだ。それが一つ目のアイデア。二つ目は俺達とこのまま行動を共にするという事だ。俺達は全然かまわない。どうする? 俺達に強制させることは出来ない。ただ…政府が完全に安全であるとは断言はできない。これはディフェンダーも同じ意見だ。ホビット政府は所謂会議性を取っており、話し合いで全てを解決する。その代わり派閥も存在しているんだ?」

「派閥って何?」

「それぞれ集まりがあって、その集まりごとに考え方があるって事。だよね?」

「そう。それ寄ってはその派閥の中に犯人が居てもおかしくない」

「私は…お兄ちゃん達と一緒が良いです。錬金術で色々助けられるし…私冒険してみたい」

「俺も! 一緒が良い! 良いよね?」

「ああ。アンヌも喜ぶよ。それじゃあ。祭りに行こうか? まだ夜も更け始めたばかりだしな。外で軽い夜飯にしようか」

「「うん!」」


 苦しんだ分だけこの子達には前を向いてほしい。

 そう思いながら俺は二人と一緒に外へと出て行ったのだった。

どうでしたか?

ネリビットとメイビットは正式にパーティキャラクターとして入ってきました。

では次は双厄のホビット第六話でお会いしましょう!

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