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双厄のホビット

第二章双厄のホビット一話目となります。

いきなり新たなキャラクターの登場ですね!

では本編へGO!

 一人のホビットの少年は右手に握りしめている布袋を揺らしながらもなんとか目的のお店の前まで辿り着こうとしていた。

 顔をすっぱり隠すような大きなフード、そのフード越しにでも分かるぐらい尖った耳と低い背丈は間違いなく彼がホビット族である証であるが、同時に彼はずっと「自分がホビット族でさえなければ良かった」と思わなかった日は無い。

 ホビットのとある村に生きる少年、この少年にとってこの村で生きていること以上に生き辛いことは無かったからだ。

 少年は布袋の中から十枚のコインを取り出して店主の前に突き出す。

 店主は少年を嫌悪の表情で見ながら舌打ちをして店の中から一つの花を取り出して差し出した。

 少年はその花を前にして店主に食い掛った。


「少ない! 前はもっとくれたろ!?」

「良いから持って行けよ。お前達に寄越すモノなんてこの程度だ。この双厄のホビットめ!」


 少ない一輪の花を手にして駆け出していく少年の瞳から一筋の涙を流しながらも来た道をそのまま戻っていく。

 多くの人はその姿を見てもまるで気に掛けることも無く、むしろ彼に対して冷たく接しているだけである。

 下ばかりを見ていたからだろう、一際大きな人間に気が付かなかった。

 ぶつかって初めてそこに何かが居ることに気が付き、そっと上を見上げてみるとそこには西洋風の兜を付けたような大柄の大男が立ち尽くしていた。

 ぶつかった拍子に花を落としたようで探してみると、心無いホビットの老人の足で容赦なく潰されてしまっており、少年は悔し涙を流しながら走り去って行く。

 大男はそんな少年はずっと消えるまで見ていた。


 少年は町から離れた一軒家へと入っていく。

 二階建ての丸みを帯びた家、尖がった塔のような突起物などが付いている小柄なホビット族には不似合いなほど少し大きめな家であるが、その一軒家に入っていき、奥にいるベットに横たわった少女に涙を流しながら近づいていく。


「ごめんよ。姉ちゃん…買えなかったよ」

「……良いの。それより、何か悪いこと無かった?」


 少年は口から漏れ出そうになった先ほどの出来事をぐっと飲みこみ、無理矢理笑顔を作ってから「何も無いよ」と言ったが、少女にはその表情だけで全てを察することが出来た。

 だから、少女は「ごめんね」と涙を流しながら苦しそうに息を吐き出す。

 苦しい生活を強いられている少年と少女、双子のホビットと言うだけで忌み嫌われて生きている二人、ここは国境に比較的近い町、メイランドから歩いて半日の場所にある田舎町。

 その外れに追いやられるように生きている二人の双子の錬金術師。


 少年はくやしさから再び涙をにじませる中、突然窓が開き大きな手に握られている少年が失ったのと同じ花束を視界に入れた。


「これが欲しかったのかな? 少年」

「え? お、おじさん?」

「おじさんとはな。これでもまだまだ若造だよ。ホビットの少年。これが欲しかったんだろう? 済まなかったな。俺がぶつかってしまったばかりに」

「く、くれるの? 僕達は…僕達姉弟は双厄のホビットなのに」

「それは誰がそう言ったからだろう? 俺には関係ない話だよ。それに…」


 男は少年の目をしっかりと見ながら言う。


「俺は噂話で人を嫌うような人間が嫌いだ。俺はジャック・ロウ。元勇者だ。少年。君の名は?」

「ぼ、僕は…僕はネリビット!」

「そうか。ネリビット。これが必要なんだろう?」


 ジャックは花束を少年に差し出し、少年はそれを受け取りながら金を差し出そうとするが、ジャックはそれを右手で制止する。


「いらない。俺が勝手にしたことだ。貰っても困る。貧乏人から金を貰って喜ぶ人間だと思われても困るしな」

「び、貧乏人じゃない」

「悪かった。悪かった。早く薬でも作らないと辛そうだぞ」


 少年はハッと気が付き急いで奥にある大鍋に花を入れて煮込むようにかき混ぜていた。


「錬金術師なのに錬金術を使わないか…何故使わない」

「使って薬を作っても効果は無かったんだ。どうしても治らなかったんだよ」

「それはそうだろう。これは呪いだ」

「の、のろい? それって呪術って事?」

「う~ん。似て異なるものかな。呪術とは違って誰でも扱う事が出来る代物で、同時に基本は「他者への恨みや憎しみ」が原動力だ。彼女は誰かに恨まれているって事さ。内心で「死ねばいい」と思われているような」

「そんな…どうすれば…」

「とりあえずそれを飲めば楽にはなる。多少はな」


 ジャックに促されるように少年は作った薬を姉に飲ませる。

 そして、少年は今一度ジャックの方を見る。


「元勇者なら…治せる?」

「無理だな。そういうレベルじゃない。ただし…解呪する方法を知らないわけじゃない。これでももと勇者。そういう知識ならある」

「ほんとか!? 教えてくれ」

「ただし。お前ひとりでは無理だろう」


 ネリビットは俯きながら両手を握りしめてはっきりとした声を上げる。


「手伝ってください! 姉を助けたいんです!」

「良いとも。この元勇者ジャックが手助けしよう。元勇者の名に誓ってな」

どうでしたか?

若干暗めのスタートとなったと思いますが、少し進めば多少マシになると思います。

では次は双厄のホビット第二話でお会いしましょう!

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