『元勇者』の剣
いよいよノルヴァスのおおよその正体を理解して抱けるお話です。
では本編へGO!
丁度ど真ん中にあたる港前まで辿り着き、俺達は港側の反対がをそっと見るとそこには四階建ての洋風の豪邸が建っていた。
色とりどりの色彩を持つこの町の中でも一際派手な色合いである金色、反射する太陽光の光と相まって滅茶苦茶眩しく普通に被害が出そうなほどである。
ていうか近所迷惑も良いところだろうが、しかし誰も文句を言わないのは彼が良くも悪くも権力者だからだろう。
金と権力で他人を黙らせるというわけだ…面倒な奴が対面にいるな…どうしたものか。
まあ、この場合無視をして話を進めたほうが得策だと判断し、俺達は黙って港前の方へと向かって歩き出す。
首相達が到着するのに後一時間はあるので近くのカフェでも時間を潰すかと思ったが、ディラブはジッとしているのが嫌らしく普通に嫌そうな顔をされた。
「ずっと立ちっぱなしって疲れない?」
「疲れん。これぐらい普通だ。一日中立っていればその内慣れる。アンヌもやってみるか?」
「お断ります。脳筋さん達で勝手にしていてください」
笑顔を魅せるアンヌに対して「つれない」みたいな顔をするディラブ、俺達はその辺のカフェで話でもしていようという事になる。
あと少しで到着だと思うと少しだけだが寂しいという気持ちが沸き上がってくるわけだが、ババルウ君と一緒にいるのも今日まで。
「皆さんのおかげで強くなれたと思います。次期国王として自信になります。本当にありがとうございました」
「良いの。ババルウ君だってこれからが大事なんだからしっかりね」
「その通りじゃな。君なら誰よりも優しい王に成れるじゃろうな。胸を張る事じゃ」
こうしていると弟子を見送る師匠の気持ちになるわけだが、俺やアンヌの師もこんな気持ちで俺達を送り出したのだろうか?
何も感慨も無いような感じで送り出してくれたけど、やっとすっきりしたみたいな、厄介者が居なくなって助かったみたいな感じだったけどさ。
あれは照れ隠しと言う奴なのだろうか?
似合わない人だなと思う、実際似合わない人だし。
「しかし、オーガにとってはこれからじゃのう。今まで隠していたモノが世間に知られるわけじゃし」
「はい。でも。今の社会情勢上隠しておくことが良いことだとは思えません。今回の事態のように怪しい輩がこれからも増えていく中で各種族間で結託することは大切なことだと思います」
「実際酷い目に遭っているしな。今回だって俺達が居なかったらどうなっていたか分からんぞ。後継者である三兄弟全員が全滅だってしていてもおかしくない」
「あのヴェルズリという黒いオーガならやりかねないと思うけど。実際協力していた次男を殺そうとしていたし。あのメロンというドラゴン族が普通に退路を塞いでいたから逃げられなかったと思うしね」
「あの宝玉が狙いみたいな口ぶりでしたね。そんなにいい宝玉だったんでしょうか? 父上は「ただの魔石だ」って言っていましたけど」
「「ただの」ということは無いさ。実際特殊な能力を持っているし、もしかしたらあの男の一族事態が何か恨み言を持っているかもな」
「なんで? そう思うわけ?」
「理解しているわけじゃない。仮説の一つと言うだけだ。それに、何か赤鬼のオーガ事態にも何か抱いているみたいだし、王家や赤鬼のオーガについて調べてみると分かるかもな。女神の聖典にでも載っているんじゃないのかな?」
まあ、これもただの推測だから外れている可能性も十分にあるわけだけど、俺としては意外と外れていない気がしてならない。
そんなたわいもない会話をしていると、ディラブが会話に入ってこない状態に違和感を覚えて話しかけると、ディラブは例の富豪の屋敷の方を見ながら立ち尽くしている。
何事なのかと視線を顔事向けてみると、何やら玄関付近が慌ただしい気がする。
「何事じゃ? ディラブ」
「分からん。急にあいつらが慌てだしたんだ。何をしているかこの距離だと分からんさ」
「どうやら爆弾がどうのこうのって叫んでいるみたい。この距離だし、それに周囲の話声と重なるから分からないけど。そういう話じゃないかな?」
そういえばこの距離の会話は分かるんだったなアンヌは。
爆弾って物騒だなと思いながらも内心では「まあ金持ちだしな」と思い慌てるようなことはしない。
ああいう人種は結構恨まれたりするものだし、逆にああいう事で顔を突っ込んでヤバい事態になる事は避けたい。
そう思って俺は顔をそむけた所で「ドカン!」という爆発音と衝撃が遠くにいた俺達の居る場所まで届く。
驚きと戸惑いを隠せないままもう一度そちらを見つつ立ち上がると、玄関の大きな門が吹っ飛ばされていた。
「な、何事じゃ!?」
「分からん! 急に何もない空間が爆発したんだ! 前触れなく!」
「そんなわけないでしょ!? 爆発物とかは?」
「無かったぞ…本当に何もない空間が爆発したんだ。見えない爆弾でも仕掛けられたのか!?」
「そんな物作れる奴が居るとすればホビットぐらいだぞ!」
上から「大正解っス」と言う軽快な声と共に今度は大陸をまたにかける橋の大通りを塞ぐように無数の巨大な岩が落ちてくる。
巨大な岩はあっという間に人型へと合体していき、それはダンジョンなどで確認される『ゴーレム』へと変わり果てる。
完全に大陸への向こう道は塞がれた形になるわけだが、俺達の視線は先ほどの軽快な声の主の方だった。
少年のような背丈の耳の長い男がホビット族だと分かるのには時間は掛からなかったが、問題なのは数日前に見ているメロンが隣にいるという事だ。
「メロン…あのゴーレムは貴様か!? 直ぐに片付けろ!」
「なんで私があんた達なんかのいう事を聞かないといけないわけ? 自分で何とかしなさいよ」
「僕の名前はドドナっスよ。見た目通りのホビット族っス。あんた達がヴェルズリを傷つけた奴っスか? へえ…」
品定めするような目をしながら俺達を一頻り確認するドドナという名のホビット、髪は短いショートヘアーの黒髪であどけない少年のような顔立ちをしているが、その瞳は濁り切っているように見える。
メロンやヴェルズリなどと同じく邪悪な気配を感じさせていた。
俺は大きな通りを塞ぐように暴れているゴーレムを見て、同時にメロンとドドナという人物たちが建物の上、しかも港側を塞ぐような形で現れたことに意味を素早く見出した。
同じ結論に辿り着いたのがリアンであり、珍しく大きな声を上げた。
「ジャック! 屋敷に行け! この二人は儂等で抑える! ババルウ君は左右のゴーレムは近くの兵士たちに声を掛けて何とかするんじゃ! せめて他の十将軍が到着するまでの時間稼ぎをするんじゃ!」
「あれ? 気が付かれちゃった」
「あらあら。でもタイムリミットかしら?」
俺が駆け出して爆炎と煙を退けながら前へと進んで超えていき、同時に開いている大きな部屋を見つけ出して大きく跳躍するとそこには二人いた。
正確には血だらけで倒れているホビットの男とそれを切りつけたのであろうヒューマン族の男…ノルヴァス。
「意外と早いお付きで。まあ…終わったけどな。この男の命にはまるで興味は無かったが、この男が購入した品物に興味があってね。これは俺達が高値で買い取る予定だったんだが…この男が無理矢理買い取ってしまってね。ブラックオークションでは禁忌の『裏買い』という奴さ」
聞いたことがある。
確か、オークション商品を事前に買い取ることを指す言葉で、このブラックオークションでは時折一部の富豪などが裏で示し合わせて買い取るのだとか。だが、行為自体は禁忌とされ、バレれば殺されかねない行為だと。バレない様にやる人間も居ると聞くが…。
「俺達も買い取るために巨額のお金を手に入れていてね。なのにだ…よっぽど欲しかったらしい。邪神ベルターの体内から摘出された『邪核』をな」
「……!? どうしてそれが!?」
「邪核は破壊したはずなのにか? それもそうだろうな。邪核は本来邪神などの特殊な存在の体内に存在しているもので、お前が破壊しているはずなんだから。偽物でなければだが…」
「偽物!?」
「邪神ベルターは裏で教会関係者と繋がっておりお前が来ることは事前に知っていた。だから、あえて邪核を輩出して別に預けていたという事だ。それが、邪神ベルターの敗北後にその預けていた人物がブラックオークションで売りさばいたという事だ」
それでベルターの声が聞こえていたのか。邪核が生きていても肉体が滅べば復活は出来ない。
それでも二代目の邪神を作る事なら出来るはずだ。
なんとしてもここで破壊しないと、そんな思いで駆け出していき大剣を振り上げて斜め下へと向かって切り裂こうとすると、ノルヴァスは俺の大剣ごと斜めに切り裂いた。
胸から血が噴き出るが、幸い真っ二つになるほどのダメージではなかったが、それでも俺の大剣は修復不可能なダメージを受け、同時に俺は驚きと共に吹っ飛ばされる。
ノルヴァスが握りしめている剣は俺が邪神ベルターとの戦いで破損したはずの『先代の勇者の剣』なのだから。
どうでしたか?
次のお話をもって赤鬼のオーガ編は終わりとなります。
ノルヴァスの正体は次でハッキリさせるつもりですのでお楽しみに。
では次は赤鬼のオーガ最終話でお会いしましょう!




