大陸横断大橋の街メイランド
そろそろ赤鬼のオーガ編も最終話へと近づいていきます。
残り数話ですがよろしくお願いします!
では本編へGO!
馬車でババルウ君との最後の目的とであるオーク大陸とホビット大陸との国境の町である、大陸横断大橋都市である『メイランド』が待ち構えている。
あの後、図書館でババルウ君にも手伝ってもらう事であっさりと本を見つけ出したのだが、正直に言えば大したことは記載されていなかった。
無論隠しページは見つけたのだが、そこにも俺が生まれる前に天の声が聞こえてきてナーガの中から勇者を選んでいいと言われたと書かれているだけだった。
それでどうして俺なのかは分からなかったが、それはもしかしたら次の項目で描かれているのかもしれない。
ドライ最高司祭の書き方からしてどうやら天の声の主の場所は凡そ検討を付けているようにも思えた。
「じゃあ、結局何も分からなかったの? 何しに行ったわけ?」
「ペンダントを手に入れてご機嫌だな。良いだろう? あの人が追放する前に言っていた言葉を探っているだけだしな。俺の知らない真実を」
「メイランドはすぐそこですね。そこでナーガ政府と会い次第僕は直ぐに帰りますね。出来る限り早めに首都に案内したいので」
「ねえ、メイランドってオーガの町? それともホビットの町?」
「中間ですけど。基本はホビットです。オーガは少ないイメージですね。あまりいないと思います。商業都市で港町としての形もありますよ」
いよいよホビット大陸へと近づくわけだが、その前に俺は首相から教えてもらったことを改めてこの三人に言わないといけない。
「メルバリートというホビットの富豪だけは会うなよ? 厄介ごとしか巻き込みそうにないしな。嫌な噂だけ聞く人らしいから」
「はいはい。じゃあ一緒に行動しましょう。なんならナーガの首相に一言挨拶してからお別れかしら? でも。本当にババルウ君は立派になったと思うわよ。胸を張ってもいい」
「そうでしょうか? でも次期国王として頑張ります!」
笑顔を向けるババルウ君に成長の兆しがはっきりと見えたわけだが、そんな俺達の視界にその町は見えた。
あの鉱山都市でのオリハルコン入手から一晩が明け、今は朝方を迎えているわけだがそろそろ太陽が昇ろうとしている時で、街は徐々に起きていくだろう。
町の入り口で一旦止まりそのまま中へと入っていき、俺達は入ってすぐの広場で馬車から降りる。
色とりどりの建物が大きな橋の上に作られている。
「これがメイランド? 凄い。小さい島々の集まりの上に大きな橋が架かっているんだ。島や海に支柱を建てて橋を作っているのかな?」
「ですね。この町もホビット制作ですね。噂ではホビット大陸にある町は基本こんな感じらしいですよ。それぞれ個性が強いというか」
「楽しみだな。そこの三人はそうでもないみたいだけど」
目が痛いほどに色彩豊かな街並みで、広い道路には車が無い代わりに沢山の人が行きかっているのだが、下を見ても左右を見ても下手をすれば上を見ていても色とりどりの建築物がその辺にあるのだ。
「結構長い通路だよな? 一本橋なのか?」
「大橋とは言いますが、基本は複数の橋を一つの橋として結んでいるんですよ。でも、オーク大陸とホビット大陸をあくまでも直線に結んでいるだけで、迷うような街並みはしていませんけどね。普通に通るだけなら路地裏に行く必要もありませんし」
「この真っ直ぐの道を進めばいいだけなんだ。此処に宿泊施設やお店なんかが並んでいて、一個路地を行くと住宅地?」
「ですね。この裏がもうすでに住宅地で、ここに住んでいる人ばかりです。で、このメイランドの中間地点に大きな港があるんです。そこで合流なんですが、ここでは馬車も車も禁止なんです」
「ええ…歩くの?」
「いいえ。と言うよりは人通りが危ないのでトラムが走っているんですよ。細かい区画を移動する必要性が無いので車は誰も使いませんしね」
「まあ。一本道じゃもんな。迷う事もあるまい」
「俺がこの町に来た時も一本道を歩いていくだけだったからな。印象に薄いイメージだ」
大通りの裏側へと繋がる道も全ては住宅地へと繋がっており、観光客などはまず立ち入らない場所なのだろう。
確かに何をするのもこの一本道で両サイドへの広がりに限界のある橋の町、縦長に出来ているので迷う要素を持たないのだろうと推測で来た。
それは単純な街並みになるか。
車も必要はない。
「と言うよりは乗り物はタダです。乗り放題で、基本夜中も夜の一時まででしたら普通に動いていますよ」
「例の富豪はどの辺にいるんじゃ?」
「丁度ど真ん中だったはずです。港の反対側だったと聞いています。ですから、そっちは意識しない様にしていてください。近づけば嫌でも分かると思いますよ。大きく立派なお屋敷らしいので」
「外観から言っているさ。近づくなってな」
俺はニタリと笑いながら歩き出す。
歩き出してから十分ほどするとあちらこちらの店が開き始めているのだが分かる。
「丁度開店の時間じゃったか。此処から港まではどのくらいかかるんじゃ? ん? アンヌは何処に行った?」
「アンヌだったら向こうの店で苺のクレープを買いに行ったぞ」
ディラブが指を指す方向にはお店の受付をしているホビット族の男性に話しかけてクレープを受け取るアンヌの姿がある。
まあ良いだろうと無視をしているとババルウ君が質問に答えた。
「歩いて一時間です。そもそも歩いて渡り終えるのに大体三時間で終えると言われている町ですから。一時間半でたどり着けますよ」
「じゃそうじゃ。どうする? トラムで行くか?」
「でも。早めに行っても待つでしょう? まあ、私達が無視して向かえばいいだけな気がするけど、せっかく来る首相やナーガ十将軍を無視するのもどうかと思うし」
「だな。俺はあいさつしたい。どうせなら歩いて渡ろう。見ているだけでも楽しそうだぞ」
俺の提案に誰も否定しないまま歩いて渡ろうという事になった。
潮の香が仄かに漂ってくる中で、隣では苺の匂いが漂ってくるわけなのだが、イマイチお腹がすかないんだよな。
何せ朝ご飯をしっかり食べ終えているので、胃袋は満たされていると言っていい。
「疲れが取れんな…なんか…」
「まあ、戦い続きじゃからな。むしろこの前みたいに静かな方が珍しいよの」
「人生戦いと言うからな」
「ディラブの人生観を一般の人生観と一緒にすると他の一般人が不満を持つからそこそこにな。アンヌは疲れていないのか?」
「う~ん。そこまでじゃないかな? しっかり休むときは休む。ジャックは働きすぎ。夜遅くまで起きて何か作業とかしているでしょ?」
作業と言うわけじゃないが魔術を使ううえでもう少しは扱えるようになりたいと思い、普段から訓練しているわけだが。
まさかバレていたとは思いもしなかった。
歩くこと更に十分で大きな十字路に出た。
左右には海がはっきりと見えており、脇には住宅やお店などが並んでいる。
ぱっと見は大きい建物が並んでいる感じがしない街並みで、ごちゃついているイメージは湧かない。
だが、建物の感覚としては密集しているはずなのだ。
「簡単な街並みをしていますからね。あまり密集している感じがしないんですよ。本来はホビット大陸やオーク大陸へと向かい際の中間地点として使われるようになったと聞きます。ホビット達が四大大陸を横断する際に作った名残だとか」
「その上に勝手に住宅などを作って町が出来たわけだ」
「その内老朽化で滅茶苦茶になりそうだな」
「ならない様に定期的にメンテナンス作業などが行われているはずですよ」
「それにロストテクノロジーで作られている町だ。当時の技術は今では理解できない部分も多いからな。意外と壊れないかもな」
どうでしたか?
次回の章タイトルをここで発表しますね。
第二章は『双厄のホビット』となります。
では次は赤鬼のオーガ第四十九話でお会いしましょう!




