宝斧
そろそろこの赤鬼のオーガの終わりへと向かって進んでいきます。
では本編へGO!
城塞の宝物庫の中にそれはあるらしく、翌日の朝一番俺達は出入り口まで運ばれた大きな大斧を前にすることになった。
宝石が散りばめられているわけではないが、斧全体は綺麗なルビー色をしており刃先はまるで宝石のように輝いている。
そんな刃が両サイドについている両刃斧であり、大きさは前の斧より更に一回りも大きく大斧と呼んでもいいレベルの大きさ、頑丈さもさることながら武器そのものが魔力を持っているのが見て分かるのは俺だけだ。
ホビットの製造した物だろうが、明らかにロストテクノロジーの一種に違いない。
女神が存在していたと言われている時代の武器なら多分この一族すら知らないようなレベルの能力を秘めているのだろう。
そもそもこういうレベルの武器は基本何かしらの能力を秘めているもので、ロストテクノロジーならなおさらである。
それ故に大した能力を持っていない俺やアンヌの武器では武器そのものが耐えられないのだ。
「どんな能力を持っているのかは私達一族も知らない。君の手で扱って試してみて欲しい」
「はい…頂戴しまう? します?」
「敬語が喋れない奴ですみません」
アンヌが申し訳なさそうに頭を下げる中国王は「良い」と右手で制止する。
まあ、見れば分かる話ではある。
「明日にはナーガ十将軍の大将軍長と首相が到着なさるとのことです。到着次第会談を行いたいと言っていました」
「分かった。こちらから迎えを寄越そう。ババルウ。次期国王としての役目をしっかり果たすのだぞ? オリハルコンはこの国にとっても大事な鉱石、どんな姿をしているのかしっかりと見てくるんだ」
「はい! 国王陛下!」
言い方が変わっているので、何か教えてもらったのかなと邪推する。
まあ、次の国王になろうという男が父親をお父さんと呼ぶのは少々おかしなものだ。
「改めて君達には息子達が世話になった。君達が居なければ私は息子達を失うことになっていただろう」
「二人は今どうしているんでしょうか? 次男の方は朝方に誤りに来られましたけど」
「長男の方はある程度は反省しているようだが、ここからは根気よく付き合っていくことにする。次男の方は改めて世間知らずという言葉を痛感したようだな」
「まあ、両方とも今では戦闘能力でもババルウ君より劣りますからね。私達もしっかり指導した甲斐があるというか」
「アンヌって何かしたっけ? 嘘です。だから拳を収めてください」
下手なことを言って普通に殺されそうになったので急遽言語訂正を図ると拳はすっと収まったので一安心。
最後に国王に一言をお礼を言い俺達は城塞を後にし、北側にある船着き場から大きなクルーズに乗って一気に北上することになった。
「楽で良いわぁ~このパーティーメンバーどうにも脳筋が多くて」
「多いと言うな。儂は楽をしたい派じゃぞ。しかし、オリハルコンか。まさか生きて現物を見れる日が来るとはのう」
「? そんなに珍しい金属なのか?」
まあ、普通生きている限りだとディラブの意見が正論にはなるよな、聞いたこと無いっていう人の方が多いとは思うし。
伝説上にしか存在しないとすら言われてきた金属、同時に魔石の類の性質をはらみ、その本質は何処まで行っても『勇者の為の金属』である。
「勇者の為の金属?」
「そういわれているだけ。それが何を意味するのかは最高司祭でも限られた人しか知らないらしいの」
「だからドライ最高司祭だけが知っている話という事さ。あの人が隠しているのなら誰も知らない」
「全く隠し事が多い奴じゃよ。昔っからそういう部分がある」
「ババルウ君は加工が出来る集落って知っていたの?」
「本では見たことがあります。ホビット大陸にあるひときわ大きな火山、火山の近くにあるそうです。ですが、そこへの道筋を知っている人はあまりいないとか。そもそもジャックさんに渡された手紙なしでは入れないと思いますよ」
俺はポーチの中から取り出した一枚の紙、これこそがその集落に行くことが出来るらしいのだ。
そこまでは幾つかの路線を何度か乗り換える必要がある様で、まあそこまでは然程大きなトラブルを抱えることは無いだろう。
「ジャックが言うとトラブルの前振りに見えるから不思議だよね?」
「じゃな。何かとトラブルに巻き込まれる気配しかせん」
「俺は構わない。この武器の性能を見極めたい。早く…なんなら今すぐに」
「しまえ。武器を。今すぐにな」
大斧を握りしめて物凄く上機嫌なディラブである。
正直昨日の精神的なダメージは「新しい武器を貰える」と言う点と「寝る」とい過程を経ることで治ったようだ。
現金な奴だな。
「オリハルコンって手に入れるのに時間が掛かるの? 私外で待っていていい?」
「あのね! そんなに時間経過を嫌がる? 別にどうでも良いけどさ。結構普通に傷つくからな?」
「大丈夫ですよ。父上から聞いた話ですと、入って直ぐにあるエレベーターを降りるだけらしいです。最も奥に入るには王家の人間でなければならないそうですが」
「なら良いんだけどね。またダンジョンの奥へと無理矢理連れて行かされて、戦いたくもないモンスター相手に戦って手に入れるのかと」
「だから! 俺が好き好んでしているみたいな言い方するの止めろって! 好きでダンジョンの中に入っているわけじゃないからな!?」
「オリハルコンを持って歩くのか? 重そうじゃが?」
「大丈夫ですよ。ジャックに手渡されている包が在れば重さを感じることなく、大きさを気にすることなく運ぶことが出来ます。本来ならオリハルコンを手に入れるのは最高司祭さんの役目なんですが、今回は例外という事でジャックさんに手に入れてもらいます」
「どうやって手に入れるんだ?」
「専用の金のピッケルがあります。それで強く叩けば普通にとれるはずです。どの程度取れるのか、その勇者にとって必要な量を決めるのはオリハルコン自身だそうで。オリハルコンはそうやってある程度の大きさになるように出来ているとか。未だにオリハルコンは良く分かっていないことが多く。古くから『女神の意思を宿す金属』なんて言い方をする人もいますよ」
勝手に大きさを増すことが出来る金属、確かに人の知識を超えた何かを感じるもんだ。
「勇者にしか扱えない金属なんじゃから勇者が代々取りに行けばいいのにの」
「教会が決めている事ですし、オーガ政府はあまり興味の無い案件でして、知ろうとはしなかったようです」
「勇者によって作る武器の形も違うからな。性能も地味に違うと聞くが…」
「何代か前にはチャクラムなんて特殊な形状の武器もあると聞くの」
「チャクラムって剣か? 剣じゃないだろうに」
ディラブから普通に突っ込まれてしまった。
「それだけ勇者の剣は特殊と言う話だろ? 俺は…剣が良いなぁ」
「ピストルなら大笑いね」
「本当に笑いそうだな。ていうか俺…遠距離武器なんて使ったこと無いぞ」
「? 学校の授業で教えてもらわなかった?」
「使ったこと無いな。興味も無かったし、選択制の授業だったから教えを受けなかったと覚えている」
「学校なんて通ったことも無い。必要性を感じない」
「後で敬語の勉強だからね? 言っておくけど。次からお偉いさんに会うたびに見様見真似すら出来ない敬語を喋られたら寿命が縮むから」
アンヌからジト目を向けられて大きくため息を吐き出しながら嫌そうな顔をしているディラブ。
リアンも参加コースだよな。
俺は手伝う事が無いから黙っていることにしよう。
船は目的の地へと辿り着こうとしていた。
どうでしたか?
オリハルコンを手に入れるため次は鉱山都市を目指し、その先にあるオーク大陸最後の町をもって赤鬼のオーガ編終わりとなります。
では次は赤鬼のオーガ第四十五話でお会いしましょう!




