継承の儀式場攻略戦
いよいよ本格的に継承の儀式場攻略戦開始です。
早速ボス戦から始まる物語を楽しみにしていてください。
では本編へGO!
到着した継承の儀式場の出入り口は大きな門へと続く石畳の一本橋、門の奥に何があるのかは遠目では判別できず、降ろされた馬車からでもその後方に見える首都の出入り口。
どうやら直線距離を全て石畳の橋で作られており、この沼地に赤色というミスマッチを魅せられているような気がするが、逆に良く目立つ気がするので目印としては良い気がする。
まあ、無駄に中を冒険使用する輩が現れないかどうかが気になる限りだ。
その辺りセキュリティはどうなっているのだろうか?
確かダンジョンに鍵を掛けて硬く厳重に閉ざしてもあまり意味は無いはずだし、何か対策でもしているのだろうか?
「此処が継承の儀式場となります。普段は我々兵団の修行場として使われており代わりで警備をしておりますが、ここ一週間は儀式の為にとあえて狩りを行っておりません」
なるほど…普段は大陸の兵団が修行も兼ねて使用しているようで、今回は儀式の為に中でモンスターを狩っていないとの事。
普通にキング種などが徘徊しているという話だが、聞けば教えてはくれないのだろうか?
楽をしたいという気持ちが無いわけじゃないが、まあルール違反かな?
ギリギリセーフにならないかな? 何か方法が有るのではないか?
そんな馬鹿らしい考えを頭の隅っこの方に追いやりながらも考え続ける。
「では改めてルールを説明させていただきます。この儀式場の最奥にある王位の宝玉をもって城塞にいらっしゃる国王の元まで持って見せた者が勝者となります」
俺はちらりと次男の後ろに立っているフードで顔を隠している大きな背丈の人物とそれより小さく百七十センチ程度の同じ格好をした人物。
背の高い方は体格で何となく男かなという感じで、背の低い方は胸が大分出ているので女性だとはっきりと分かる。
あの背の高い方が黒いオーガなのだろうか?
可能性だけなら十分あり得るわけだが、やはり次男を利用しているあの男の関係者だという懸念がどうしても拭いきれない。
俺達のチームは全員がそれを抱いたようで、皆何度か大きな男の方を見てしまう。
小声で「もう見ない方が良い」と告げておくことにした。
バレていそうな気がするが、念には念を入れて。
「ではこれより継承の儀式を開始いたします。私が持っているこの花火が空高く打ち上げられ次第開始となります」
俺達に説明をしてくれていた兵士が握りしめていた筒に火をつけ真上へと向かって持ち上げる。
すると筒から『パン』という音と共に一つの火玉が空高く打ち上げられ、開始の合図が鳴ると同時に長男のチームが勢いよく駆け出して行った。
去り際に「一番乗りだ!」と言いながらである。
次男のチームは一瞬俺達を見た後そのまま後ろに付いていくように駆け出していき、場に残ったのは俺達のみ。
俺は敢えてそのまま続くことなくまずババルウの方へと向き合う。
「ババルウ。国王になりたいと今でもはっきりと思うか?」
「はい!」
「なら俺達が言えることは無い。ただ、一つ王になりたいなら言われるがままの人間になるな。俺達はあくまでもお前の協力者だ。此処でのリーダーはお前だ! お前が指揮して見せろ。出来ませんなんて言うなよ。悩みもするな。お前が言うべき言葉は「はい」だけだ」
「はい!」
「良し。行くぞ!」
「皆さん。行きましょう!」
ババルウ君が駆け出していくのと同時に俺達も駆け出していき、隊列を乱さない様にババルウ君自身もまた気を付けながら彼らが駆けていくよりも速い速度でかけていく。
すると、大きな門を潜った先に金属の柵とその手前に大きな広場があり、その広場のど真ん中に騎士のような鎧を着ているアンデット系のモンスターが鎮座している。
あれを突破しないで向こうに行く手段が無いわけじゃないだろうが、恐らく隠れて俺達に任せて再起に突破するつもりなんだろう。
俺は敢えて判断はしない。
「あえてあのモンスターを排除しませんか? 他のメンバーが何処かに隠れているのは分かっています。恐らくあのモンスターに近づくと更に柵が閉まり奥の柵が開く仕組みなんでしょう。ですが、あの程度のモンスターを排除できないようで先には進めない気がするんです」
「良いこと言った。良し。排除しよう」
「ならババルウ君の腕試しを兼ねて一度やってみない? ババルウ君がこの戦いでは前衛。私が危なくなったら支えてあげるから」
「お願いします!」
「なら俺とリアンは下がっていよう。ジャックも援護を頼む」
「分かった。戦いは俺とアンヌとババルウ君で行こう」
一気に突入していくと予想通りに柵が閉まって奥への柵が開く音と共に重たい柵が上へと向かっていく。
それと同時に物陰に隠れていた長男チームと次男チームが一斉に駆け出していくのが柵の中かから見えてきたわけだが。
俺達を哀れなものを見る目で見てきた両チーム。
分かっていて引っ掛かったんですが?
騎士はテリトリーに入った俺達を排除する為に剣を抜き出し、大きく俺達に向かって駆け出してくる。
今までのババルウ君なら慌てふためいてアタフタしながら役に立たなかっただろう。
今はしっかりと敵を見据えながら冷静に剣を握りしめながら動きを見極めようとしている。
さて、ならこちらはババルウ君が確実な一撃を繰り出せるようにと軽めの魔術を使うことにした。
右手の平に下級程度の火の術式を展開し牽制の為にアンデット騎士の左側へと向かって放つ。
騎士は俺の攻撃で左腕で装備していた盾で真上へと弾くが、アンヌはその盾を強制的に弾き飛ばす。
ババルウ君が間合いを完全に詰めて剣を握りしめつつ更に接近していくと、騎士が先に剣を振り上げた。
しかし、そのタイミングで剣を振りぬき振り下ろした剣にババルウ君は自分の攻撃を意図的に合わせて強めに弾き、そのまま勢いを殺さない様に腰を強めに捻りつつ横なぎに振りぬいた。
振りぬいた剣は騎士の腰を真っ二つにし、そのまま排除することに成功する。
「やったな。修行の所為かが出ていたじゃないか」
「はい。ジャックさんに嫌と言うほどしごかれましたし」
「どういう教え方したの?」
「変なことを言うなよ。俺は普通に修行をしていただけだ」
「ひたすらボコボコにしていたけどな」
ディラブが突っ込んでくるが普通の事だと思うので何も言わないでいると、更に大きな音が左側からした。
どうやら赤石の壁が動いて隠し通路が現れたようだ。
「どうやら先ほどの奴を倒すと隠し通路が現れるように仕組まれていたようじゃな。凝った作りじゃよ」
「とにかく進んでみましょう。案外近道出来るかもしれませんし。それに進むための柵は動いていませんし。進むしか無いです」
ババルウ君が先陣を切りつつ上がったばかりの道を駆け出していく俺達。
回転階段のようになっているスロープを降りていく俺達、意外と下の方へと続いていくわけだが、ある程度降りると先ほどの道の先が見えてしまった。
大きな空間があり空間にはゴーストタイプのモンスター、それもキング種が配置されていたようで、長男のチームと次男のチームがその排除にあたっている。
最も真面目に戦っているのは長男のチームだけで、次男のチームは半歩後ろに下がって戦っているイメージだ。
「ワザとかしら?」
「だろうな。誰かに実力を魅せる気が無いのか。いや…明らかに長男のチームの戦力を貶めようとしているんだろうな。自分達も戦っている振りを魅せれば多分騙されてくれると思って」
「実際騙されていますね。兄は。近くに居ればわかりそうですけど」
「仕方なかろう。単純な部分を利用されておるよ。あの二人を一緒の場所にするとああなる」
「だな。我々には関係の無い話だ。先を急ごう。我々はその代わりに彼らに代わってあの騎士を引き受けたのだ」
「はい。このまま下まで降りましょう」
スロープの出口が見えてくる中俺達の視界に飛び込んできた風景、それは底を見せない圧倒的な大穴とその大穴の壁に沿う形で作られているスロープだった。
どうでしたか?
次の話ではいよいよ黒いオーガも本格に登場しますのでお楽しみに!
では次は赤鬼のオーガ第三十七話でお会いしましょう!




