王位を継ぐ者達へ
赤鬼のオーガの王位継承の儀式編開始です!
今回は儀式場へと向かうまでの道中が描かれます。
では本編へGO!
修行の為に一週間を費やしいざ儀式当日を迎えることになり、正直に言えばやれるだけの事はしっかりやったというレベルで、後は結果を残すだけとなっており、俺達は謁見の間へと集められていた。
とは言うものの集まっているのは三人の後継者達が国王の前に横並びに立ち、その後ろに俺達がいる。
因みに集まっているのは俺達ババルウ君の協力者と長男の協力者達のみであり、次男の協力者はこの場には居ない。
何を考えているのか、出来れば顔ぐらいは見ておきたいと思っていたが居ないのでは仕方がないだろう。
「ではこれより王位継承にまつわる儀式を行う。継承を行う事が出来る条件はこの宝玉を手にして帰ってきたものだけだ」
そういって取り出したのは真っ赤な宝玉であり、オーガの右手にもギリギリ収まるレベルの大きさであり、それを真っ直ぐに三人の後継者の前に突き出す。
「では。後継者に名乗りを上げる者よ。この宝玉の前に固く誓うのだ!」
「ナルガ・オーガ。王位継承の儀式に誓う者として儀式に挑む」
「メルン・オーガ。王位継承の儀式に誓う者として儀式に挑む」
「ババルウ・オーガ。王位継承の儀式に誓う者として儀式に挑む」
すると国王の右手に持っていた赤い宝玉が突然消えていく。
へぇ…どういう仕組みなのだろうかと少し探ってみたくなった。
「この宝玉は今まさに儀式会場の一番奥に辿り着いた。お前達の儀式の最中を常に見守ってくれるはずだ。では試練の内容を説明する。これより試練会場の入り口間まで馬車で案内させる。条件は一番奥にある宝玉のある間まで辿り着き、宝玉を手にして帰ってくることだ。ただし、宝玉のある場所に入る為には三人の宝玉の間まで近づかなくてはいけない。儀式の会場は大型のモンスターなども普通に徘徊している。協力者達と共に最奥を目指し持って帰ってくるのだ!」
ある程度まで近づかないといけないか、という事はそれまでは下手に妨害して殺してしまったら意味は無いという事だ。
それに一緒の場所からスタートを切るだろうし、先先進んでも先にトラップやモンスターを先に駆除してしまえば必然的に不利になる。
ペース配分と位置取りが重要そうだな。
次男は理解しているだろうから、恐らく最後にしてきそうな気がするけど。
俺達はそのまま城塞の入り口まで待機していた馬車の中へと乗り込み、ガタガタと揺れる馬車の中で俺達は改めて話し合うことになった。
「途中過程で邪魔をしてくることは無さそうだね。最奥まで到着次第邪魔をしてきそうな気がするけど…」
「その可能性は高いのう。どのみち何も考えて無さそうな長男がダッシュで向かってくれるじゃろうし、儂等は後に続くとするか」
「次男はその後に行動かな?」
「どうだろうな。先に進むんならあえて譲るけどな」
「どうして? 先に辿り着かないといけないんじゃない?」
「先に辿り着いたら合格なんて言っていなかったろ?」
あくまでも勝利条件は宝玉を手にして帰ってくることであり、辿り着いたらなどとは言っていなかった。
「そういえばそうだったね。でも、結局で同じことじゃない? だって最奥にあるんでしょ? だったら先に辿り着いた人間が結局で手に入れるわけだし」
「奪われる可能性もあるからのう。何とも言えん。先に辿り着いて結果奪われては意味が無かろうという話じゃよ」
「では、結局で最奥に辿り着いてバレない様に出るか。全員を一度倒してから脱出するかの二択か?」
「まあ、やってみない事には分からないけどな。どのみちやるべきことをやるだけだよ。そうだろう?」
「ですね。皆さんお願いします」
どうにもあの消え方が気になってしまう。
粒子状になって消えていくのではなく、下から上に向かって消えていった。
あの消え方だと…いや、やめておこう。
推測だし、まあ当たっているとは思うんだけどそれを喋るメリットが無いんだよな。
「やっぱり一番警戒するべきなのは次男なのかな? 長男はなんていうか自滅してくれそうな気配がするし」
「してくれればいいけど、ああいう奴が意外と美味しいところを持っていくこともあるし。何とも言えない。ただ…噂で聞いた黒いオーガが次男か長男の元にいるとしたら警戒対象としてはそいつが一番という事だな」
「フム。お主とディラブが聞いたというディフェンダーで噂になっていた男の事じゃな? 他にも街中で動き回っていると聞いている」
ババルウ君は少し考えているようなそぶりを見せた後ではっきりと口を開いた。
「だが俺が街中を歩いている時はまるで見なかったぞ。隠れているわけじゃ無かろう? それとも偶々見なかっただけか? だが、何度か目撃情報が在ったのなら会いそうなものだが?」
「おそらくですが。そもそも街全域に張っている隠ぺいの呪術に上乗せするように一部ですが身を隠す呪術を使っているんだと思います。普通呪術を使えば直ぐにオーガには分かりますけど、街の中だと溶け込んで薄れますから」
「じゃあ。外で使ったりしたらすぐ気が付くって事? それって街中で呪術で人に対して攻撃的な術を使っても分からない?」
「いいえ。流石にそれは無理ですけど」
「今回の場合は同じ隠ぺいじゃからな。術式の傾向が同じじゃから分かり難いという話じゃな。アンヌやジャックでも周囲と同じ術式を使ったら分かり難い部分があるじゃろう? それと同じじゃ。木を隠すには森という諺があるが、それと同じじゃな」
「はい。呪術での術式を隠すなら似た術式の中で使えばバレませんから」
「潜伏するには丁度いい環境という事か。慣れているな。呪術に」
「僕もそう思います。相当の手練れです。町に張っている呪術は高位の呪術師が複数名で常に維持していますから、それを隠ぺいに使ってバレないとなると相当うまいんだと思います」
人の認識を阻害するとかそんな感じなのだろうけれど、隠れるのが上手い街中での目撃情報も買い出しとかの時だな。
買い物をしている時は流石に呪術の術式を解除しないといけないから。
それで噂になっているというところか。
「あの集まりに居なかったけど。じゃあそれも?」
「それは無いです。あの集まりは協力者に関しては参加義務があるわけじゃありませんから。馬車に乗る順番や乗る馬車もあらかじめ決められていますし、多分乗って待っていたんだと思います」
「俺達の前に出てくる気は更々無いってわけだ。どのみち開始の時点で見ることになるわけだしな」
「じゃと良いがの。フードで隠れておったら顔は見れんじゃろう?」
ババルウ君は試練の場所に近づいていく過程で少しずつ手先が震えてきている。
緊張もあるだろうし、恐怖だってあるだろう。
精一杯強がってこうして俺達の前で気丈にふるまっているのだと直ぐに分かった。
「緊張するのは良い。だが、恐怖は良くない。此処にいるメンツを見ろ。そして、信じろ」
「皆さん…はい!」
「着くよ…窓から見えてきた。あれでしょう?」
大きな赤石の建築物が確かに見えてきたのだが、遠目なのでハッキリと見えているわけじゃないが、城壁のような壁と見張り台見ないな建築物が見えた。
登っていくタイプの建物じゃないという事は横に広いのか、それとも下に続いているのか。
「下かもしれないな。あの辺りから強力な魔力を感じるけど、特に下の方から感じる」
「確か大きなクレーターに建築物が建てらているはずです。外周をグルリと回りながら下に降りていきます。上からでもはっきりと見える底。その更に下にあると言われています」
「道中にスイッチとかあるの?」
「いいえ。ただ、途中でキングクラスやクイーンクラスのモンスターが普通に根城にしているはずです。モンスターの種類はアンデット系をはじめ、デーモン系が多いはずです」
「アンデット系…という事はゾンビ?」
「あのなぁ。アンデット系とは要するに不死属性があるモンスターだ。上位になってくるとヴァンパイアなどが現れる。戦い方に気を付ける必要性があるな。この両タイプはキングやクイーンでも特殊な戦い方をするはずだ。ディラブとアンヌが前衛、俺が後衛、リアンはサポートとヒール。ババルウ君はディラブとアンヌと共に前で戦うんだ。修行の所為か見せてくれ」
「はい…少し緊張します」
俺は彼の背中を叩きながら言う。
「それは良いことだ」
どうでしたか?
次回からはいよいよ継承儀式開始です。ダンジョンとしては幾つか考えていきたいなと思っています。
では次は赤鬼のオーガ第三十六話でお会いしましょう!




