城塞都市ランドロス 4
城塞都市ランドロス四話目となります。
残り二人の後継者が登場しその性格を見せてくれます。
では本編へGO!
翌朝から俺達が行った一連の修行の流れはまずは筆記での授業である。
呪術も剣術も結局で理屈で理解できるかどうか、それが出来る出来ないで結構変わってくるのだ。
その後、午後は城塞内にある剣術道場や外の湿地帯での剣術や呪術での修行という形を取ることを事前に夕食で決めた。
俺は国王との会話を終えてから実質に戻ろうとすると、俺の部屋の近くで一人のオーガの男性と出会った。
身なりはババルウ同様に綺麗に整えられているのだが、表情はババルウ君と違い厳つめの顔つきをしている。
伸びている一本角と共に見てみると悪人面に見えて仕方が無いが、まああれが長男なんだろうなとは思う。
「アンタだろう? ババルウの馬鹿の協力者ってよ」
「だったらどうするんだ? ここで喧嘩でも売るのか?」
「フン。良い態度だよな。俺の協力者にならないか? 金払いは良いぜ」
「断る。金だけを判断材料になるほど軽いつもりはない。金で買うのなら別にしろ」
「アンタもあれか? プライドとかいう下らないモノの為に戦うってタイプか? そんなの旧時代的な考え方だぜ」
野心と慢心が金と権力を身に纏って生きることを現代的だと言われたら多くの人が反発しそうだった。
その金と権力もこいつの者じゃないしな。
「もう一度いうぜ。この『ナルガ・オーガ』の協力者の一人にならないか?」
「何度も言わせるな。くどい。金では動かない。俺は金の為にここにいるわけじゃない」
「それも聞いてるぜ。ナーガ政府の為だろう? だったら俺が国王になっても別に構わないと思わないか?」
「思わないな。この国が堕落したら困るのはナーガ政府だ」
結構失礼なことを言っている気がするが、俺は別段この発言自体後悔はしていないのだ。
ここで襲い掛かってくるのならダッシュで来た道を戻り、国王にこの野蛮なことを見せつけるだけだし。
「フン。後で後悔するぜ。あの才能の無い馬鹿な弟の協力者になったことをな」
捨て台詞としては百点満点と言わざる負えないだろう。
俺は先ほどの男の言葉を無視してから自分の部屋へと戻ろうとする中、一瞬だけだが気配を後ろに感じてしまった。
感じたのは一瞬。
錯覚の可能性がまだあるわけだが、しかしここで部屋に戻ることは難しかった。
この殺気の正体をしっかりと確かめないとおちおち寝ても居られない。
殺気を感じた階段下の方へと向かって歩き出し、一歩一歩降りていくと一個下のフロアへと足を踏み入れる前に声が掛かった。
「それ以上は先に進まないでください。取引をしませんか?」
「………内容次第だな。先ずは名前を名乗ってほしいな」
「私は次男『メルン・オーガ』と言います。貴方がババルウの協力者の中で一番強いことは分かっています。それで取引です。協力者をやめてくれませんか?」
「断る。君も長男も大概だな。何度も言わせないでくれよ。俺達は降りる気も無い。言っておくが、俺達の部屋の近くで少しでも殺気を感じたら攻撃するからな。君の場合は手段を択ばない所が見え隠れする。今も武器を片手に話をしているな」
俺は壁に背を当てた状態で会話をしているわけだが、その最中でもこのメルンという若者は武器を片手に襲う準備を整えている。
正直に言えば武器一つ程度でどうにかなるような人間じゃないので、この場合何をされても構わないのだが。
反撃したら後で困ったことになる気がするが、この場合防衛行動ととってくれるかどうかが難点な気がする。
出来れば反撃するような事をしてほしくは無い。
まあ、このメルンという若者の性格を考えれば軽はずみな行動はしないと思うけど。
「どうしてもですか?」
「どうしてもだ。俺には俺の都合がある」
「……残念です。では、一つ。貴方もババルウには才能があると思いますか?」
言い方に気になる点を見つけてしまったがここは無視し、俺はメルンに対してはっきりと「ああ」と答える。
するとスッと気配が消えていく。
今先ほど彼は『貴方も』と言っていた。
という事は、前にも『ババルウには才能がある』と言った人間が居るということだ。
国王か…それとも全く別の勢力か。
長男は無いだろう。
あれは随分ババルウ君を見下している気配があるし、口ぶりからも全く才能があるとは思っていないと確信できた。
次男は「そう言われているらしい」とは聞いてはいても、未だに確信が持てないと思っていることになる。
「さてはて…誰がバラしたのやら。国王がババルウには本当は引き継がせる気が無く、本当は次男辺りと手を組んでいるという可能性もあるんだよな」
「それは嫌な可能性ね」
「アンヌ? どうしてここに? 何時から?」
「「それ以上は先に進まないでください」からなか。全部聞いていました。安心してバレてはいないから」
そこは気にしていないので一回一回言わなくてもいいのだが、本当に気配を消すのが得意になりましたね。
その分俺は出来なくなったけどな。
「でも、こうしてみると色々と思惑があるのが分かるよね。長男だけはどうにも仲間外れ感があるけど。ババルウ君もかな? でも、お父さんである国王も何やら思惑があるみたいだし、次男も次男で何やら色々考えてはいるみたいだけど」
「あの男がどの程度この王家に関わりを持っているのかが気になるな。最悪、俺達でババルウ君を唆してクーデターかもな」
「十将軍も呼んで? それこそ最悪の選択肢じゃない?」
「そう思うけどな。未だに王国の思惑が見えないから何とも言えないんだよな。まあ、気長に構えているさ」
「それしか無いか。仕方ないよね。私達も、他の種族もまともに交流したことの無いのがオーガなんだもん」
それなんだよな。
誰も知らないから俺達は前情報無しで調べないといけないのが困りどころではある。
流石に田舎育ちのディラブでも王家の詳細の情報も無いだろうし、やっぱりディフェンダーから聞いておくべきか?
でも、ディフェンダーでも詳細を知っている気がしないしな。
「駄目元で聞いてみれば? どうせ明日はディラブ同様に担当じゃないでしょ? 携帯電話を買いに行くついでに聞いてくれば良いんじゃない?」
「そうするか。明日は筆記だったな?」
「うん。一日に湿地帯に行ったり城塞に戻ったりする時間が勿体ないからね。先ずは筆記でどの程度知識があるのかどうかを調べておきたいから」
アンヌはこれでもかと言うほど良い笑顔を魅せた。
どうでしたか?
二人の性格を良く描けていたら幸いです。
では次は赤鬼のオーガ第三十三話でお会いしましょう!




