ランドロス湿地帯攻略戦 4
ゴブリンのキング種との戦闘回となります!
新魔術公開ですね。
では本編へGO!
最悪の予想が当たった形になり、大きな岩の上に作られたであろう広場、そのど真ん中にゴブリンのキング種が大きなこん棒を二つ握りしめ、周囲に黒い肌の近衛種を無数に従わせて大きな雄たけびを上げている。
体長は凡そ三百メートルをはるかに超えているが、まあその分横幅もそこそこ大きくガタイが良いのであのこん棒による攻撃を直接受けても結構厳しいだろう。
周囲には今にも食われそうになっているディフェンダーの面々が血を流しながら倒れており、見た感じそこまで強そうな人達じゃない所を見る限り、正直に言えば実力不足にもほどがあるだろう。
若手で成り上がることを夢に見てディフェンダーに入ったという感じだろう。
そのうえで湿地帯で一斉討伐と言う甘そうに思える話に食いついて知識不足のまま戦場でキング種だと気が付かづ挑んだが、分かっていても「所詮ゴブリン」だと考えたのか。
ゴブリンでもキング種クラスまで行くと普通に強い、と言うよりは一番下の個体値が低い種族は総じてキング種クラスまで高まると滅茶苦茶な強さを発揮するものだ。
このままにしておくことは俺にはできない。
そう感じて俺はまずは襲おうとしている近衛種から対処すべきだと考え、右手に魔力を纏わせてから属性を光属性に変換して銃弾のように近衛種に浴びせる。
同時にアンヌが地面蹴ってキング種に向かって突っ込んでいき腹に攻撃を叩き込むが、キング種は悲鳴こそ上げるのだがそのままアンヌを睨みつけてこん棒を振り下ろす。
アンヌは冷静にこん棒による攻撃を右側に移動する形で回避、そのままキング種の右足に向かって三連続で刺し攻撃を繰り出した。
ディラブも同じように走り出していき、ディフェンダーの一人を襲おうとしているゴブリンの近衛種へと切りかかり胴体を真っ二つにしようとするが、別の近衛種がその攻撃を剣で受け止めようとする。
無論斧による横に向かって振りぬく一撃を防ぎきれるわけではないが、それでも回避するだけの時間的な余裕を持つことが出来るだろう。
まあ、それがオーガ以外ならである。
相手はオーガの中でも赤鬼の子孫、呪術を使って攻撃対象のゴブリンの動きを封じつつ容赦ない一撃をゴブリンに叩き込んだ。
そのまま剣で攻撃を受け止めようとしていたゴブリンの頭部を掴んでそのまま足元の岩に力一杯ぶつける。
「戦い方が野蛮じゃのう。まあ良いわい」
「リアン。結界張れるか?」
「出来んわけじゃないがどうする? まさかベルーナ対策か? 群衆でやってきたら困るぞ」
「いや、俺の一撃を一回だけ守れればいい」
「??? 何をするつもりじゃ?」
「今からダッシュであのディフェンダーのメンバーを回収し、その後ゴブリンをこっちに引き付けてから一斉に駆逐する」
「無理じゃな。お前さんの一撃を防ぎきれる気がせん」
「いや。結界を張れればいい。強化はディラブとアンヌに行ってもらう。要するに俺の一撃を防げればいい。出来るか?」
「はぁ…聞かんのじゃろうの。まあ良いわい」
どうやら納得はしてくれたので俺は二人にアイコンタクトとジェスチャーで指示を出し、俺とリアンはベルーナに対処しつつもディフェンダーのメンバーを魔術と聖術でこちら側へとひきつける。
その間も出来る限り近衛種とキング種を引き付けた所で俺が合図を送った。
アンヌとディラブは急いでリアンの元へと戻っていき、リアンは両手を握りしめて祈るようなポーズを取るとリアンを中心に半球状態の結界が出現する。
「ディラブとアンヌで結界を最大値まで強化してくれ。呪術と聖術ならそれが出来るはずだ」
二人が黙って頷くのを見ていると俺は右腕を縦に左腕を横に十字にして組み、魔力を集中させる。
術式融合を使用するにあたりまずは二つの術式を作り出す。
属性は雷属性と光属性を右手と左手に集中させ、それを術式融合の印を組んで組み合わせていく。
ゴブリンのキング種は結界を破壊しようとこん棒を振り上げるなか、ババルウ君は目を瞑ってしまう。
「術式融合! ホーリースパーク!!」
ドゴンという重たい音が何発も何発も真上から周囲へと襲い掛かっていき、ゴブリン達は驚きと戸惑いを隠せないが、これはあくまでも下準備であり実際着弾した光はまるで当たらなかった。
沼にも着弾し俺を中心に半径一キロ範囲内に光の陣が出来ていき、バチンという電気が走る音が鳴ると同時に俺は叫ぶ。
「弾けろ」
半径一キロ内の結界を含めた全ての生命体に強力な雷が襲い掛かる。
ゴブリンやベルーナの体に一億に近い電流が一気に瞬間的に襲い掛かっていき、ゴブリンのキング種が口から煙を吐き出しそのまま倒れていく。
結界は何とかもったようで煙を少し放ちながらも中にいる俺達は無事だった。
「ふう…上手くいったな。正直に言えば周囲が沼な状態でしかも周りからベルーナが襲ってくる状態ではどのみち限界が来るだろうなって思ったんだ」
「長期化すると一回撤退するしかなくなるもんね」
「撤退する時間は無い。問題はこのディフェンダーのメンバーをどうする? この場に放置か?」
「まあそうなるの。流石に連れて行くわけにもいかんし。一人や二人なら良いが四人となるとの」
「あ、あの…僕がもっている信号弾を打ち上げてこの場所に来てもらうのは?」
「それだな。じゃあ上げてもらっていいかな? その間に中心に持っていこう。この辺なら流石にベルーナは襲ってこないだろし、他のモンスターが襲ってこないことを祈ろう」
ババルウ君が上空に向かって信号弾を打ち上げると、ある程度の高さで赤い光で周囲を明るく照らす。
これでこの場にディフェンダーの残りのメンバーが来るだろうし、俺達はその間に首都を目指して動くことにしよう。
俺はしゃがみ込んで怪我をしているディフェンダーの面々をジッと見ているとふと思ったことを口にする。
「本当に焦って駆逐して回っているんだな。これってやはり国王からの指示か?」
「だと思います。多分お父さんが駆逐をディフェンダーに急がせているんです。だから、ランクの低いディフェンダーも駆り出されているんです」
「まあ、これは自分の実力を見極めなかったこの人達が悪いよ。どんな弱そうな個体でもキング種に迂闊に手を出すべきじゃないもん」
「まあ。仕方ないじゃろう。野心もある意味上へと駆け上っていくには必要な事じゃよ。まあ、我が身を大事にするべきじゃとは思うが」
「見た感じオーガのディフェンダーばかりだな。まあ、オーク大陸でオーガ以外のディフェンダーを見たこと無いけど。軍を使えばいいのにな」
「使えないんです。軍は試練の準備に忙しいはずですし」
この湿地帯は繁殖期に入っているからモンスターの気が結構荒いはずで、素人感覚でずかずかと進むなと言う話だ。
後でディフェンダーに行って助言でもしておくかな。
予想より早く駆逐できたのでこの勢いでまっすぐ進んでしまおう。
そう思って足を一歩踏み出した瞬間駆け出すような音が聞こえてきて俺は深いため息を吐き出した。
どうでしたか?
まだランドロス湿地帯のお話は続きますが、どのみち継承の儀式というお話でまた出てきますのでそろそろ終わらせたいです。
では次は赤鬼のオーガ第二十七話でお会いしましょう!




