湿地帯を目指せ 6
湿地帯を目指せ六話目ですね。
リアンの態度は相変わらずだったり、ジャックとディラブだけの会話も珍しかったり。
では本編へGO!
先ほどとリアンと合流して夕食を終えた俺達はリアンが用意した宿へと向かうことにした。
まあ、可もなく不可もなく三階建ての石造りの宿屋、入れば食堂と受付が一緒になっている宿屋。
リアンが既に受付にいる若いオーガの女性に話を付けているようで、俺とディラブで支払いを終えてから二つ貰った鍵を握りしめて三階の一角へと向かう。
俺とディラブ、リアンとアンヌという組み合わせになってしまったが、俺はどうしてもそれが不安でならない。
何なら今からでもリアンとアンヌを別部屋にするべきか、そう思う腕を組んで悩んでいるとリアンは俺の殺気に気が付いたのかアンヌを連れて部屋の中へと入っていく。
今からでも突入して部屋を別にしようと進言するべきか、そう思って部屋のドアに近づいていくと中から『ドスン』という重たい音が聞こえてきて、俺とディラブは中をそっと伺うと下着姿の二人。
リアンは鳩尾に両手を添えて蹲っており、その対面でアンヌは無表情で右拳を握りしめて佇んでいる。
「この分なら一緒の部屋にしていても大丈夫そうだな」
「リアンの命がもてばいいがな。殴って命を奪われるが、鼻血で命が奪われるか。どっちだろうな」
ディラブはそんな物騒な言葉を言いながら興味を失ったように身を翻し、俺もそれに続いて部屋へと入っていく。
俺達の部屋はベット二つに丸テーブルと椅子が二つ、テレビ一つと洗面台とトイレと風呂場が一つになっているシンプルなつくり。
まあ、豪華さを求めているわけじゃないので最低限安全と寝泊りが出来るだけの空間さえあれば文句は無い。
可もなく不可もなく。
そんな感じの部屋。
「修行をしている際は其処まで気にしていなかったな。最悪橋の下で寝泊りしたこともある」
「野宿は俺もしたことあるが、流石に町に付いたら普通に宿屋を探すよ。ていうか、それでよく身の安全を維持できたな」
「そうだな。なんで俺はそんな場所で寝ていた?」
「え? 俺に問われてもな…知らないけど? むしろお前が知らないで誰が知っているんだ?」
ディラブは腕を組んでから悩み始めるが、俺がそれを知る由もないのであえて突っ込まないし話に深入りもしない。
多分深い理由があるわけじゃないだろうし。
俺はさっさと汗でも流そうと思い一人風呂に入っていく。
この兜頭になって一番困っていること、それは寝返りが打てないという事だ。
この角がひたすら邪魔。
「なんで俺は…?」
「風呂に入っている人間に問うな。知らん。どうせその場のノリだろう? 一日以上一緒に行動して分かるけど。ディラブって結構ノリでその場を生きているところあるし」
「そうか? そうなのだろうか? しかし、ジャックもそういう所があるのでは?」
「流石にお前ほどじゃない。それに最低限計画的には動く。多分このパーティーで一番ノリで動くのはお前だ」
シャワーを浴びていると隣から更に『ドゴン』という音が聞こえてきてビビる俺。
また何かセクハラでもしたのだろうか。
リアンもめげないなぁ…普通一回酷い目に遭えば分かるだろうに。
分かっていて行動しているのか…懲りん奴だ。
「あれは本当に元男なのか? まあ性格からすれば確かに元男と言われると納得できるが」
「外見は美人で巨乳のドラゴン族、中身は女好きのエロ爺だよ」
「アンヌも背丈が違うという話だったか?」
「元は百八十を超える長身の美女だ。胸もそこそこだし、引き締まった四肢とウエスト、言っちゃあなんだけど。結構モテていたからな。モデル体型ってやつか?」
「それが今ではホビットと同レベルの幼児体系か? 難儀だな。いや…難儀でもないのか? 本人は満更でもなさそうな顔をしているし」
そうなんだよな。
アンヌは意外と今の体に満足している。
「俺も今の幼児体系の方が面白いから良いけどな。体重が足りなくてレバーを降ろせない所とか面白い」
「お前はアンヌに対してだけは性別を超えるところがあるな。本当に兄妹じゃないのか?」
「違う。今のところはな」
ディラブは一瞬俺の発言に違和感を感じたようだが、直ぐに考えることを止めたようだ。
「首都には大き目の図書館はあるのか?」
「あるが? 図書館なんてどこの町にもあるだろう? 村とかなら別だろうが」
「そういえば。後継者の三人ってどんな人だ?」
「…名前だけなら知っている。姿を見たことがあるわけじゃないが、噂なら知っている。長男は『デタラメでいい加減』だとか。次男は『真っ直ぐで頑固』だとか。三男は『引っ込み思案で優しい』とかな。だが、誰も表に顔を出さないから顔は知らん」
「後継者争いって何をするんだ? 国王が選ぶんじゃないのか?」
「違うらしい。何やら後継者の儀式がありそれを最初にクリアしたものに時期国王の証が与えられるようだ」
儀式か…多分試練的な何かがあるのだろうな。
「ジャックは誰が相応しいと思う?」
「……誰でも良いけどな。強いて言うなら長男以外だな。次男もどうかと思うが、三男も問題だな。引っ込み思案では政治は出来ないし」
「それもそうか…」
後継者。
リアンはそれに失敗して結果あんな酷い結果になってしまった。
まあ、それを殺した俺も大概だけどさ。
「元勇者か…ディラブは勇者の話はどれぐらい聞いた?」
「? お前の話か? とはいっても外の大陸では邪神討伐に向かったとか、その程度だぞ。強いて言えば追放されたというのは有名だったな」
「そうか。種族詐欺で追放か。アンヌは最後まで納得していなかったな」
「…何時かジャックの故郷にも行ってみたいな」
ディラブはわざとそんなことを言っているのか、それとも気にして言ってくれているのか。
だが、俺もいつか案内がしたい。
「中央大陸にもいいところが沢山あるんだよなぁ。でも、今のヒューマン族は教会に依存しているばかりに他の種族を中に入れない様に心掛けている。正直に言えばあまり良い傾向じゃない」
「入るには船か飛空艇しかないものな。俺は飛空艇なんて高すぎて乗ったことが無いから浮遊大陸にも行ったこと無い」
「俺は一回だけな。邪神城が浮遊大陸にあるからな。あそこのダンジョンは最高位ばかりなんだよな。未開拓の土地や遺跡も多いし。今でもあそこは多くの人達が探索しているんだよ」
「金儲けか?」
「それもあるな。だが、どちらかと言えばロマンの方だろう。金になる物が必ずあるとは思えんしな。無論そういう側面があるのは事実だろうな」
中央大陸と浮遊大陸はいずれ調べないといけないんだよな。
でも浮遊大陸って結構危険な場所だし…金持ちの道楽で色々な娯楽が溢れているのも事実。
身を売り飛ばされたという人間の話を色々と聞いたものだ。
アンヌはこの浮遊大陸がとにかく嫌いなのだ。
ロマンと危険と死が常に隣り合わせに生きている場所こそ浮遊大陸。
「でも…高いんだよなぁ…金額」
それがネック。
俺は体を拭く為のタオルに手を伸ばす。
どうでしたか?
いつの日かジャックが仲間たちを故郷に案内する日が来ると良いですね。
では次は赤鬼のオーガ第二十二話でお会いしましょう!




