湿地帯を目指せ 3
今回はディラブサイドのお話になります。
この世界でのお金稼ぎの方法の一端を知っていただけたらと思います。
では本編へGO!
電話は無かったと悟ったディラブだったが、そもそも電話を使えるのは村長だけであの人が果たして電話という存在に気が付くのかどうかは怪しい感じでもあった。
なので手紙を故郷まで出してもらおうと郵便屋へと向かい簡潔に手紙を書いてから受付にいる男性オーガに凡その場所を教えてから大きな鷹に手紙を入れた箱を背負わせてから飛んでいくところを見届ける。
空高く舞うその姿を見てふと思うのは故郷を出るときに村長に言われたセリフであった。
『お前はオーガの誰よりも強く気高く生きることが出来る! お前は赤鬼の血縁者なのだからな! 間違いない!』
そして、それを思い出すたびにふと思う事は…「赤鬼」って何だろう? である。
彼は赤鬼の由来を知らないうえ、調べようとは思いもしなかったのだ。
鷹が空高く舞っていくその姿を見た時、ふと「赤鬼ってなんだろう?」と呟くと唐突に後ろから「赤鬼がどうしたの?」と言う女性の声がはっきりと聞こえた。
驚き心臓が飛び出るような気持ちで振り返ると、金髪の毛先が多少曲がっているカールの女性アンヌが背の高いディラブをのぞき込むように見上げている。
何度も思うが、彼女は本当にヒューマンなのだろうか?
「で? どうしたの? 赤鬼って?」
「いや…村長が言っていた事だ。俺は赤鬼の子孫だとな。だが、俺は赤鬼とはオーガの事だと思っていたから。良く知らんし…アンヌは知っているのか?」
「…うん。ねえ。ディラブは教会にある聖典って知ってる?」
「? 知らん。知らないと困るのか?」
「困らないよ。要するにヒューマン族では有名なおとぎ話。今から二千年前に実在したという物語だよ。ヒューマン族は学校で最低限の内容だけど習うの」
「フーン。興味が無いな。で? それがどう関係あるのだ?」
「その中には女神が四大大陸を巡って四種族からそれぞれ二つ名を貰った人たちを引き連れていたってね。ナーガは情報が不足していて分からないんだけど。ドラゴンは『聖痕のドラゴン』でホビットは『双星のホビット』でオーガは『赤鬼のオーガ』なのよね。どんな能力があるのかは知らないけどね」
「その子孫という事か? それが何故秀でることになる?」
「さあ? 聖典の原本は昔無くなって今ある聖典も穴抜けだらけで内容も良く分かってないの」
「そうなのか…じゃあ赤鬼の由来は…」
「分からないなぁ…でも、四種族の二つ名持ちは皆何かしらの能力じみた力があるって聞いたよ。多分ディラブは特別な能力があるんだよ」
ディラブは全く分からなかったので首を傾げるしかなかった。
だってディラブには全く身に覚えのないことだし、何よりどんな能力なのかは分からなかったからだ。
自分が特別という感覚は存在しない。
「アンヌはこんな所でなにをしているんだ? 武器屋に行くのでは?」
「うん。行って預けてきたからその辺ブラついていたの。一時間は掛かるって言われちゃったし」
武器の調整に出していたアンヌは一時間の間とりあえず時間を潰そうと出店が立ち並ぶこのストリートにやってきた。
大きな通りに三つの通路とその通路を挟むように出店が立ち並ぶこの場所こそこの町の市場の中心である。
河から運んできた荷物もこの河前の此処に集められており、ここに来ればなんでも揃うと言われていた。
「そういえばディラブは魔法のポーチを持ってなかったね。買わないの? あれば便利だよ」
「金が無いしな…」
「? 賞金貰えば? モンスター討伐でお金もらえるでしょ? それ以外にもモンスターの素材でも依頼でお金が貰えるよ」
「そんな手段が?」
「え? どうやって今までお金を稼いでいたの?」
「??? こう…手に入れたものを売って?」
唖然とするアンヌはディラブを引き連れて市場を後にして先ほど歩いている最中に見つけたこじんまりとした路地裏にあるダイヤと剣のマークが描かれている看板のドアを開ける。
中にはサングラスを掛けたオーガ族の初老の男性が待ち構えており、アンヌが代表して話し始めると、初老の男性は手招きでディラブを呼ぶ。
「儂の目をしっかり見い」
しっかり見ろと言われるのでその瞳をしっかりと見つめると、真っ黒な瞳だけが写っているのだがそれが何を意味しているのかは分からなかった。
結果老人は店の奥からまとまったお金を麻袋に入れて持ってきた。
重たそうには見えないが、十分大金なような気がしたディラブ。
少なくとも財布に入り切るはずがない量が目の前にやってきてディラブは「これは?」と尋ねた。
と言うか貰う事が怖かった。
「報酬じゃ。受け取れ。指名手配中のモンスターなど五体と指名手配犯二名の合計金額」
「………では」
ぶるぶると震えながらまとまったお金が入った袋を持ってお店を出ていく。
「その金額があれば買えるでしょ? ならそれで買おう」
「むう…本当に良いのだろうか? 俺は修行中に倒しただけだぞ」
「それでも報酬は報酬だよ。皆を困らせていたモンスターや指名手配犯を倒した。十分誇ることだよ。だって…良いことしたんだから」
良いことをしたという気持ちは湧いてこなかったが、だが受け取ってしまったのでそう考えるしかなかった。
まず先ほどの市場まで戻って魔法のポーチを売っているお店を探し出した。
良く分からなかったが最初に見つけたお店で適当なポーチでも買おうとしたが、アンヌに止められた。
「魔法のポーチとは言っても作る人によって収納できる量も違うし意図的に値段を吊り上げる人も多いから一通り見てから買おうよ」
アンヌに連れられて十分ほど見て回り二回目に見たお店へと急ぐ、赤やら緑やら単色系が多いお店で、派手なカラーリングやらこだわった色合いは無いが、安くそして優秀な能力を持った魔法のポーチを売っていた。
何色でも良いと思ってディラブは赤色を買って今までも持っていたカバンの中の荷物とお金をまとめて中に入れてしまう。
「その鞄どうする? もう使わないよね?」
「う~ん。だが愛着がある。捨てたくない」
「じゃあ。とりあえず入れておけば。後々考えればいいわけだし」
「そうする…アンヌは何か買おうとは思わなかったのか?」
「どうだろう。レイピアが治ればって思っていたけど、服買おうかな。可愛い服」
「なら奢らせてほしい。金はある」
意外な言葉が出たと驚くアンヌ。
「そう? じゃあお願いしようかな」
二人で軽くショッピングをしてから二人はレイピアを回収後合流地点へと急いだ。
どうでしたか?
モンスターを狩って素材を売ったりってまるであのゲーム見たいですね(笑)
では次は赤鬼のオーガ第十九話でお会いしましょう!




