ランドロス鉱山坑道東区攻略戦 8
ランドロス鉱山坑道東区攻略戦最終話となります。
ボス戦が前半戦で町までの経緯が後半戦となりますね。
では本編へGO!
昆虫型のモンスターは森エリアなどでは頻繁に見かけるが、洞窟で見かけることはまずないだろう。
洞窟内で生息する虫タイプは基本ワームのような芋虫のような形だったりするからだ。
無論いないわけではないが、それでも基本は掘り進んで生きているような生き物上に長細い形をしているのだが、目の前にいるこいつは明らかに洞窟のような場所に生息するような形をしていない。
球体の胴体に四つの長い脚、その全てに昆虫の特徴である分厚い装甲のようなものを付けているが、その先っこは鋭い爪のような鎌が見えている。
あれと同一か似ている個体を俺は見たことが無い為、恐らく新種か他の大陸で見られるタイプなのだろうが、俺達はディラブに語り掛ける。
「あれと同一個体は見たことあるか?」
「たしかホビット大陸の北部の深い森で。最もここまでデカくはなかったから改造個体だろう。黒い装甲に四つの鋭い鎌を付けた足にデカい目が特徴のモンスター。昆虫タイプの名前は『デルマ』という名前だったはず。おそらくクイーン種だ」
「強さ的に言えば本来は上位の最奥におるべき個体じゃろうに。こんな出入口で巣を構えるタイプじゃ無かろうに」
「多分だけど。本来は森にいる個体なら明るい場所が良いんだよ。洞窟は奥に行けば暗く明かりが無くなるから。ある程度薄暗さと直ぐに太陽を感じられる場所という事でここに連れてこられてこのまま巣にしたって事かな?」
「では。この個体もあのノルヴァスが此処に連れてきたのか? それとも…」
それともの方だろうとは思う。
元教会の関係者が個体の幼虫タイプを連れて行って改造をしてからここに放ったという事だとは思う。
まあ、弱点は目に目るぐらい大きな目玉だな。
「あれを狙うか…分かり易い弱点だな」
「だが。あれは普通にふさがる上に瞼がまるで金属のように硬くてな。普通にやっていてはまず攻撃を当てさせてはくれないだろう」
え? それどうやって攻撃を当てればいいわけ?
「もうアンヌが猛ダッシュで攻撃を仕掛けるしか無くない? 一番簡単で一番分かり易い作戦だと思うけど」
「良いけど。私の攻撃速度に対応していたらどうするつもり?」
「ならまずは敵の攻撃を周囲へと向けさせるか。俺とディラブとアンヌでまずは前衛をこなしつつ、リアンは適度に妨害聖術を展開しよう。減速術式を使え…無いか」
「エロい術なら幾らでも使えるがのう」
役に立たないな…後で厳しく教え込みたいがな。
俺が教えても良いけど、できればドラゴン族に教えを請いたいな。
まあ、後にするけど。
「ならせめて地形操作を使ってくれよ。フィン王国の本来の術式だろう? あれって聖術を本来の用途から外している術だろうに…」
「何故知っておる!? 聖術の扱い方が違うんじゃよな…」
聖術は人に使う術であるが、リアン達はこれを地形へと影響を与えて地形を操作している。
呪術とは違い土地に呪術を込めて生き物を巻き込むのに対して、あくまでも土地で完結しているのだろう。
聖術の使い方の問題なのだろうけれど、呪術と違って聖術には本来そういう細かい制約はなかったように思うが、使い勝手の問題だろうか?
やったことが無いので何とも言えない。
まあ、アンヌが使わないという事は出来ないのだろう。
「じゃあ。それでいこっか。私は敵の攻撃を適度に引き付けて最後のアタッカー、ジャックとディラブが敵の動きを封じつつリアンさんが敵の攻撃を妨害する。これでいい?」
俺は問題がなさそうだったのでそのままディラブと共に駆け出していきそのまままずは右前足めがけて大剣を振り回した。
俺が狙ったのは右前足の関節だったのだが、デルマは俺の攻撃にいち早く反応して鎌で攻撃を受け止める。
ぶつかり合う刃と刃はその場で『ガキン』という金属がぶつかり合う音を鳴らし、俺は両足で踏ん張って耐え抜き振り下ろされる鎌による攻撃を避ける。
ディラブの方は呪術を使って上手く関節に攻撃を加えようとするが、デルマは呪術にいち早く適応したのか攻撃をギリギリの部分で避ける。
すると、無暗に避けた事と俺への攻撃が外れたことで体勢が大きく崩れたデルマ、そこにリアンが上から巨大な岩の塊がデルマの頭部を着弾した。
目を回し始めるデルマへと向かってアンヌは力一杯地を蹴ってそのまま瞼を閉じるという反応を見せる前にアンヌのレイピアが突っ込んでいく。
まるで爆弾が目玉で爆発した可能ような一撃と共にデルマの体はそのまま出入口の外へと向かって吹っ飛んでいく。
「ちょっと! ちゃんと掴んでおいてよ!」
「俺の所為か!? 今! 俺が怒られたの!? ありえないでしょ!」
「何故外に飛ばすのだ? と言うかリアンが地形で掴んでいれば良いだろう?」
「儂の所為にするんじゃない。と言うか醜い言い争いは己の心の愚かさをさらすだけじゃぞ? 作戦を最初に立てた時点で分かっていた事じゃろうに」
リアンが黙って外へと出ていき、俺達も後に続くように出て行った。
外には石で積み上げられた簡易的な小屋が複数個とトロッコだろうか?
どうやらこれで石材や鉱石を町へと運んでいるようで、その更に一番奥の壁に衝突して死んでいるデルマを発見した。
「良かった。死んでいたようだな。でだ。此処からどうやって町へと行く?」
「このトロッコの良く先に町がある。それも川沿いの町がな」
「何故分かるのじゃ?」
「このオーク大陸は険しい山と深い谷で出来ており、川が幾つも流れている。険しい山を掘り進もうにも中は半ダンジョンの鉱山。川沿いに作ると落石が危ないので列車を敷けない。なら後は川を伝って移動する方法しかない」
「なるほどね。鉱石なんかを運ぶわけだから自然とこのトロッコの良く先は川で運ぶことが出来る場所ってわけだ。ならこの使われていないトロッコの路線をそのままたどればいいんだね?」
「ああ。この道を進んでいけば必ず辿り着く。それだけははっきりと言える。先ずはその町を目指そう。俺は村に連絡を入れたい」
ディラブの案内の元俺達は歩き出していく。
そこから特に代わり映えの無い赤い土と所々生えている草木時折小動物を追いかけて肉食動物を軽くあしらいつつ路線を歩く。
両サイドにある山の谷間を潜って辿り着いた先、どうやらここは山の中腹地点のようで右側が開けていくと下にはっきりとした町が見えた。
「あの町は隠れていないんだな」
「おそらくこの辺り一帯が本来は呪術で隠しており、我々はその中にもういるのだろう。ダンジョンに入った時点でこの町までの呪術にも入れていたという事だ」
「川沿いにある町じゃが…何というか普通の町じゃな。可もなく不可もなく」
「そうだね。川沿いに大きな倉庫が幾つもあるからあそこが荷物を船で運ぶ運搬用の町なんだろうね。町もそこまで大きいわけじゃないのもそういう理由かな?」
「ああ。そこそこ人もいるし、辿り着いたら坑道内の状況を説明しないとな。ディラブに任せても良いか?」
「分かっている。まずは其処だな。説明しないと我々が疑われる」
厄介だな…俺達の所為じゃないのに疑われかねない場所からやってきただけに放置すれば間違いなく捕まる。
俺が人一倍大きなため息を吐き出した。
「あの男…まだ仕掛けてくるつもりか? そもそもあそこで何をしていた? 邪魔をするだけの為に居たのか?」
「元教会関係者がバックにいるのなら何か作戦上の理由もあったんだろうけど。何かを作ろうとしていたのかな?」
「ありえるかな? 外の大陸までは教会の権威も届かないんだよ? ヒューマン族が歩いていたら絶対目立つって」
アンヌの言う通りで他の大陸をヒューマン族が歩いていれば目立つから、あの男は恐らく普段から隠れて行動しているのだろう。
あの商人もホビットに成りすましているようだし、よくやる手段なのかもしれない。
「アンヌの擬態するか?」
「言い方。しないわよ。別に隠れる理由も無いし」
「あの町で男の行方を少し聞いておいた方がよかろう。と言うか、あの町はダンジョンがあのようなことになっていて放置しておるのか?」
「かもしれんな。それか、入り口に陣取っているあのデルマに気が付いて手が出せないかだな」
放置するつもりで無視しているんだとは思うけど、ディフェンダーに報告すればデルマに関しては解決しそうな案件だし。
見えてきた町に対する不安しかなかった。
どうでしたか?
もう少し話が進めばまたダンジョンですが、次のダンジョンは構造を複雑にしようと思っています。
リアンとアンヌは違いますが、ジャックとディラブは冒険をする上でちゃんとした目的をもって至りますね。
このお話の裏事情として女神の痕跡を辿るというのも重要だったりします。
では次は赤鬼のオーガ第十六話でお会いしましょう!




