ランドロス鉱山坑道東区攻略戦 6
ランドロス鉱山坑道東区攻略戦六話目となります。
今回はゴーレムのボス手前までのエピソードとなります。
そろそろ脱出かな?
では本編へGO!
岩の集合体こそがゴーレムと言う存在の正体であり、その存在はスライムの固形物バージョンと言ってもいいだろう。
スライム同様にほかの物質こそが体を構成している正体であり、核を探し出して破壊すればいいのだが、体が岩で覆われているゴーレムはスライムとは違う意味で攻略しづらいモンスターでもある。
核は岩の中に隠れているわけではなく、岩の装甲を剥がせば簡単に露出するわけだが、小さいタイプなら意外と脆くあっという間に破壊できるのだ。
大きなタイプはそれこそ魔術などで装甲を剥がしていき、核を露出させるのだがそこでモタモタしていると周囲の岩などを装甲にしてしまうのでこれまた厄介だ。
初めて戦った時はそれこそそれが分からず苦戦してしまった。
当時は魔術は使えず聖術しか使えないのでそれこそ力任せの戦法となってしまったわけだが、流石に四人がかりで戦うと非常に楽。
特にディラブの斧による攻撃は一撃でゴーレムを破壊してくれるので助かっている。
「こうして考えてみると呪術ってやはり先頭においてはメリットが強いな。場に掛けるから解除がし難いし、何より戦いを有利な形に近づける」
「それがメリットじゃからな。じゃが、その代わり取り扱いに気をつけなば危険な術じゃよ。反動もでかいしの」
「呪術はそれだけ危険と隣り合わせの術なのだ。学ぶ時も師から幾つかの誓いを教えられる。一つ。呪術は場にしか掛けてはいけないこと。一つ。強すぎる制限や制約を場にかけてはならない。一つ。呪術に対し設けた制約を破ってはいけない。一つ。呪術で命を奪ってはいけない」
結構面倒だなと思うのだが、それだけ呪術は危険な技なのだという事なのだろう。
どうにも使えないから分からないけど。
「聖術は肉体に。呪術に場に。魔術は力そのものを扱う術式だったね。やっぱり魔術が一番凡庸性があるかなぁって思う」
「まあ。力そのものを扱う術だからな。でも、同時にそれだけ幅広く極めるなんて出来ないのが魔術さ。自由すぎてな」
「フム。そういう意味では最も不自由な術式は呪術じゃな」
「それはそうだろう。制限するから強くなる。それが呪術だ」
「それなら聖術は上限が存在しないんだもんね。術式そのものにはだけど。肉体には限界があるからどうにもね。だから肉体を鍛えることが一番強くなるから」
「? それって自分に掛けることが前提だよな? 本来の聖術って癒しだって思うんだけど? どんだけ脳筋なんだ?」
アンヌの言葉に突っ込む俺。
「本来の聖術は癒しや治療だぞ。お前は聖術を戦闘上の術だと思っているのか? 肉体を弄るという事はそういう事だ。リアンは出来るんだよな?」
「まあの。じゃが…このメンツは基本怪我をせんしな。儂が癒すことが無いんじゃよな」
「だって…戦う方が楽なんだもん」
「聖女様が戦う事だけ考えるからいろんな人達から脳筋聖女って言われるんだぞ。言われたくないのならせめて脳筋を止めろ」
「………はぁい」
「なら本来は俺は前衛。ジャックが後衛。リアンとアンヌが治療担当か?」
「ヒーラーって呼んでよ。ヒーラー出来ないけど」
「出来ないなら突っ込むな。前衛しか出来ないだろう? 後衛が出来ない聖術使いがどうやってヒーラーと前衛以外熟すんだ?」
不貞腐れて黙り込むアンヌを無視して俺はゴーレムの一体を大剣で処理する。
ディラブの方は二体まとめて横なぎに撃破してく辺り、やはり呪術で核の居場所を調整しているようだ。
急所に当たりやすくしているといった感じだろう。
リアンは後方で俺達の動きをパワーアップしてくれている。
「やっぱりパーティーは良いな。勇者時代は基本単独行動だからさ」
「だから言ったじゃない! 誰か連れて行った方が良いって。なのに貴方は教会の方針を馬鹿真面目に受けるから」
「俺が逆らえばそれで終わったと思うか? 何かが変わったと思うか? それに勇者でいる限りしがらみはある。それはアンヌが一番分かっていることだ」
「まあの。教会は中央大陸では最も権威を持ち同時にその権威上に多くの人から信頼と畏怖を集めておる。それが恨み言にはなるし様々な思惑に振り回されるわい」
「面倒だな。そういうのは政治家だけでいい。下にいる俺達は自由に出来ればそれでいい」
ディラブのそんな言葉に誰も否定をしない辺り、ここにいるメンツはそれには思うところがある。
正直な所こうして呑気に旅でもしている時は一番楽しい気がするが、どうにも俺はしがらみの中にいることが多い。
今だって気楽に旅をしているようでナーガの将軍職にいるわけだし、安定した職種でも求めているのかな?
俺は最後のゴーレムを一旦破壊してからアンヌの方を振り返る。
アンヌはレイピアでゴーレムの核を一発で破壊してから俺の方を振り返って「何?」と不機嫌そうに尋ねた。
「俺は未だに良く分からないんだが。アンヌが教会を嫌っているのは昔っからだけどさ。ならなんで止めないんだ? 最初っから嫌だって断る選択肢もあった。勇者と違って聖女はあくまでも生まれつきのもので、別段教会が…なんだ? その疑問顔は」
「そうなのかな? でも、私他の聖女の子に会った時、皆教会から与えられたって聞いたよ」
「??? でも、俺達がドライ最高司祭に会った時に「聖女は先天性だ」って言っていたろ?」
リアンとディラブは話の内容がイマイチ理解が出来ないのか下手に口を挟まず黙っている。
「そう言っていたよ。他の子は違うんだもん。私だって何度かドライ最高司祭に聞いたけどはぐらかされるだけで…詳しく聞いても答えてくれないし…」
「あの男は昔っから秘密事が多い性格でな。自分の本心など滅多に話さん。そういえば今から三十年前から二十年前ぐらいまでの十年間かの? えらい忙しそうに動き回っていたよ」
「教会の最高司祭とは忙しい人間ではないのか? 良くは分からんが。名前からして偉そうだし」
「あまりそういうイメージが無いけど…良く知っているな。疎遠だったわりには」
「それはな。最高司祭クラスが動けば流石に周りから話はくるよ」
「そもそも。勇者ってどうやって選ばれるのだ? 何か仕組みがあるのだろう?」
黙り込む一行。
「し、知らないかなぁ…もちろんジャックは知っているだよね?」
「背が縮んで頭の中身まで幼くなったのか? 知るわけないだろうに」
「と言うか教会関係者が知らんという事があるのか? たしか勇者の刻印自体は生まれつきだと聞いたぞ」
「? そうなのか? 俺達オークは勇者を輩出せんから良く分からん。そもそもジョブシステムが分からない」
「その辺はヒューマン族しか分からないよな。俺も転職したこと無いけどさ」
アンヌも「私もないから分からない」と言い出すが、流石にリアンはあるだろうと思っていると「儂も分からんな」と言い出した。
なんと、このパーティーは全員転職したことが無いという事が判明した。
「何故ヒューマン族だけ固有のアビリティを持たないのだ? 他の種族は皆持っているにも関わらず」
そこを言われるとまたしても答え難い質問だな。
と言うかその辺の話を俺は詳しくは知らないな。
「まあ、ここで立ち止まっていても仕方がない話だから奥に向かおう。どうやらこの四階は其処まで狭くないようだし。その代わり…」
俺達四人の視界の奥には金色の岩を身に纏っているゴーレムが三体沈黙していた。
まるであの場を守る守護者のように見えてしまう。
「まるで守護者じゃのう」
「守護者気取りのゴーレム。金色か…堅そうだよねぇ」
「まあ硬いよ。前に似た種と戦ったことがあるけど。武器での破壊よりは魔術で装甲を取り除いてから一気に決めたほうが良いな。なら俺は後衛を担当しよう。リアンはディラブに強化の術式と防護壁を」
「うむ。まあ、戦闘能力で大きく劣る儂が戦うメリット皆無じゃしな」
「こっちはいつでも攻撃できるようにしてこう」
「じゃあ。ジャックの合図を待つね」
俺は右手に魔力を集中してから術式を作り始める。
どうでしたか?
次はゴーレムのボス戦開始から始まります。
では次は赤鬼のオーガ第十四話でお会いしましょう!




