オリジナルの術式
赤鬼のオーガ編第二話になります!
またジャックが一つ強くなってしまうという話ですね。
では本編へGO!
ツタが石造りの駅舎の外見に沢山付いている古い感じが漂い、そこから石造りの広場から正面と斜めに道が続いていて、各道の先には海が薄っすらと見えている。
あまり観光で来るような場所ではなく、あくまでも漁業で生計を立てている町だから外観よりも利便性が強い。
実際街中はトラムが走り、道路も大きく車が走れるだけのスペースが十分にとられている。
この町の駅舎もどちらかと言えば貨物としての機能が強いだろう。
「手に入れた魚を各町に配るために? 飛空艇の発着場は?」
「そこまで大きくないんだよ。だからさ。使う人間なんてそういないし。列車で大きい町まで運んでからそこから飛空艇なりで運ぶ方が良いし。量が量なら列車の方が安全に運べるしな」
「それに、漁業が盛んなら大型船が運べばよかろう。大型海洋生物が暴れるだけの水深なら大型船なら来れよう」
リアンの言う通りでこの辺りは飛空艇を使うメリットがあまりないのだ。
浮遊大陸に行きたいというのなら別だが、そうじゃない場合は基本列車と大型船で十分。
アンヌは「そんなもんか…」というだけで特にそれ以外何か言いたいことがあるわけじゃないらしくそのまま周りをしっかりと見る。
「なんというか…寂れた感じ? ノアの村はまだ人数が少ないけど賑やかだったけど…」
「あれは秘境にこそあるけど、観光名所だけならそこそこ有名だよ。温泉地だし」
「じゃのう。儂も一度行ってみたい場所じゃよな…あそこのお風呂は殆ど混浴じゃし」
「今女だって自覚無いだろう? もう混浴を気にする必要ないんだぜ? エロ爺」
「…!? なんという事じゃ…もう…混浴にワクワクする日が来ないとは」
ショックを受けてその場で蹲っているエロ爺事リアンであるが、正直邪魔だからやめてほしい。
アンヌもしかめっ面をした状態で「やめて。起きて」と冷静に冷酷そうな声質ではっきりと告げると、リアンは起き上がりながら深めのため息を吐き出した。
「はぁ…儂の人生の楽しみが一つ減ったぞ。で?」
「雑すぎるだろう。どんだけ混浴に未練があるんだ? 偏屈爺さんを探すんだよ。っていうか向かうんだよ」
「家の場所は? 分かってるの?」
俺は「ああ」と言いながらとりあえず駅舎から出て左側に伸びている道を進み始めていく。
左右には一般住宅や駅で荷物を運んだり運んだ荷物を保管しておくための倉庫が置かれている。
「この先に町離れになっている郊外の丘の上に一軒家が建っていて、そこに住んでいるらしい。魔術を研究している研究職の人間らしいけど、人嫌いでも有名でさ」
「うわぁ…いかにもな偏屈」
「じゃのう。簡単にことが運ぶ気がせんな」
それは俺も同じだが、どうにも大将軍長は俺が簡単に説得できると思っているのだ。
その自信はどこから来ているのだろうかと尋ねてみても「行けば分かる」としか言われなかった。
「しかし、魔術を研究したのならさぞかし実力もあるのじゃろうの」
「それが、大将軍長は何度か十将軍のテストは受けに来たことがあるらしいけど、どれも合格したことは一度もないんだそうだ。だから特に十将軍は嫌っているとか」
「え? そこに十将軍の一人である将軍長を寄越す? 嫌がらせじゃない。喧嘩? 私外にいるから」
「儂もじゃ。終わったら呼んでくれ」
「頼むから傍にいてくれよ。トラブルになるって思っているならさ」
そんなくだらない会話をしている間にもその郊外の丘がみえてきた。
言われていた通りその丘の上に大きな木と共に立っている石造りの一件家が建っており、周囲は花畑が広がっているのだが、魔術の研究ではなかっただろうか?
ハチミツでも作っているのだろうか?
丘への道を歩いて進んでいると、入り口の所で背の低いホビット族が大きな荷物を抱えた状態でナーガの老人に話しかけている。
その隣には赤い肌を持っている角の生えている大男が立っているが、こっちは黙り込んでいた。
「ですから! 私達向こう側の大陸に行きたいんです!」
「じゃから。儂はディフェンダー以外にこの鍵を渡すつもりも貸すつもりも開けるつもりもない!」
どうやらあの人達もダンジョンを使って向こう側であるオーク大陸に移動しようとしているようだが、聞いていた通り偏屈爺なようだ。
俺あの爺に軟化した態度を見せる自信は無いな。
「おい。爺。鍵を渡すかダンジョンのドアを開けるか選ばせてやろう」
「なんじゃ!? お前さん!?」
「ナーガ十将軍の将軍長ジャック・ロウ。オーク大陸に迅速に向かうために鍵を渡してほしい」
俺が十将軍だと名乗った時点で表情を変えたのが目の前の爺だが、空気を換えたのは赤い男である。
最も赤い男は敵意を持っているというわけじゃないのでここではあえて指摘しない。
問題は物凄い嫌そうな表情をしている爺の方だ。
「お前さんが新任の将軍長じゃと!? そんな若造を選ぶとは十将軍も落ちたものじゃな」
「口だけの爺はいう事が違うな。選ばれない理由に他人を求めるのか? 才能無いんじゃないのか?」
「バチバチ言い争って居るな…」
リアンとアンヌが二歩下がって様子を見始める中、俺と爺の水面下での争いは既に始まっているのだ。
「儂より優れた魔術の行使が出来るなら鍵を使わせてやってもいいぞ!」
「早く言えよ。発言も鈍いのか? それとも元からそんな感じなのか?」
引かない俺と爺というバトルが目の前に繰り広げられている中、ホビットの商人は事の成り行きを一旦見届けようとしていた。
まあ目の前で十将軍が言い争いをしていたら誰でも介入しようとはしないだろうけどさ。
爺は両手を合わせて何かを念じるように力を籠め始めるが、それで何が起きるのかと思って見守っていると、老人は今度は両手を開いて近くにある花が咲いていない場所に花を次々と咲かせ始める。
アンヌもリアンもホビットの商人すらも感心したような声を発するが、俺と赤い男だけは無表情の無感情を作り出す。
同時に術を解いてドヤ顔を俺達に見せるが、結構疲れ切っている気がするのは機能性じゃないだろう。
「どうじゃ? こんな魔術を使ったことは無かろう? 言っておくが一般の魔術の知識でどうにかできるような術じゃない。これは完全にオリジナルの術じゃ!」
この老人に「どうじゃ」と言われても実は術式の構成も使い方も分かってしまったので然程凄いとは思わない。
するとここまでひたすら黙っていた赤い男が口を開いた。
「凄いとは思わない。おそらくこの十将軍長ならそれ以上のレベルでの術の行使が可能だ」
「まあ…楽勝だな。爺。この術一回メビウスインパクトを作って、無属性の特性である上書を使ってオリジナルを作ったんだな。確かに、その理論なら可能だし」
俺はメビウスインパクトをコピーで作り出し、術を上書きして花畑を作るイメージで術を作り直す。
それを老人の隣にある空いている区画にそれ以上のレベルでの花畑を作り出す。
「まあ、俺は一度作った術式を記録してコピーすることが出来るからさ。この程度楽勝なんだけど…あんたが理屈を見せてくれたから簡単だったよ…で? 作ったけど? 何ならアンタの家も全部花で埋め尽くしてやろうか? 今なら大樹を作ることも出来そうだけど?」
「いや! いや…良い。分かった。譲る」
「爺さんさ…あんたが十将軍に選ばれなかった理由。教えてやるよ。あんた魔力の製造量。魔力量が圧倒的に少ないんだよ。その程度の空き地を作るのに疲れ切っているんじゃな」
正直に言えば二十メートル四方の区画に花で埋め尽くすレベルの術ならそこまで疲れるわけがない。
学生でもメビウスインパクトさえ作れれば簡単に出来る魔術だ。
メビウスインパクト事態は難易度の高い術だが、作れればこの術式自体は比較的楽だろう。
なのにどうして大将軍長は「君なら出来る」と言ったのか分からない。
「そんな感じじゃ戦力にならないよ。一発術を作ったらもう終わりだ。正直に言えば選ばれない理由としては十分だよ。魔術の精度や術の使い方は上手くても魔力が少ないんじゃ話にならない」
この爺が十将軍に選ばれない理由としては非常に分かり易いだろう。
「じゃあダンジョンの出入り口を開けてもらうぞ…俺は条件を満たしたわけだからな」
どうでしたか?
次回からはいよいよ本格的にダンジョン攻略が始まりますね。
ダンジョン攻略回のタイトルはダンジョン名で固定しようと思っております。
では次は第一章の第三話でお会いしましょう!




