揺れる列車の中で…
赤鬼のオーガ第一話目となりますね!
まだナーガ大陸ですがもうじき直ぐにオーク大陸へと舞台を移します!
では本編へGO!
ガーナンド・ロウの駅から揺られる事三時間、うっそうと生い茂る森を左右に挟んで列車は森の奥へと進んでいく。
俺は来ている青白の甚平の裾を少し弄りながら、中に来ている金属製の防具の感触を少し気にする。
直ぐ近くを舗装された道路が伸びている所を見るとこの先にきちんと集落があるのだという事だけは分かる。
まあ、俺はこの先に何があるのかは知っているのだが、俺の対面に座っているアンヌとリアンは知らない。
アンヌはリボンのカチューシャに動きやすいピンク色のミニスカートに黒いタイツ、上には白いシャツに厚めのジャケットを羽織っている。
その左隣に座っているリアンは赤い和服を着こんでいるのだが、両者ともウエストポーチを斜め掛けしているのはうらやましい。
俺の場合大剣を背負う手前斜め掛けが出来ない、アンヌは腰に小型レイピア、リアンはナックルなので問題が無い。
そんなアンヌが俺が教えていないばかりに睨んでいる。
というよりは教えていないのだが、アンヌは隠し事を極端に嫌うために先ほどから視線が鋭くて叶わないのだが、俺が何度か「やめて」と言ってもやめてくれないし。
生い茂る森を抜けていけば視界に見えてきたのは遠くに薄っすらと見えるオーク大陸と内海と外海の境にあるババルイ海岸が見えてきた。
「ここから歩いて渡るわけ?」
「? ここそこそこ水深あるけど? 水上を走って渡れるの? 何それ怖い」
「アンヌ嬢なら渡れそうじゃな。儂は御免こうむるがの。で? そろそろ教えてくれんか?」
アンヌの右隣に座り込んでいる金髪に角が二つは得ている老人口調のドラゴン族の女性(ドラゴン族は女性しかいない)こそ、ファン王国の元国王の元ヒューマン族のリアンである。
腕を組んで着物から漏れ出そうな胸を支えているのだが、このエロ爺はブラジャーを装着していないのだろうか?
それでも装着してその物量なのか?
「ジャックが凍らせればいいじゃない」
「あのね。海の生物に悪影響を与えるレベルの問題行動を十将軍にさせないで。ていうか、この聖女発想が怖い」
アンヌはカールが掛かった金色の髪の毛を弄っているが、どうにも機嫌が悪い。
まあ、分からないわけじゃない。
本来オーク大陸に行くなら内海か外海から船か飛空艇を使うのだが、今内海は大型海洋獣が暴れ回っていて安全な航海が難しいと言われてしまった。
外海は今のところオーク大陸に行く予定が無い上、十将軍を連れて安全に航海できる自信が無いと拒否された。
飛空艇は普通に運賃が高く俺が却下。
「じゃあ。どうするの!? 教えて!」
「堪え性が無い。この先にある港町の近くにナーガ大陸とオーク大陸を繋ぐダンジョンがあるらしいんだよ。らしいというのも中のモンスターの駆除はディフェンダーがやるから良いんだけど、中の詳細までは分からないんだよ。どうにも向こう側のディフェンダーが反対側から入っていると聞いたら繋がっていると聞いてる」
「言い訳じゃな。完全に…儂は構わんが。で? そのダンジョンの入り口がその町の近くに?」
「というよりはその出入り口の鍵を管理している老人がこの先に町に住んでいるようでさ。偏屈爺で政府関係者が言ってもカギを貸してくれないらしいんだよ」
「なにそれ? ディフェンダーには貸すのに?」
「ああ。だから直接借りてきて欲しいと。相当めんどくさいらしいけど。でも、大将軍長は「君なら借りられる」と言われたし」
何故かは知らないし知ろうとも思わないのだが、大将軍長曰く「君が学べば更なる技術向上になる」と言われてしまっては無視も出来ない。
でも、なんで俺なんだろうか?
まあ良いけどさ。
「大きい町なの? なんかそれっぽく思えないけど」
「良いや。規模としては小さい方だよ。村ではないけどさ。今は漁業が一旦ストップしている状態だから暇そうな漁師ばかりらしいけど」
「内海で漁が出来ん上この辺りまで被害が来ているのなら無理からぬ話じゃよな。あれは酷いからの。しかし、そうか…もうそんな時期か」
今現在内海で暴れ回っている大型海洋生物は五年に一度大繁殖しては内海で暴れ回り、その都度各国やディフェンダーが全力で駆除する。
その為このあたりは水深が結構深めなので大型海洋がその大陸の間に現れる上、音に敏感なのでボートを漕いでいてもやってくる。
実際、何度も襲われたこともあり町では暴れる時期は絶対に漁に行かないのだそうだ。
「ジャックが暴れる大型海洋生物を狩ればいいじゃない」
「アンヌ。帰りはどうするつもりなんだ? その人に大型海洋生物が落ち着くまでそこで野宿しろと?」
「対面に町は無いの?」
「無い。あくまでも向こうへの行き来も基本はこっちの町で行うらしいからさ。向こうに居ても最悪連絡する手段だけはあるから、それで来てもらうんだってさ。使う人間いないらしいけど」
「今時町まで行って船で対岸まで行く者など変わり者じゃよ。高い金払って飛空艇を使うか、大きな街から大きな街まで移動する大型船を使うかじゃし」
俺達が今とっている行動が相当変わっている自覚はある。
実際俺達が乗っている車両に俺達以外に人はいない。
「到着してまずそのお爺さんに会いに行ってカギを貰い、そのままダンジョン?」
「だな。出来れば日が暮れる前に向こうに付きたいな。オーク大陸って初めてだし。俺達全員」
「誰一人居らんよな。四代大陸を旅したことのある人間。しかし、意外じゃな。勇者はホビット大陸ぐらいなら旅をしたことがあると思って居ったが?」
勇者である俺には中央大陸から出たことが無い。
「まず勇者の剣を製造してもらうためにホビット大陸に向かうものじゃが…製造せずに邪神に勝ったのか?」
「先代の剣が在るからって作ってもらえなかったんだよ」
「…これだから教会は。ジャックを殺す気満々じゃない」
今に思えば殺すつもりだったからこその采配なのだろうが、俺が結果からすれば生きてしまったというイレギュラーが起きたという事だ。
しかし、何故俺を殺そうとしてのかまるで分からない。
結局で未だに大司祭は見つかっていないわけだし、今現在も騎士団は探しているという話だが、これだけ探しても居ないのならもう中央大陸にはいない可能性がある。
騎士団が手引きしていなければだが。
「どうなんだろう。無いわけじゃないとは思うけど…私興味ないし」
「興味を持てよ…教会関係者が興味が無いって良くないぞ」
「私好きじゃないもん。元々…滅びればいい」
「だと思った。すっかり元通りですね。元に戻りましたね性格だけ…体は幼いままなのにね」
「私はこれで良い。可愛い服を着ても引かれないし…あの頃は可愛いフリフリのドレスを着ていたら引かれたもんね」
「あれは時と場合を考えないからだろ? 街中で着ていたら引かれるでしょ。まあ、図体の大きい女が可愛い感じのドレスを着ていたら別の意味でも引かれるけどさ」
その時は流石に友人達が目前で止めたんだっけか?
女子寮が騒がしかったからよく覚えている。
「良いではないか。フリフリのドレスを着ておれば風でスカートが捲れるかもしれんし」
「意見が変わらないよな。このエロ爺は。ていうか、そこで見たら素早い一撃があんたの顔面の骨を粉砕するだけだぞ」
「粉砕で済めばいいよねお爺ちゃん。その顔に穴が開くかも」
「儂…偶々スカートの中を見てしまった程度で殺されるのか? 酷じゃないか?」
「「普段の行いだろう?(でしょ?)」」
「そうじゃな…じゃが後悔は無いがな!」
無いのか…在ってほしかったな。
「しかし…酷いパーティーだよな。元勇者がこれから旅をする上で『役目を終えた勇者』に『身長が縮んだ口の悪い聖女』に『中身はエロ爺の女ドラゴン』って」
「自分だけ良い風に言うね。役目を終えた他者への配慮の足りない元勇者に変えない?」
「変えない。変えるつもりは一切ない。配慮はしているつもりだ。俺の配慮が分からないからだろ?」
「そこ。バチバチと争う出ない。戦争をその場で起こすな。どんだけパーティー仲が悪いんじゃよ。これから旅をするわけじゃから仲良くいこうではないか」
「「じゃあ女漁りやめろよ(やめてよ)」」
正直そんなことに金を使い始めたら旅の資金が足りなくなるんだよな…俺達今現在そこまで贅沢できるほど金持ってないし。
旅をしながら資金調達もしないといけないんだよねぇ。
「旅の目的を今一度おさらいしておかんか?」
リアンがそんなことを俺に提案してくるので「確かにな」と言って俺は一枚の紙を取り出す。
旅立つ前に渡された今回の旅の目的を記した一枚の紙。
「まず第一。中央大陸で起きた事件の黒幕を追う。その実態の調査と根本の解決が第一だ。そして、第二にオーク政府とドラゴン政府と接触して協力を仰ぐ」
「どういう意味? 政府が頼めばいいじゃない」
「オーク大陸には長年政府が無いと言われていて、ドラゴンに至っては気難しい性格でなかなか接触できない。だが、オーク政府は最近あるという事が分かってきたんだ。あくまでも推測だが。それを調べて接触するのも俺達の旅の理由だ」
「なるほどの。確信に似たものがあるとみれば良いんじゃな?」
「ああ。とりあえず向こうの大陸に移動してからだな」
見えてきたのは石造りの街並みと薄っすらと見えている対岸のオーク大陸である。
どうでしたか?
この赤鬼のオーガからはいよいよダンジョン攻略もまたストーリーに入ってきますので楽しみにしていてください!
新パーティーキャラも入ってきますので。
では次は赤鬼のオーガ第二話でお会いしましょう!




