故郷を想う 2
相克の教会編第十一話目となります。
今回はジャックとアンヌの会話劇が中心となります。
では本編へGO!
その日の夜更けにアンヌは宿からこっそりと出ていき、一人でこの町にあるはずの小さい教会へと足を運んだ。
大聖堂のような建物からすればまるでミニチュアのような感じではあるが、それでも小さい村に在る分には大きい気がするが、この町はそこそこの大きさを誇る。
そう考えるとやはり小さすぎるような気がするアンヌだったが、この町では教会へと積極的に通う人が少ないのだ。
この小さく三階建て程度しかない石造りの教会も建てられたのもこの町が作られた二百年前であり、それ以降特に改築や増築も無いまま放置されている。
それでも、町に一つしかない教会で最低限でも教会本部が管理している建物なのだから、最低でも神父一人ぐらいは赴任しているはず。
しかし、この教会には誰も居ないのだ。
ある日突然失踪してしまったらしく、今では虫や鳥が住まい代わりにしているぐらいだと教えてくれたのは誰でもない宿の女将だった。
「もう一か月前の事だったかね? 教会にミサに行った町の人が誰も居なくなっていることに気が付いてね? まあ、直ぐに戻ってくるだろうと待っていても誰も戻ってこないから「おかしい」って話になったらしいんだよ。町中で探しても見つからなくてねぇ」
それから今では誰も使わなくなったらしい。
無論町長にも言い、町長も国のトップに直談判まで下らしいのだが、国のトップも実は各町で起きている異常事態として教会本部に訴えていたらしいが、「非常事態につき返答は控える」としか返ってこなかったそうだ。
そういう事で今では人もいない教会を誰も管理しないまま放置が続いている。
アンヌは教会の中へと入っていき、内壁にそっと触れながら壁際を歩いていく。
ごつごつしている灰色の石造りの壁、ボロボロで肌触りは悪いがそれでも掃除している人の好さが良く出ている。
それも一か月の放置で埃が見て取れ、アンヌは少し歩いて自らの左手についている埃を拭う。
すると、教会の入り口から見て左奥に木製のドアを発見した。
教区長の寝泊りする部屋と繋がる小部屋、中を少し開けて階段を通り過ぎ、教区長の寝泊りする部屋まで辿り着く。
部屋のドアをそっと開けて中を覗いてみると、今はもう使われていない木製のベットと木製の机と椅子と天井にもう点灯しない灯だけが残っている。
教区長が読んでいた教会の聖典も、他に在ったはずの此処に人が住んでいた署名は全て取り払われていた。
「なんか…呆気ないな…人の住んでいた痕跡ってこんなに簡単に消えるんだね」
正直に言えば少しショックだったりする。
教会から人が消えるという結果が、それは最後のギリギリまで信じていたアンヌ自身からすれば本当にショックな事。
アンヌは此処の教区長と少し話をしたことがある。
人の良い気さくな老人で、小さい教会をたった一人で掃除からミサまで色々熟していた。
別段嫌いではなく、この教会では寝泊りは出来ないので例の女将の宿に泊まっていたが、それでもこの町に来れば顔をだしているような関係である。
「人が居なくなって一か月だったか? あっという間に寂れてしまったな」
「来たの? アンタは来たこと無かったでしょ? 教会嫌いの元勇者さん」
「皮肉のつもりか? まあ、否定はしないけどな。俺はどうにも教会の考え方自体が納得は出来なかったしな。俺の村は教会は無いし。昔っからそういう部分は疎い。学校に通っていたころはむしろ毎日ミサに行く人間の気持ちがまるで理解できなかった」
「そういえば週一で行われていたミサもアンタ何度か逃げていたもんね? 担任もすっかり慣れてたし。まあ、アンタがミサから逃げて何をしていたのかなんて分かるけどさ」
暇があれば人助け、助けてと言われなくても助けに行くほどのお人好しが、ミサを断ってでもすることなんて一つしか無かった。
ジャックはケタケタと笑いながら一番後ろの席に座ってしまう姿を見てため息を吐き出しながら一番前の席に座り込む。
アンヌは木製の長椅子の背もたれに体重を掛けながら椅子の上で体育すわりをする。
「今更教会を信用していたわけじゃ無いだろう? それとも信じていたのか? 教会を」
「教会に勤めていた全ての人が悪かったわけじゃないでしょ?」
「でも、違和感を感じてしなかったとは言わせないぞ。ある程度の人間は違和感を、不信感を常に感じていたはずだ。よっぽどの熱心な信者でもない限りは誰もが感じていた違和感と不信感」
「………」
「これはその証明だろう? 今更さ」
アンヌだって違和感を全く感じていないわけじゃ無く、常に感じていた感覚は外の大陸を回っていく内に確信に近くなっていった。
教会は設立当初より何処か間違っていたのかもしれない。
そう感じるようになったのだ。
「はっきりさせたいとは思うわよ。でも、それでも私は少し怖い。今ここで教会の裏をハッキリと暴けば世界は纏まるチャンスを得る。でも、その代わり多くの国は困る。きっと相当なレベルの暴動が起きると思う。もう、置きかけている」
実際ディフェンダーからの情報でそういう話を幾つか仕入れているジャック達、教会に不満を抱く人は居る。
教会が今まで強引に抑え込んでいたモノが今現在吹き出しかけているのだ。
そんな状態で暴かれればどういう状況になるのかなんて誰もが予想できる。
「そうなれば中央大陸がどうなるか。それこそ他の四種族との話し合いどころじゃ無いわ」
「それを何とかするのは教会に依存しなかった国々だろう。無責任かもしれないが、国のトップじゃない俺達じゃどうすることも出来ない。今この瞬間も邪神の核を手に入れた者達が動こうとしている。どのみちなんだ」
どの道このまま突き進むしかないとはアンヌだって理解できている。
それでも、寂しいという本心を隠すことがどうしても出来そうになかった。
黙り込むアンヌにジャックは立ち上がりながらアンヌへと近づいていく。
「今回の事件がどんな形で終わっても、一度故郷に戻ろうと思うんだ。村にさ。アンヌも来るだろう? ドライ最高司祭をぶん殴って、戻ろうぜ」
「何よ…ぶん殴って戻るって」
「良いだろう? 俺達にはそれぐらいの権利はあると思うんだけど…難しいことは今は考えても仕方が無いさ。目の前の事を一つ一つクリアしていこう。そこから始めるしか無いんだしさ」
「…はぁ」
「今は四種族を信じるしかない。俺達に出来ることをしよう。それしか無いと思わないか?」
「そうね…それしか無いわ。良いわよ。分かっていたもん」
ジャックが隣に立った時点で立ち上がるアンヌ。
二人は教会の出口へと向かって歩いていく。
「教会がどんな決着をつけても俺達はもっと良くなると信じよう。もし良くならなかったら…」
「ならなかったら?」
「また…戦うだけさ」
ジャックは教会のドアをしっかりと閉めながらそう言った。
どうでしたか?
次回以降は教会本部のある街へと向かう道中のお話となります。
では次は第四章相克の教会第十二話目でお会いしましょう!




