君想う ~繋がる約束~
間幕休息は嵐と共に十四話目となります!
今回はジャックの人間関係が一気に動きます。
では本編へGO!
商店街を通り過ぎて大富豪が使っていたとされる豪邸跡地にあるとされる庭園へと足を踏み出した。
石造りのアーチを潜り両サイドに赤色のバラがまず沢山並んでいる場所を横切りながら中央にある色々な花が綺麗に整えられている場所まで移動する。
フェンが知っている花の種類を教えて貰いながら軽く一周してから昼食がてら近くのベンチでフェンが用意したお弁当を頂くことになった。
照り焼きチキンのサンドイッチと卵のサラダのサンドイッチが交互に詰まっているお弁当箱の中身を半分ほど頂き、ハーブティーを飲んでからお口直しをして改めて息を吐き出す。
「ジャック様は休息が終わったらそのまま中央大陸へと向かうんですよね?」
「そうなるな。まあ、各大陸の話し合いが今話し合われているからその結果次第で各種族ごとの動きが変わるだろうな」
「中央大陸って私は良く知らないんですけど…何が特別なんですか?」
「特別と言うか…あそこは『教会』という組織が結構なレベルの権威を握っていてな。そこが所謂外の種族は全面禁止を訴えているんだ。大体の国はそれを守っている」
「じゃあ。ジャック様が行っても…?」
「やり方はある。俺やもう二人の仲間はそれを知っているんだ。教会に直接乗り込んででも真意をただす。四種族の願いを聞き届ける。同時に各大陸で動いていた裏の連中がどうするのかを知る」
「ジャック様達だけで大丈夫なんですか?」
「さてな。無茶はしないさ。教会相手に戦争なんかしても得はしないしな」
照り焼きのサンドイッチを一口食べながらジャックは中央大陸の情勢について軽く話した。
「中央大陸は古くから小さい国の争いごとの繰り返しだ。国境もその都度変わるしな。一度大きな帝国国家が支配したこともあったが、長続きしなかったらしい。種族内での争いごとが酷い。だが、そんな中央大陸の中でも教会の権威を最近嫌う連中が多い。そういった連中を味方につける」
「ジャック様はその役目を負うんですね…なら、その前に今日一日楽しんでくださいね」
食べ終わったお弁当を片付けてフェンが立ち上がりジャックへと片手を差し出しして微笑む。
ジャックは少し驚いた顔をしながらその手をとり、立ち上がる。
「私はジャック様に無事に帰ってきてくれとは言いません。だから…思い出してくださいね。此処にジャック様を持っている人間が待っているという事は」
「…ああ。思い出して帰ってくるよ」
フェンとジャックはそのまま庭園を後にする為に外へと向かって歩き出したわけだが、そんな中フェンとジャックは隣の広場での騒ぎを見つけた。
「フリーマーケットですね。ここ一週間ほど行われていたと聞きました」
「そういえば仲間の一部が売りで行くっと言っていたな。まあ、冷やかされても嫌だから近づかないようにするか」
「そうですか? じゃあ、このまま海辺の方に移動して観光名所を回ってみますか? 海辺に結構あるんですよ?」
「そうするか」
そう言いながらジャックとフェンは近くのバス停からバスに乗って海辺まで移動し、海辺をなぞるように歩き出す。
灯台、石造りのオブジェ、海の上に作られたちょっとした公園などが遠くにもはっきりと見えた。
最初は灯台前まで移動してそこで軽く写真を撮ったり、上まで登ってみたりしながら再び下まで降りる。
「ジャック様は灯台って昇ったことは?」
「無いな…海に行くこと自体が非常に少なかったはずだし、むしろ山を駆けずり回るような少年時代だったから」
「クスクス…想像できます」
「なあ?」
「はい?」
「ジャックと呼び捨てにしてくれないか? 元々様って呼ばれること自体が好きじゃないしな。何というか、君には呼び捨てにされたい。様とかさんとか謙虚にされると傷つく」
「えっと…じゃあ……ジャック。この後例のオブジェまで行ってみますか?」
「そうするか…」
二人で歩いてオブジェまで移動しつつ、途中に見える色々な鳥や魚などを指さしで楽しみながら辿り着く。
大きな石造りのアーチに鐘が付いており、ジャックとフェンは何気なくそ鐘を二人で鳴らしてみると、最後に二人はそれがカップルで行うものであると分かり苦笑いを浮かべた。
「そういえば学校の友人がそんなことを…知らなかったんです!」
「いや…大丈夫だよ。良く考えれば分かりそうなことなのにな…まあ、良いんじゃないか? 別に嫌じゃ無いだろう?」
「はい…でもジャックは?」
「俺も…君は嫌いじゃないしな」
少し照れ隠しで顔を逸らしながらそういうジャックにフェンは少しうれしそうにしながら二人は三度歩き出す。
少し太陽が傾き始め、夕方を迎えようとした所でジャックとフェンは海の上に作られたような公園に辿り着いた。
水平線が見える場所まで歩いて移動し、二人で水平線を見ながらボーっとしていると、ジャックが意を決したように聞く。
「なあ、ナーガって男性が妊娠するんだよな?」
「ええ。だからか、男性は結婚する際に結構躊躇うそうですよ。何せ、妊娠してから二年目には魔力が上手く扱えなくなりますから」
「そうか…あまり妊娠と言うのが想像できないからさ…痛いんだよな?」
「そう聞きますね。私達ナーガの女性がむしろ妊娠の痛みが良く分からないんです。私は弟が居て、その弟が生まれた時にお父さんが痛そうにしていたのを見ただけなので」
「その代わり母親はある程度子供が大きくなるまでずっとそばに居るんだよな?」
「はい。子供の時は魔力を作れないので」
ジャックは何となくの予感をずっと感じていた。
多分半年以内に今戦っている事件は解決する。
邪神の核を奪った連中が動くのにもう一か月もかからない、だからこそ休暇が終わり次第すぐに教会へと向かわなければならない。
多分、教会本部で前任の勇者とも決着をつけないといけない。
同時に、フェンが今までの経験上、男性と知り合っては去って行く際に寂しさを抱いているのも事実。
彼女を安心させる事、だが、その覚悟を自分が持てるか?
それをふと考えた時、ジャックは彼女の方を向く。
「気休めな約束は出来ない。君にそんなことを言っても安心できない。君を安心させたくて今日一日一緒に過ごそうと思った」
「分かっていました。あの事件の後で不安になっていた私の為にって…、でも大丈夫です。少し気が楽になりました」
「駄目だ…君に安心して欲しい。君はあんな男でも優しく接しようとした。俺はそんな君だから信用できると思った。好きであるという言葉の意味はまだ良く分からない。だが…そんな俺と夫婦になってくれないか?」
「え? でも…」
「その証明として…その証拠として一年以内に役目を終えて絶対に戻る証明として…君の子供を俺に宿させてほしい」
「………私で良ければ」
二人で手を取り合いその場を後にした。
ジャックはフェンを自宅まで送り、そこで二時間ほどゆっくりと過ごした後、仲間達には夕食は済ませたと連絡してから帰ることにした。
フェンと他愛のない会話を連絡し合いながらホテルまで帰ると丁度ロビーに戻ってきていたアンヌが待ち構えていた。
「遅かったわね?」
「お前こそ…」
「彼女と楽しんできた? それとも…? 何? その微妙そうな顔…本当に何かあった?」
ジャックはアンヌにだけ喋った。
「そっか…じゃあそのお腹の中には居るかもしれないのね? 彼女との子供」
「まだ分からんがな? だから…」
「ええ。一年以内に決着をつける」
「だから悪いが…」
「はぁ…休暇も終わりかぁ~」
「悪いって言っているだろう? 一年以内に決着をつける。付き合ってくれるか?」
「仕方ないわね…!」
どうでしたか?
次回で間幕は終わり、その次の第四章へと移ります。
では次は間幕休息は嵐と共に最終話でお会いしましょう!




