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巨木と自然の街ガーナンド・ロウ 4

ガーナンド・ロウの自然と一体化しているという部分と共にこれからジャックが人生を過ごしていくからこその思いやり、最後には帰ってくる場所なのだと分かるからこそここで時間を掛けて話を作ろうと思いました。

しかし、木の中に店やホテルや病院があるというのは少々罪深い気が…本編へGO!

 木で来た大きなナーガに合わせた大き目の家、家具まで全てが木で出来ており、気の良い香りが玄関から漂っている気がしたアンヌ。

 ナーガは玄関で靴を脱ぐ習慣が無いとは分かっていても、つい靴を脱いでしまいそうになるアンヌは慌ててそのまま上がり込んだ。

 一部始終をしっかり見ていたジャックは心の中で浮かび上がった言葉をぐっと飲みこんだのだが、アンヌにはお見通しだったようで鋭い睨みが返ってきた。


(何も言っていないけどな。まあ言おうとは一瞬企んだけどさ)

「思っていること駄々洩れだからね。どうせ靴脱ごうとしたって指摘しようとしたんでしょ?」

「バレていたか。でも口には出さないように心掛けたろ? 指摘しないでいてくれたら終わっていたと思うぜ」

「顔に出ているって言ったでしょ? その兜からも漏れ出るぐらい悪意が見えました!」

「玄関で痴話喧嘩せんでくれんかの? 邪魔じゃぞ」

「「痴話喧嘩なんてしてない!!」」

「そこは合うんじゃな…さっさと中入ろうではないか。ナンパし続けて疲れたぞ」


 リアンが居の先にと廊下の右側にあるドアを開けてリビングへと入っていく。

 アンヌも後から続いて部屋へと入っていくと、アンヌはリビングの天井に着いている明かりがふと気になってしまった。

 一般的な蛍光灯ではない淡くそれでも強く放たれている白い光、その光を放っているのが人の頭サイズの丸い物体。

 それが五つほど綺麗に五角形を意識して並んでいる。


「これって…電球?」

「ムロムっていう藻らしいぞ。通称『灯藻』っていうらしくて、ガーナンド・ロウでは一般的にこの藻が使われている。空気を流し込むと明るくなって水につけておけば十年はもつ。十年ごとに中の藻を交換するんだって」

「ほほう。これが噂のムロムか…話には聞いたことあるわい。ナーガ大陸の浅い海辺にだけ生息し、ナーガでは大量にとれるうえ自己栽培している人もおるとか」

「そうなんだ…見たこと無いな。本当にナーガって自然と一緒に生きてるんだ」

「首都とかは人工物が多いよ。特にロウ族は自然と一緒というイメージが多いだけだと思う。他の一族では違う感じだそうだ。ナナ族は人工物ばかりだって聞くし」

「まあ、全部一緒じゃと面白くないじゃろうし。じゃが、そうやって見ると色々見てみたい気がするの」


 リビングは一番奥にキッチンがありダイニングが入り口からでもよく見え、灯の下には大き目のテーブルと四つの椅子が綺麗に並んでいる。

 入って右側に大き目のガラス張りの窓、そこから庭へと繋がっておりジャックが言っていた通り庭には大き目のリリンの実がなっている木が一本生えていた。

 アンヌは庭への窓を開けて外へと歩き出し、リリンの実を一つ摘まんで取る。

 しっかりと熟れているリリンの実を一口シャリという気持ちのいい音と共に口の中へと運んでいくと、しっかりと甘みが口一杯に広がった。


「甘い! 凄くしっかりと甘い! 残るようなしつこさも無いし生の方が好き!」

「それは良かった。アンヌの好みに合うだろうとは思ったんだよな。やっぱり合ったな」

「儂は遠慮しておこう。そこまで好きじゃないしの。それより渋めのお茶でもないか?」

「渋茶で良いのか? 結構渋めな奴を貰ったけどさ? アンヌはリリン茶で良いか?」

「リリン茶? それってリリンで作ったお茶?」

「正確には乾燥させたリリンの葉と実を磨り潰したものをお湯を沸かして作った奴。この辺りじゃ自家製する人もいるらしいけど、俺は流石に買ったけどな」


 アンヌは「じゃあそれで」と言ってもう一つ口の中へと放り込んでから家の中へと戻っていく。

 ジャックは三つほどマグカップを用意して、渋茶の入ったティーパックを一つ、リリン茶のティーパックを二つ用意してからお湯を入れる。

 渋茶は濃い茶色へと変わっていき、リリン茶は薄めの青色へと変色していく。

 それをテーブルの上へとそっと置いている間、アンヌはリビングを見て回っていた。

 最低限の数を用意してある食器類の入っている食器棚、電話機などが置かれている小棚、だがまだ住み始めたばかりだからか壁には何も飾っていない。

 それがいっそ寂しさを醸し出している。


「なんか寂しい壁だね…絵でも飾ったら?」

「って言われてもね。基本あまり飾るという習慣が無いし。服でも基本は似合えば何でもいいぐらいの気持ちだからさ」

「これじゃから男子は…」

「と元男が何か語っております。まあ、ゆっくりと飾るさ。何も考えていないけど」

「一生飾らない気がするね。まあ結婚でもすれば飾るか」

「逆を言えば結婚しないと飾らないという事じゃな。寂しい心をしておるんじゃな?」

「新術をその身で試してみるかエロ爺。それよりもういいぞ」


 ジャックが用意したマグカップが置かれていた場所、入り口から見て右奥の席へと座ってマグカップに入っている青色のお茶をそっと飲む。

 マグカップから出ている湯気はまだこのお茶が熱いことを証明してくれており、「フーフー」と少し冷ましながらそっと口に運ぶと、少し熱いお湯に「熱っ!?」と口を話した。


「熱かったか? 猫舌だっけ?」

「う~んどうだろう。でもあまり熱い飲み物は飲まないかも。冬でも基本アイスを注文するし。時々外で飲むときとかは寒いから頼むけど…」

「それは猫舌なのか? それとも暑がりなのか? 爺は元年寄りだから大丈夫だろうけれど」

「儂を舐めておるのか? 元々熱いのは大丈夫じゃよ」

「年を取ってからはもっと大丈夫に放ったろ? 冷たい飲み物より熱い飲み物を注文するだろ?」


 否定しないリアンに対してアンヌは更に冷まそうと何度も息を吐きかけて人肌程度の温もりになってから飲み始める。

 木の実の時よりは甘みを感じないが、それでも乾燥したリリンの実の甘みをはっきりとした形で感じることが出来、内心「これはこれで…」と満足した。


「よくそんな甘そうな飲み物を飲むのう…理解が出来ん。若い者は良く甘いものを飲み食いするが…」

「今はドラゴン族の若い者だっていう自覚無いな。このエロ爺は。種族転生しているんだからいい加減ドラゴン族に合わせろって」

「そうは言うがな? 儂はお前さんとは違ってまだドラゴン族とは逢っておらん」

「? リアン様でも会ったことは無いんですか? てっきり国王時代に会ったことがあるのかと」


 それはジャックも思った様で「そういえばそうだな」とリアンの方をまるで疑うような目で見る。

 リアンは首を横に振って否定した。


「無いのう。御先祖様は会ったことがある様じゃが、儂の代では一度もな。ドラゴン族は誇り高く基本見下す傾向があるからの。あそこと同等に話が出来る種族なぞ基本ナーガぐらいじゃ」

「へぇ~流石ナーガですね」

「適当言っているんじゃないのか? このエロ爺。ひたすらあちらこちらでナンパしやがって。噂になって俺が困ることになったらマジでシバク」

「そんなことよりじゃ。この町は橋が変わっておるよな? そのまま木が生えているようなデザインじゃが。あれはああいう育ち方をしたのか? それとも作っておるのか?」

「露骨に話題変えやがったな。良いけど。どうせ何を言っても意見を変えないんだろうし。あれはああいう育ち方をしているんだ。この町のテーマは『自然』だからな。ある程度はそのまま自然のままに作っている物は多い。この町の街灯を見たか?」


 ジャックの言葉にアンヌは記憶を紐解いてみると、街灯なんてあっただろうかと不思議に思う。

 一定間隔に植えてある細い木が一つだけ実をつけてあるだけ、アンヌは「まさか」という思いで聞いてみた。


「あの植えてあった木が街灯なの?」

「ああ。あのつけている実は夜になると明るくなるから街灯になるんだよ」

「そんな所まで自然にしておるんじゃよな。あれは儂も驚いたわい。アンヌも夜に少し見てみると良い。なんならあの大きな巨木の中の明かりも全部自然そのままの木の実じゃぞ」

「ええ~そこまで?」

「このガーナンド・ロウは基本『自然そのまま』だからな。それは出来ない部分は人工の物を使うけどさ。家とはか流石に全部自然は出来ないから作るけど。でも不思議と田舎っぽさは無いだろ?」


 それはアンヌも不思議な感じがしていたが、確かにこの町に田舎っぽさを感じていなかった。

 別段ビルディングが立ち並んでいるわけじゃないし、繁華街を発見したわけじゃないが、それでも田舎っぽさが無いのは建物が密集している場所が多いからだろうか?


「高い建物はあの巨木だけなんだけど、建物自体は綺麗に豪華に作られていて、広い町に建物が密集しているんだよな。この辺は巨木の葉で太陽光が遮断されているから基本空気が冷えているし。結構過ごしやすい。真冬は寒いらしいけど…」

「でしょうね。でも確かにこの家も結構大きいし豪華よね? もしかして、家の回収もこの町が勝手に?」

「そうじゃろうの。空き家すら改修の対象じゃからな。まさかジャックが来ると分かって随分前から改修予定を立てていたわけじゃあるまい。ジャックがナーガじゃと知っておったのはドライ最高司祭だけじゃからな」

「そうですね。あの人は「他には言っていない」ってはっきりと言い切っていましたし。多分情報漏洩を恐れたんでしょうけど」


 要するにジャックが『勇者』でありながら『中央大陸出身のナーガ』だという立場を隠したかったのだ。

 ヒューマン族は一般的に他種族を好まないうえ、過ごしていることが分かれば扱いが酷い。

 ジャックですら『元勇者』という肩書を持っていながらも『大陸追放』されており、その上今や『嘘つき勇者』などと罵倒されている現実。


「だからこそじゃな。この町は改修などから全部町の政府が全部担当しておるんじゃよ。費用から全額負担か?」

「ああ。えっと…五十年ごとに改築らしいな。注文すれば早くてもやってくれるぞ、リフォームはタダだし」

「町や大陸ごとにそういう部分は違うよね…」


 アンヌはこのナーガ大陸を見て回ってみたいと思った。

どうでしたか?

まだまだ続きますのでご了承ください!

では次は二十話でお会いしましょう!

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