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底なしの気持ち悪さを抱く者

間幕休息は嵐と共に十話目となります。

今回はジャックがトラブルの渦中へと向かいます。

では本編へGO!

 階段を上って行くジャックの目の前に骸骨姿の騎士の魔物が三体ほど錆びた直剣と盾を装備した状態で徘徊しており、ジャックは相手が気が付くよりも先に走り出して骸骨の頭を瞬時に切り裂いた。

 一体目がやられたと気が付いてしまった残り二体が素早く動きを見せ、一体目が大きく剣を振り上げてからジャンプ一つで切りかかるのだが、ジャックはそれよりも早く胴体を真っ二つにして見せる。

 しかし、そんなジャックの攻撃の隙間を掻い潜るように残りの一体が攻撃を仕掛けるが、ジャックは最後の一体目掛けて剣を飛ばす。

 頭部に着弾した剣は相手の頭部を吹っ飛ばすには十分だった。

 そして小太刀を回収してから再び歩き出すのだが、イマイチ最奥までの道が良く分からない。

 真直ぐの一本道なら迷わず走って行くのだが、分かれ道が至る所にある上に上下にと道が続いていくので素早く進むには確かめながら進むしかない。

 あまり長いしたいとは思わないジャックは間違えたら急いで戻り、再び進んでいくを繰り返して、道を迷わないように魔力を使ったマーキングを施してを繰り返しながら進むこと三十分で漸く半分まで辿り着いた。

 幸いなのは然程魔物が強く無いという事であり、苦戦することなく先に進むことが出来るわけだが、空間そのものがまるで法則性が無いぐらいに適当な感じを受けてしまう。


『さっきも言ったけどこの魔物自体は然程強くないわ。この魔物は取り込んだ人間に依存するから』

「要するに取り込まれた人間が救出を拒んでいる? いや…違うか。だったら魔物は強いはずだ。逆なのか?」

『そうね。取り込まれた人間は救出されることを望んでいる。でも、その反面自分自身の力では脱出できないと諦めている』

「助けることが面倒ごとにならないよな?」

『さあ? 助けてから考えれば?』

「他人事みたいに…」


 アンヌは声だけで「他人事だもん」と返すだけで、何か起きた際に責任を取ろうとは思っていなかった。

 だからこそ最奥まで辿り着くのにそこまで時間は掛からなかった。

 最奥はちょっとした庭園のような場所になっていて、綺麗な草花と石造りの噴水やそれを囲むように作られている道。

 そして、その一番奥に確かに存在しているのはしゃがみ込んだままピクリとも動かないナーガの女性。

 ジャックと同い年ぐらいの女性なのだが、問題なのはもう一人男性がその彼女を抱きしめているという事だった。


「これは…どういう状況だ? どっちが?」

『推測になるけど。女性が被害者。男性が加害者ね。そして、これも推測だけど。男性は幽霊みたいな存在ね。魂だけと言う感じ。まあ、この手の魔物や絵画にはよくあるパターンの一つよ』

「おお。聖女らしいことを」

『私は聖女よ! 多分あの女性を無理矢理取り込んで閉じ込めているんだろうけど。脱出できないのはあの男性を想っての行動かしら?』

「ぱっと見首を絞めているとかは無いしな。抱きしめているとはいっても、遠目に見てもそこまで強固な抱きしめじゃないし」

『でも、彼女の表情は苦しんでいるんだよね? なら、彼女自身何か責任を感じて閉じ込められていることを受け入れているが、正直逃げ出したいという感じかしら?』


 ならジャックには助けないという理由は無いと思いそのままスタスタと近づいていくと、男性の方が先に気が付いたのか露骨な怒りを態度に表しながら全身に殺気を放ちながらジャックを睨む。


「近づくな!! 彼女は僕のモノなんだ!!」

「じゃあ、お前は彼女の彼氏か?」

「………私は…」

「そうだ!! 彼女の全ては僕のモノだ!! 彼女の髪も! 彼女の体も! 勿論心さえも!! ずっと此処に居れば僕達は一緒に居られる!!」

『ストーカーの考え方の典型的なパターンよね?』

「君はどうしたい? このストーカー男は君の彼氏でずっとそばに居たいのか。それともこの男は君の彼氏じゃないのか? そのうえで一緒に居たいのか?」

「…私が殺したようなものだから」

『それは状況によるわね。少なくとも貴方が決めていい話じゃないわ』

「黙れよ!! 彼女は僕の…!」

「お前が黙れよ!!」


 ドスの聞いたような腹の底に響くような声が男の行動を一瞬で止めた。

 ぱっと見の体つきにジャックとの差は見られないが、そもそもナーガの肉体の強度も魔術や魔力の才能が強く出る。

 十将軍に所属している人間と所属していない人間とはそもそも同じ生物としての差がある。

 ましてや、死んでいる人間と生きている人間では差は致命的だろう。


「俺は彼女に聞いているんだ。何かあったのか話せ。俺がどう動くのかはそれ次第だ」


 彼女はおっかなびっくりと話し始めた。


 彼女はこの街で生まれ過ごしてきたナーガ族の女性だったのだが、言ってしまえば美人と言うには自らは低く評価していたような普通の女性。

 ジャックから見てもとびぬけての美人には見えないが、かといって普通の女性かと言われると確かに疑うレベルでは美人である。

 一つの街で過ごす分には自慢しても良いだろうとはアンヌも思う。

 そんな彼女はこの美術館でバイトをしながら画家としての勉強を近くの大学で学んでいた。

 朝アパートから起きてそのまま大学に行き、そのまま放課後は美術館で働いて帰る。

 しかし、この街は良くも悪くも観光都市。

 基本街にいる人間の大半は観光客と言えるし、港町という事もあり船での観光客の来訪もまた多い。

 そんな中に一人の男性は彼女に惚れ込んだ。

 別に可笑しいことではないと思う。

 たまたま訪れた観光都市で綺麗な美人に恋をしてしまうなんて惚れっぽい人間なら一度は起きる事だろう。

 問題なのは、彼自身がストーカーの気質が異常なほど強かったことだろう。

 近くのホテルに泊まり、彼女のアパートを突き止めてストーカーに明け暮れたわけだが、流石に鈍かった彼女も一か月、二か月と続くとストーカーの存在に気が付いて警察などに対処を願い出た。

 警察は男に「これ以上のつきまとい行為を止めるように」と厳重注意を下らしいが、男はその場では「分かりました」と大人しく従った振りをして一切やめなかった。

 彼女が何度も何度も警察に訴えかけたわけだが、男は警察の前では絶対にヘマを討たなくなったのだ。

 バレない様に、魔術を上手く使ったストーカー行為に彼女の精神はすり減ってきた。

 そんな中で男の行動に限界を感じた彼女は本格的に移住を考え始め、美術館の館長に相談していた際、男は彼女の次の就職先を調べようと美術館に侵入した。

 彼が侵入してもすぐに分かるようにと夜中に相談に行った事がこの際悪く作用したのかもしれないが、男は警備員に捕まったわけだ。

 彼女と対面することになったが、彼女はストーカー行為に走る男を強く拒絶した。

 ストーカーをする人間がこの程度でめげるわけが無い、しかし、そんな中警備員の腕を振りほどき女性につかみかかろうとした男の体を女性は少々強めに突き飛ばした。

 そこからは語る間でもないだろう。


 そう…男は打ちどころが悪くそのまま命を落とした。

 しかし、この一件は警察は「正当防衛」とし問題にはしなかったそうで、この男は他の街でもトラブルばかりを起こしていたそうだ。

 そこまで聞いてジャックの意見はまとまった。

どうでしたか?

次回はトラブルの解決回となります。

では次は間幕休息は嵐と共に十一話目でお会いしましょう!

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