トラブルは美術館で
間幕休息は嵐と共に九話目となります。
今回はジャックとアンヌがトラブルに巻き込まれます。
では本編へGO!
ジャックは何故か怒っているアンヌと共に少々小綺麗なレストランで簡単なフレンチを食べたのち、二人でそのまま美術館へと足を運ぶために傘を差してそのまま歩いて三十分ほどにある美術館へと移動した。
大きな通りを歩きながらアンヌ遠目に見えてきた角ばった大きな建物をジッと見つめ、同時に先ほど話に出てきた美術館を比べてしまう。
こうしてみると中央大陸の美術館より大きく観光客を意識していることがはっきりとわかり、同時に学校近くにあった美術館がいかにローカルな感じだったかが良く分かった。
「大きな美術館ね。ナーガ大陸で一番大きいの?」
「いや…どうだったかな。俺もずっと住んでいるわけじゃないが、確か大きな美術館が他にあると聞いたことがあるけどな」
「そうなのね…中央大陸にもあれくらい大きい美術館が在るのかしら?」
「在ったな…まあ、そこまで大きいイメージは持たないけどな。博物館とかとは違い基本美術館は研究などの施設とは無縁なはずだし」
傘を持った手越しにジャックを見るアンヌは「そういえばそうよね」と頷く。
「博物館は学芸員などが働きながら研究なども同時に行えるようにバックヤードには様々な資料があるとは聞くが、美術館はその名の通り美術品を飾って見てもらう施設だ。無論博物館もそうだが、博物館はそれ以外もあるしな」
「でも、あの美術館は大きいわね。まだ大きい美術館が在るって聞くし」
「あの美術館は禁止指定を受けている美術品も保管されているらしいぞ。まあ、流石に人の手につかないようにセキュリティばバッチリらしいけど」
「信頼できないわねぇ」
ジャックの言葉にアンヌは疑わしいという声を出しながら美術館の中へと足を入れていく。
中は広い円状のエントランスになっており、三階までが吹き抜けの状態になっている。
受付の人に大人二人分の金額を支払おうとした際、アンヌの方を見て「大人?」と疑わしい目をしていたが、ジャックが説明するのだがホビットだと勘違いしたらしく、その内容にアンヌが今度は激怒した。
アンヌを宥めながら「とりあえず」と言いながら大人二人分を購入してからジャックは建物の中へとアンヌを強引に連れて行く。
アンヌ自身は全く納得がいっていないらしく「ギャー! ギャー!」と叫んでいるのだが、ジャックはそんなアンヌを宥めるのに無駄に時間を掛けてしまった。
「全く…騒ぐなよ。受付の周りの人達が好奇な目で見ていたぞ。恥ずかしいだろ。さっさと見てみるぞ。何処か見たいエリアはあるのか? 絵画が見たいとか石膏像とか色々あるだろう?」
「知らないわよ。全部見るの。私美術品とかよく分からないし」
ジャックは内心「なんでこいつは此処に来たんだ?」と本気で不思議に思ったわけだが、アンヌが気まぐれで行動すること自体は決して珍しいことではなかったので、気にしないようにすることにした。
入ってすぐに大きな半裸の女性の石膏像がお出迎えしており、アンヌは「いやらしいわね」と小声でつぶやくのをジャックは「恥ずかしいから止めろ」と止めたら、アンヌはあまり興味が無かったらしくスタスタと奥へと向かっていくのだった。
「男は美術品を書くときにどうして裸の女性なのかしら?」
「女でも作るんじゃないのか? まあ、そもそも昔の芸術家で女性とか聞いたことは無いが」
「でしょ? そもそも女性は男の半裸を作りたいんじゃない?」
「偏見だ。止めなさい。何を芸術ととるかはその人の個性だろ? リアンが芸術とはとか聞いたら女の裸を思い出すぞ」
「あれは中身がエロお爺ちゃんだから良いのよ。アンタは好きなんでしょ?」
「好きと言うわけじゃない。別に暇なら観光がてら見ていくことは多いな。博物館とは違って勉強とは必要はないしな。気に入った芸術品を見ていくだけだし」
ジャックとアンヌの目の前には風景を描いた厚塗りの絵画を見て回りながらそんな話をして回っていると、厚塗りから次のフロアの間で職員が困り顔をしながら話し合っているのが見えた。
此処で二人の選択肢は二つ。
一つは、ここで無視する。
二つは、話しかけて詳しく聞く。
結局で二人が選んだのは話を聞いてみようという事になり、詳しく聞くとこの美術館の奥にある禁止指定されている美術品の中にうめき声が聞こえてきて不気味がっている職員が居るという事だった。
幸いアンヌが聖女なので一旦見てもらう事になり、二人で奥へと足を運ぶと、中には確かに魔力を宿しているものなど様々だったが、その中でも異彩を放つ美術品が飾られていた。
と言うよりは美術品事態はただの風景画なのだが、その風景が少々おかしい。
一般的な風景がと言うのは綺麗な草原やそのテーマに沿った内容を描くのだが、不気味な空、なのに綺麗な街並みなのにそこには人が誰も居ない、その上厚塗りだったり水墨画の様に見えたりとこれも一貫性を持たないのだ。
「どうやら絵画の世界を作っているみたいだけど。呪いと言うよりは異空間を絵画という形で作り出しているのかしら? 呪いではないわね…でもこれ、人を取り込んでいるわ」
「? それは困るのか?」
「別に…ただ時間経過で出てこないでしょうね。正直なんで閉じ込められているのか分からないけど」
「? それは封印とは違うのか?」
「違うわよ。別に絶対に出られないわけじゃないわ。ただ、この人は出られないように中でトラブルになっているだけよ。中から出してあげたらあとはこの絵画をしっかり封印するか燃やすかすれば良いだけよ」
「燃やすかどうかは職員に任せるとして、これは普通に中に入る分には困らないのか?」
「ええ。私は外にいるわ。何か起きたら困るし」
「起きるんじゃないか!」
「良いから行ってきなさいよ! 私は此処で待っていてあげるから。この中は異世界よ」
「この絵画のような世界が広がっているのか?」
「別よ。関係は無いわ。入らないと分からないけど、関係は無いとはっきりと言えるわ。さっさと行きなさい」
ジャックは渋々と言う感じで絵画の中へと足を踏み込んだのだが、奥はまさしく異世界と言う感じの雰囲気の場所だった。
周りはどす黒く渦巻いており、上も下も右も左も前も後ろも果ての全てが同じ場所に見えて、足場だけが上下左右に広がっている。
壁の無い大きな城や屋敷の中にいるような感じの場所で、その最奥から確かに人の気配をはっきりと感じる。
『ジャック。聞こえる?』
「どうやって話しかけているんだ?」
『聖術の応用よ。アンタは使ったこと無いでしょうね。アンタは単独行動ばかりするから知らないでしょうけど。集団行動する際には必須能力よ。感じているかもしれないでしょうけど、その空間の最奥に多分捕まっている人がいるはずよ。見れば分かるけど、その異空間は所謂モンスターと呼んでも良い化け物の能力が反映されているわ』
「要するに化け物の腹の中か…」
『長居しても問題は無いけど。閉じ込めるという事は何か理由が在るはずよ。本来は別段危険度の高い絵画でもないし』
ジャックは小太刀と大太刀を取り出して歩き出していく。
どうでしたか?
次回はいよいよトラブルの渦中へと進んでいきます。
では次は間幕休息は嵐と共に十話目でお会いしましょう!




