俺と私の始まり 3
間幕休息は嵐と共に五話目となります。
今回はジャックサイドのお話となっています。
では本編へGO!
一体いつアンヌの故郷を気にするようになったのだろうとジャックはふと想う。
思い出すのだ…アンヌにことを気にするようになったきっかけ、それは些細な行動が切っ掛けだったように思うと思い馳せる。
全寮制の学校に通い出したのはジャックが中等部に進学を果たした辺りで、その辺りになるとジャックは母親から離れて行動しても体調を崩さないようになっていた。
学校で学ぶような学術に物足りなさを感じ、同時に運動をソコソコ出来るようになったジャックには全寮制の優秀な学校に通う方が良いと周りからも強く押されたからだった。
しかし、この時期のジャックは別段自分が特殊だという自覚はまるでなく、むしろ周りと自分は一緒でなにも変わりない人生なのだと考えていたのだ。
そんな生活を送る中でジャックはアンヌと出会ったのだった。
身長が異常に高く、他の男子も圧倒的なほどに抜き去る彼女を揶揄うような男子ばかりの世界で、ジャックは「馬鹿だなぁ」と思いながら敢えて無視していた。
別段ジャックは苛めを受けるような人間をわざわざ助けようとはしなかったが、この場合はアンヌと言う女子生徒が苛めに屈するような人間には見えなかったし、実際屈したら流石に助けただろうが、実際はアンヌはそれをグーパンチで解決してしまう。
屈強で女という皮を被った成人男性なのではと思ってしまうほどの力強いパンチ、ジャックは「下らない」と思いながらその場から立ち去ったのだが、それを見ていた男子たちの苛め対象は今度はジャックに向いた。
それを良しとしなかったアンヌは力で解決しようと動き出したわけだが、それをジャックは同じように力づくで解決してしまう。
その時二人の中で「凶暴だな」と言う第一印象が決定的になった。
そんな話をしていたジャックは元の和服に着替えながらそんな話をシャワーを浴びて出てきたディラブに話しかけていた。
ジャックの様に服を着ながらその話を最後まで聞き終えたディラブ、そのまま「それで?」と続きを要求する。
「別に何か共感覚のようなことがあったわけじゃないが、お互いにいがみ合うというか、睨みあうというか…そんなことがしばらく続いてアンヌが聖女だと分かったのは高校に上がった時、同じ時期に俺が勇者であるという事が分かったんだけど、俺はそのまま学生生活を続けることにした」
「? 何故?」
「別に…勇者だからと言って即行動というわけじゃないし、青春を無駄にしたくないという気持ちが強かったしな。厄介な巨大女が居なくなってすっきりしたし」
「そっちが本心か」
「で、高校を卒業して俺は勇者として剣を貰う為に教会本部へと足を延ばした。そこでアンヌと…」
「再会したと?」
「そういう事だ。まあ、再開したからと言って何かあったわけじゃない。ただ、最初に勇者としての行動をする際に戦い方やダンジョンなどのイロハを叩き込まれる際に一緒に行動していただけだ」
「それは何もないとは言わないぞ。ガッツリ一緒に行動しているじゃないか」
「その程度と言うだけだ。でも、その間にアンヌが孤児であると知った」
「だから、お前は先ほどの話通りその町へと行き問題を問題を解決したというわけだ」
ジャックは腕を組みながら「ああ」と言葉を洩らす。
「と言っても別段何か大きなトラブルがあったわけじゃない、小さい小さいトラブルさ。国がきちんと動けば問題なんて直ぐに解決するような些細な問題だった」
「半グレとかいう奴等が町を牛耳っていたという話だったか?」
「その町は貿易と漁業で成り立ってきた場所だったが、半グレはその利益を無理矢理奪い街を牛耳ることで金を集めていた」
「集めてどうする? 集めただけじゃ意味が無いだろう?」
「それを献上金として別の組織に渡していたんだ。マフィア達にな。マフィアは手に入れた金で武器などを調達し領土拡大を行っていた。その結果で多くの関係のない人間達が被害に遭っていた。俺にとってはアンヌの事はあくまでも次いでだった」
「本当にそうか?」
「そうだよ。町のトラブルを知ってしまえばそれを無視することは出来なかった。町の人達は弱く抵抗も出来ないぐらいにな。だから俺は代わりに戦う事を選んだ。そこまで苦戦しなかったしな。人質を取らせないように策を練りながらディフェンダーを頼って上手く一網打尽にし、そのままマフィア達もまとめて逮捕した」
「次いでね…」
「次いでだよ…本当に…ただ、アンヌがあんな孤児院で過ごしながらあんな屈強な人間に育つかねと不思議だっただけさ」
「そこまで酷いのか?」
「酷い。孤児院がではなく町の環境だ。幼い頃に育って育ての親に引き取られるまで結構長い期間そこで過ごしているハズなんだ。それでもあんな正義感が多少強い人間に育つ理由が知りたいとは思ったかもな」
「お前はどうなんだ?」
「俺か? 俺は別に…幼い頃から母親から「男子たるもの優しく強くあれ」と教わったからな…」
ディラブは「ふ~ん」と腕を組みながら関心があるのか無いのか曖昧な返事をしていた。
「まあ、両親の言葉を全て鵜呑みにして生きてきたわけじゃないけどな。でも、己の善良に身を任せて生きてきたつもりだ」
「それで結果的に中央大陸から裏切られてもか?」
「ああ。別にそれはそれでいい。俺は別に見返りを求めて戦っているわけじゃない。結局で俺は自己満足の為に戦っていただけだ。アンヌから感謝されたかったわけじゃないしな。でも、アンヌにとってあの場所を救ったことに意味があったのかは一度知りたいとは思っていた」
それは昨日の態度で分からなくなった気がした。
ジャックはアンヌの表情を思い出しながらため息を吐き出すのだった。
どうでしたか?
次は明日の朝にお話が移ります。
では次は間幕休息は嵐と共に六話目でお会いしましょう!




