俺と私の始まり 2
間幕四話目となります。
ジャックとアンヌの始まりのお話二話目となります。
では本編へGO!
翌日の朝。
ちょっとした嵐に街は見舞われており、窓の外から見える風景も荒々しいものに変貌していたわけだが、その景色をホテルのスイートルームから見ていたアンヌは心底残念そうな顔をしていた。
その直後に起き上がったファリーダは兎柄の可愛らしいパジャマを着こなしながら隣に立ち、大きく開いた胸元に一切気に掛けることなく呟く。
「嵐ですね…風も強そうですし」
「風は朝のうちに収まるらしいけど、雨は今日一日続くみたいだね…はぁ。少しだけ期待していたんだけどなぁ」
「残念ですけど。今日は屋内の施設で大人しくしていた方が良さそうですね。まあ、雨でも楽しめるアクティブなどもあるそうですし。今日は一日そっちに集中しましょう」
「そうだね…しかし…」
「? どうなさいました?」
「そのパジャマ驚いたけど…胸…」
「えっと…? その…何故狩りをする鷹のような目で私の胸を?」
「戦闘していた際もすごく揺れているし…存在感が凄いなぁ~っと。お風呂に入っている時も思ったけど…私も昔はこれとはいかなくてもそこそこ存在感があったのになぁ~」
「そういえば縮んだという話でしたか? …その時にリアン様も確かドラゴン族に変わり果てたと聞きましたが。その辺の話を詳しく聞いても?」
「うん。良いよ。て言ってもお爺ちゃんのお話を私なりに推測しながらになるけど。元々お爺ちゃんの家柄はドラゴン族の血が混じっているらしくて。それを息子が暴走させてドラゴン族化して兵器として利用しようとしたらああなったって聞いたよ」
簡単に説明された話を聞きながらファリーダは昔のお話を語りだす。
「古くからヒューマン族の間では様々な種族の血を混ぜて長寿化を果たそうとしていたそうですが。どれも上手くは行かなかったそうです。肉体の拒絶反応と言いますか。ホビットの血ですら上手く混ざらなかったそうです。それこそジャック様やアンヌ様が唯一のイレギュラーなのだと思います」
「それに対してはジャックが本命で私は次いでだと思っているけどね。まあ、私はまだ信じているわけじゃないけど。あの人が私の父親だという事は。前に言ったよね? 私は両親を知らないって」
「はい。ジャック様からそれとなく」
「うん。知らないんだ。生まれてすぐに孤児院の院長さん曰く玄関にいつの間にか籠に入れられた私が捨てられていたんだって。アンヌという名前もその籠の中に入れてあったらしく、誰がどんな目的か分からなかったけど。孤児院はやってくる子供は拒否しないから受け入れたらしいけど」
「ですが、孤児院は本来里親が見つかったら引き渡すはずですし、それまでの間預かるだけですよね?」
「そうね。私も来たわよ。当時の私は背丈こそ戦ったけど、まあ、綺麗だったし」
自慢げな顔をしながらそんなことを言うアンヌに対して「何処まで本心なんだろう」と少し困った顔をするファリーダ。
しかし、途端に儚げな顔をするアンヌが少しだけ印象的だった。
「でも、学校に通っている間に私は教会の関係者から聖女の資格があると言われて引き取られ、そのまま今の両親は大量の金を貰って私から手を引いた」
「ですが、育てられていたんですよね? でしたらせめて親心というのが」
「中央大陸の中には孤児を引き取ると国によっては給付金みたいなお金が支払われるらしくて、世間体にもいい評価が得られるし、特に困らないから金持ちが引き取ることが多いのよ。実際引き取られて直ぐ寮制度の学校に行ったら育ての親というイメージは無いわね。顔も最初の一回だけな気がするし」
「そうですか…それは悲しいですね」
「どうして? 私はどうでも良いわよ。私の事も正直興味なかったはずだし、ソコソコいい学校に通わせたのも世間体っていうのも分かっているしね。要するに見栄よ。実際教会から聖女として引き渡す際にもお金を貰っているはずだし、特に反対はされなかったという話だから」
「ですが、聖女と言うのは教会の役職でもあるんですよね? でしたら問答無用な気が…」
「いいえ。両親や本人の同意が得られないなら流石に教会も強引なことは出来ないわよ。教会に引き渡せば沢山のお金が貰えるからって引き渡す人がそこそこ多いとは聞くし。その辺りもジャックが教会を嫌がっている理由だから。ジャックは初めて教会本部に行って以降立ち寄ろうともしなかったらしいし」
「ジャック様は勇者としての活動している際も教会に関わろうとは?」
「しなかったわね。嫌だって本人が漏らしていたような気がするし。まあ、あの頃のジャックは小さく小柄な人間だったから、出かけ先でよく子供扱いされたとは不満げにはしていたけど、だからって教会の権威を振りかざそうとはしなかったわ。むしろそれ以外の人脈作りに奮闘していた感じかしら。あの通り基本人脈は豊富よ。彼」
「そうみたいですね」
クスクスと笑うファリーダに「やれやれ」という感じのジェスチャーで返すアンヌ。
「そのくせ一人で背負い気味なところがあるから。それで一人で邪神討伐が出来るぐらいには強いわよ。彼。まあ、だからこそ反省して今は多くの人と共に旅をしているのかもしれないけどね」
「ジャック様とリアン様は追放処分を受けたという話でしたね」
「そうね。中央大陸は異種族を徹底的に追い出してきたから。中にはコッソリと受け入れている国もあるけどね。教会の権威はいらないっていう国はそこそこあるし。でも、基本は教会の権威があると何かと便利だからって法律に組み込んで引き渡す国が殆どよ。だから中央大陸では四種族の知識は非常に低い。一部の人達ぐらいだから」
「リアン様は知っていたという話でしたけど?」
「あのお爺ちゃんは元々そういう国の国王だからね。交流はあったらしいし。まあ、それもどうかとも思うけどね。昔はしたたかで賢者なんて呼ばれていたらしいけど、今は野に放たれた野獣よ。元々性欲は強いって聞いたけど。あの体を手に入れて一番得をしているんじゃないかしら?」
全くと言う顔をするアンヌの声で薄っすらと目を覚ましたメイビットが呆けているのを見ていた二人。
しかし、眠気には勝てなかったようでそのままベットの中へと潜っていくメイビットを見守って苦笑いを浮かべるのだった。
どうでしたか?
次回はジャックとディラブの会話劇へと移行します。
では次は間幕休息は嵐と共に五話目でお会いしましょう!




