俺と私の始まり
間幕三話目となります。
今回はアンヌの過去話の一話目となっています。
では本編へGO!
そのまま近くの雰囲気が良いレストランを探しているが、アンヌの希望に沿うだけの高いレベルのレストランが中々見つからないまま一時間が経過した。
いい加減お腹が空いているのでジャック達は何処でも良いから食べたいと言い出していたが、海の見える少々小綺麗で洋風の海鮮物が美味しく、近場にちょっとした小物を取り扱ったお店がある場所が良いと言い出したのだ。
しかし、そんな都合のいいお店があるわけが無く、特に最後の小物を取り扱ったお店という条件が異様に難しくしていた。
と言うのもこの辺はある程度の区画ごとに雰囲気を合わせる為にお店を合わせているのだ。
レストランが揃っている区画、小物などが出揃っている区画など分かれており、海岸線に近い区画はリゾートホテルや水族館やショッピングモールなど大型施設が揃っているなど色々分かれている。
なのでレストラン街で小物を探すのは此処では難しい。
ジャックの「諦めようぜ」という一言で潔く引いたアンヌ、先ほど見つけた雰囲気が上品なお店へと入って行く。
適当な海鮮料理をテーブルに並べながら大人は白ワインで、子供はブドウのジュースを頼んでから乾杯した。
「なんか色々回っている間にすっかり夜が更けてきたな。誰かさんが異様なほどこだわりを見せていたからな」
「悪かったわね!! ディラブがそこまでお腹が空いているなんて知らなかったの!」
「ディラブだけじゃないぞ。俺達全員お腹が空いていたのにお前が我儘を言ったんだろろうに」
「でも、久しぶりにゆっくりできたのう。まあ今後の事を想えば中央大陸に辿り着けばまた忙しくなるじゃろう。教会の事といい。まだ見ぬ敵の事といい。課題はたくさんじゃからな」
「はい。ジャック様達と戦ったという例の敵はドラゴン大陸では現れませんでしたし。何が目的なんでしょうか?」
「邪神の核と呼ぶべきものを手に入れていたし、何か目的があるような気がするが」
ジャックは腕組をしながら考え込み、リアンはワインを飲みながら「考えるだけ無駄じゃろ?」と言い捨てた。
「何か確証的な証拠を持っておるわけじゃないしな。推測をしようにもこのままでは出来んじゃろ。それに今は休暇を楽しむとしよう。せっかくの美味しい料理が不味くなるぞ」
「そうだね。このムニエル美味しいよ!」
皆で半分ほど食べた所でアンヌが海の方を眺めながらボーっとし始めた。
ジャックが何事かと聞いてみるが、アンヌはアンヌで「別に…」とだけしか答えなかった。
そのまま一行は食事を終えてから隣にある小物や雑貨屋などが並ぶエリアへと足を踏み込んだ。
ホテルの変える前にちょっと見て行こうという話になり、ジャックとアンヌはとある小物店へと足を踏み込んでから十分ほどでジャックはアンヌに話を切り出した。
「どうした? 考え事をしているのは分かるが、思い詰めているようなそぶりを見せないし。何か懐かしい事でも思っていたのか」
「別にって言ったでしょ? 何も…」
「嘘をつくなよ。分かるんだから」
「………分かった振りして私に喋らせるの嫌い」
「嫌いでも構わないさ。だから話してくれ。お前から話してくれないと確信が持てないだろう?」
「………小さい頃の事を思い出していたの。アンタは知っているでしょ? 私が生まれてすぐに預けられた孤児院の事」
「海沿いの街にある孤児院だったな。今は無い」
アンヌが生まれてすぐに預けられた孤児院は今から十年ほどまでに経営難でつぶれてしまい、そのまま今では空き家が残っているだけ。
それをジャックが知ったのは勇者として旅をしていた最中の事、偶々立ち寄った港町がそうだと知ったジャックはアンヌの孤児院へと訪れたが、そこは空き家になっていた。
それをその後再開したアンヌに説明していた際、アンヌは「あっそ」と素っ気ない態度を見せていただけ。
本当はショックを受けていたが、何でもないふりをしていた。
「あそこの食堂には海が一望できるように出来ているのよね。私にとってはそれは当たり前だった。でも私は海が当時は嫌いで…」
「なんで? 泳げなかったわけじゃないだろう?」
「当時は泳げなかったわよ。でも確かにそれは理由じゃない。理由が在るとすれば…大きいから」
「?」
「大きくて何処にも真っ直ぐ進んでいけば分からなくなりそうで。私は当時あの場所に居場所をどうしても考えられなかった。日に日に予算が少なくなっていき院長が必死で予算を探しに出かけるような毎日」
「そもそも孤児院って確か町や村からの寄付金で成り立っていなかったか?」
「………その町は正直良い町じゃ無かった。アンタだって知っていたでしょ? アンタがそれをひっくり返しただけで」
ジャックは当時その町を牛耳っていた半グレ集団を纏めて締め上げてから町を大人しくさせていた。
それまでその町は半グレの所為で金銭的にも政治的にも余裕のない状態だったのだ。
アンヌが久しぶりに帰ってきたときにはまるで変わり果てた前向きな町へと変わっていた。
漁業と海産物を名物にした雰囲気が良い町づくりがされ、誰も郊外にあった小高い丘の上にあった孤児院など気にしていない。
「あの窓から見えた海を見た時にそれを思い出しただけよ。家とは言えないあの場所はもう…」
そこまでアンヌが喋ってジャックは自分の認識とのズレを知った。
「その孤児院だったら復活しているぞ」
「………はぁ?」
「知らなかったのか。そういえばお前がまた去った後の事だもんな」
ジャックは小さいコップの小物を取り出して語りだした。
「お前が去った後近くの町でその孤児院の院長さんと出会ったんだ。孤児院の院長さんは隣町の孤児院に移っていたらしく、あの町が日に日に酷くなっていくのに耐えられなかったそうだ。半グレが野放しにされ、誰も逆らえず、毎日誰かが傷つく毎日。いずれ子供達も傷つく。でも、あの町がまだ半グレに支配される前の誰もが海を愛し、誰もが誇りに持てたあの町を取り戻したいと感じながらも去って行った。でも、俺が町を救った後院長さんはその内容を知り戻りたいと俺に相談したんだ」
「そうだったんだ」
「でも足りないものがある。先ずはお金だ。引っ越しをするのにもお金が居る。そして、町の人達気持ちだ。だから俺が動き回ることにした。一人一人頭を下げて、一人一人聞いて回った結果、皆が孤児院の復活を求めていたんだ。孤児院が定期的に行っていたフリーマーケット。それを楽しみにしていた人も多くいたからな。まあ、お前がまた去った後の出来事だからな」
「…ありがとう」
「はい?」
「何でもないわよ」
アンヌは少しだけ鼻歌交じりにその場を去って行くのだった。
どうでしたか?
次はアンヌの過去話の二話目となっています。
では次は間幕休息は嵐と共に三話目でお会いしましょう!




