何を願い何を想うのか 6
ドラゴン大陸編四十八話となります。
今回はジャックと首相との会話シーンとなります。
では本編へGO!
電車で揺られる事三時間以上が経過し、ナーガ大陸の首都へと到着したジャック一行、ジャック達からすれば久しぶりに見ることになる首都の風景になつかしさすら覚える者もいれば、初めての首都にワクワクする者など様々だ。
ネリビットとメイビットは周囲をキョロキョロと見回し、ファリーダは大人しくじっと遠くを眺めているだけ、ディラブに至っては無表情である。
「その無表情はどういう心境か教えてくれるか? ディラブ」
「いや…興味が無いし。早く終わらせたいなっと」
「じゃあ早めに終わらせてくるから皆はこの近くで待っていてくれ。俺は首相に話を付けてくる」
「一緒に行かなくても良いんでしょうか? 念の為に一緒に話していた方が良いのでは?」
「大丈夫だよ。詳細は常に報告していたから知っているはずだしな。あくまでも個人で受けた指示の最終報告をしておきたいだけだし。リゾートホテルの宿泊許可を貰いに行くだけだから」
「? 宿泊に許可が必要なんですか? 別の指示があるなら従わないといけないしな。その場合俺から首相に話を通しておきたいし。そこのリゾート地は少々難しいから」
「「「???」」」
皆が首を傾げているとジャックは「後で説明するよ」とそのまま歩いて首相官邸へと向かって歩き出す。
バスと電車を乗り継いで目的地である首相官邸である大きなビルディングまで辿り着いたジャック。
出入口を守っている衛兵から敬礼にお辞儀で返しそのまま首相官邸へと入って行く。
エレベーターで最上階へと移動し首相室への大きな木製の両開きの扉をノックすると、中から透き通るような綺麗な女性の声で「どうぞ」と聞こえてきた。
ジャックはそのまま右側のドアを開いて中へと入って行く。
「失礼します。最終報告に参りました」
「その前にありがとうございます。先ほどドラゴン大陸の政府から「会談の日時を確認したい」と連絡がありました。任務ご苦労様でした」
「いいえ。それが自分の初任務ですから」
「フフ。それでは最終報告を聞きましょう。そちらのソファに」
首相の女性と対面になる形でソファに座りジャックはオーガ政府との一連の流れからドラゴン大陸での流れまでを詳細に説明、その後ドライ最高司祭の各大陸の動きと今の所分かっている自分とアンヌとの関係までを説明した。
首相は何度も頷きながら時折考え込むような顔をしつつ最後に「成程」と漏らす。
「そのようなことが。ある程度は詳細に聞いていましたが、ドライ最高司祭の話は初ですね」
「話すべきかとも思いましたが、何せ任務に関係のない個人の範疇なので、ナーガ大陸に帰還するまでは説明しない方が良いかと」
「お気になさらず。正しい判断だったと思います。ドライ最高司祭がジャックのお母様がナーガの血を引いていると理解しその子を完全なナーガの勇者の血にする為に子を作ったというのは確実な情報ですか?」
「分かりません。何せ確かめようがありませんから。中央大陸に帰り母に聞けば分かるかもしれませんが、母がそれを俺に一切話さなかったという事は話したくない理由か、口止めをされていたのでしょうから」
「アンヌ様の体に関する報告では遺伝子の暴走によって寿命が異常に伸びているとありますが…これはナーガの遺伝子が暴走したと?」
「と言うよりはナーガの遺伝子がヒューマンの遺伝に組み替えられ、その最終結果として暴走したとみるべきでしょうね。恐らくアンヌが捕まることも、そこで肉体が危険領域に達することも狙いだったのではないでしょうか?」
「危うい賭けでは? 少なくとも自分の娘を危険に晒す際のメリットとしては…」
「何かしらの安全弁があったのかもしれません。脱走で来たことや、その後も自由にさせている事といい…」
「ナーガの勇者の遺体は全部は回収できていません。武器も含めてね。この大陸にあるのは一つだけ。他の武器も遺体も無いのです」
「では…何処に?」
「分かりません。墓だけは作られていますが、それは作られているだけです。中はスカスカですよ。いずれは勇者として教えたほうが良いだろうと思っていましたが…ドライ最高司祭はその辺りも知っていたのかもしれませんね。貴方を敢えて勇者の剣のある場所まで案内している」
ジャックは腕を組みながらドライ最高司祭の一連の流れを思い出す。
ナーガ大陸には敢えて行かないようにし、そのままオーガ大陸とホビット大陸で勇者の剣制作の依頼を出し、同時に自分の行動の記録をそっと残す。そのままドラゴン大陸では勇者の剣の最終過程の確認と同時にジャック自身を勇者の剣の元へと向かわせて問題を解決させる。
それを遠回しにジャックにやらせている。
「首相はドライ最高司祭がアンヌを遠ざけている理由に心当たりは有りますか?」
「…いいえ。想像することは出来ますし、仮説も立てられますが、それは建てられるだけです。証明は出来ない。ドライ最高司祭は相当慎重に行動しています。ヒューマン族が一人で大陸を巡るには少々危険すぎます。実際歴代の勇者の剣制作は最高司祭クラスと同時に複数人で行動するものですが、話を聞く限り彼は一人で行動しています」
「本来であればありえない事だと?」
「ええ。勇者の項目に関してはナーガですら詳細は知りません。ドライ最高司祭に確認を取るしかありません。やはり中央大陸に向かうしかない。方法は私達で考えてみます」
「いいえ。俺達で考えがあります。ですが、その間に仲間達と休暇を取っても良いでしょうか? 仲間の中にそろそろ休みたいと」
「フフ。良いですよ。そっちが本題ですか。分かりました。特にやることも無いですし…私としても休暇を取ってもらおうと思っていました。とはいっても今日向こうに連絡を入れておきますから。明日の朝一番に向かってください。首都から特急に乗ればすぐですし」
「ありがとうございます」
「では。中央大陸へと向かう策に関しては別に報告書をまとめてください。それを会談で提案しておきます。ご苦労様でした」
「こちらこそ我儘を言って申し訳ありません」
ジャックは立ち上がり深々と礼をした後に部屋から出ていく。
そのままエレベーターで一階まで降りて首相官邸から出ていくとアンヌ達にメールを送る。
そして、歩き出して十分ほどの場所にある公園の噴水前で一旦足を止める。
「本当に…何を考えているんだよ…アンタは」
ドライ最高司祭の武骨な無表情を思い浮かべてぼやくジャック、大陸を巡っている間ずっと考えていた事。
何を考えているのか、何を願い、何を想っていたのか。
どんな考えがあって大陸を巡っていたのか、今も教会本部に隠れながらどんなことを考えて行動しているのかジャックには理解できなかった。
どうでしたか?
次回は仲間達との会話シーンとなります。
では次は円環のドラゴン第四十九話でお会いしましょう!




