何を願い何を想うのか 5
ドラゴン大陸編四十七話目となります。
いよいよナーガ大陸まで戻ってまいりました。
では本編へGO!
翌朝になりジャック達はドラゴン政府の決定を直接首相官邸で聞くことになったわけだが、その内容は簡単に言えば「了承した」という一文のみ。
素っ気ない言葉にネリビットとメイビットやディラブ達は落胆を隠しきれなかったが、その言葉だけでジャック個人がナーガ政府からの依頼は完了したことになるわけだ。
ジャックは「近いうちに別の使者がやってくる」ことと「大きぼな首脳会談が行われる」という事だけを告げてドラゴン大陸から去るために移動を開始した。
リアンに運転を任せてネリビットとメイビットが作った収納可能で持ち運びも出来る魔道車を使って一旦国境の街を目指すことになる。
ジャックとしては「これを商品として売り出せば儲かる」とも思ったが、二人はこれを一般公開するつもりは無いらしく、しばらく改良してから何処かの会社にでも売り込むと提案していた。
車でガンガンに飛ばしながら十時間かけてダンジョンを走り抜け、ダンジョンを通り抜けるたびにディラブが残念そうな顔をしているのを無視し、ジャック達国境の街の手前にある海沿いにある中立の港町へと辿り着いた。
ここはドラゴン大陸の内海沿いにあるドラゴン族以外が住んでいる町の一つ、港町の一つで近くにある氷海というダンジョンの結果常に氷点下を下回る寒さを誇る町である。
此処でとれる魚介類はなかなかの絶品らしいことだけは知っていたので実は旅をした時からジャック個人は少し楽しみだった。
街並みは近くの白石と呼ばれる真っ白な石を積み重ね、緩やかな坂と綺麗な白石の家と地面はこの街のもう一つの名物である。
「此処は四大大陸の中でも観光名所で有名なところだな。一般的にドラゴン大陸の内海沿いの街は基本観光名所で有名だ」
「適当なホテルを抑えてから夕食を探しに行くとしようかのう」
「明日は朝一で国境の街に移動して海を渡る感じですか? 船で渡るんですよね? ファリーダお姉ちゃん」
「ええ。今の所船を出していないという話は聞きませんし、大丈夫だと思いますよ」
「なあ。ファリーダ。船以外での渡る方法が有るのかどうか調べておいてくれないか?」
ジャックは助手席から国境の街の方をジッと眺めながらそう呟き、その言葉に嫌な予感を巡らせるアンヌはジャック引きながら「突然何?」と聞くとジャックは遠い目をしながら「何でもない」と返すだけだった。
不信感がどうしても拭いきれないアンヌに対してメイビットは「ジャック兄ちゃんがこういう時って不安なことが起きるんだよな」と漏らす。
ジャックはそれ以上は何も言うつもりは無く、全員でホテルへとチェックインしてから夕食を食べに近くのレストランで一食してから再び一泊した。
その間にジャックはナーガ政府にドラゴン政府の意見を伝え近々変えることをしっかりと伝える。
翌朝国境の街へと向かおうとした所で国境の街への唯一の道の出入り口が封鎖されていることに気が付いた。
ジャックの悪い予感が的中したことになる。
「ねえ。なんでわかったの?」
「別に。鳥が沢山向こうからやってきたから。個人的にそれが見えたら鳥がやってくる方向では良くないことが起きると決まっているんだ」
「それよりどうするんじゃ? これじゃあ歩いての移動も難しい上、起きている事が事なら船もでんぞ」
「ジャック様から頼まれていた通り調べてみました。どうやらここから東の方に外れたダンジョンの中に国境を超えるもう一つの方法が有るようです」
「それってホビット族が昔使ったとされている古いダンジョン?」
ネリビットの素朴な疑問にジャックが「そうだろうな」と答えつつ「そこから移動しよう」と提案しながら歩き出すと、その後ろでアンヌが残念そうな顔をする。
「出来る限り今日中にでも渡りたい。向こうにつけば列車で首都まで直ぐだからな」
「ナーガの列車は二十四時間ずっと運航されておるのか?」
「ああ。だから向こうにつけば首都までは其処までかからない。ファリーダ。そのダンジョンは遠いのか?」
「いいえ。歩いて行っても一時間もかかりませんよ。車でギリギリ移動できるはずですし、この辺りは三日前にディフェンダーがダンジョンのモンスターを討伐しているから安全でしょう。ダンジョンの入り口もカギは掛かっていないそうですし」
「じゃあ車で行こうぜ。じゃ無いとアンヌ姉ちゃんがブーイングするし」
「じゃのう。諦めれば良いのに」
全員がブーイングに対して不満な声を出す中全く納得がいかないアンヌは文句を垂れ続けていた。
車に乗ってダンジョンを超えていき、目的地の入り口までやってきた一行。
そこには人工的に白石で作られた階段が下へと伸びており、そこで車から降りて収納できるサイズまで圧縮してからカバンの中へと入れ、そこから全員で階段を降りていく。
「なんでエレベーターが無いのかしら?」
「昔の建物に階段を求めるなよ」
アンヌの言葉に律儀に突っ込むジャック、一番下まで降りるとそこには薄暗い一本道が続いており、特に代わり映えのしない場所だった。
「何と言うか凄いダンジョンを想像していたから残念だな。恐らく移動目的だけに作られたって感じだな」
「おそらくそうだと思いますよ。船が使えない時の緊急策では無いでしょうか? 時折ディフェンダーがダンジョンに内に湧くモンスターを倒すために行き来することがあるそうですが、今では使われないと聞きます」
「でも、どうして船を使われないことが前提で作っているわけ?」
「実際今船が使えないことを考えると昔っから何かがあるんだろうな。まあ、国境の街は何処も昔っからトラブルが続いていることが多いらしいし、おかしいことじゃ無いんじゃないか?」
「ここ…ダンジョンなのにモンスターがいない。つまらない」
「期待させてごめんなさい」
「ファリーダ姉ちゃんも無理に謝らなくて良いって! ディラブの兄ちゃんも諦めなよ!」
皆で喋りながら歩いているとあっという間にダンジョンの出口へとやってきた。
明るい光に向かって登っていき出ていくと、そこは街角であった。
「此処って?」
「来たことは無いが、恐らくナーガ大陸にある国境の街『アルアランド』だな。国境の街であり監獄などが置かれている少々物騒な街だと聞いた」
「ええ~そんな所を国境の街に指定しなくても」
「此処は良い町だ! 闘技場がある」
「え? 闘技場? どうしてですか?」
「囚人同士を争わせたり、時にモンスターを戦わせたり、中には賞金目的で参加することもある。ディラブは好んでいるのはそういう理由だ。その分ナーガ政府による厳格に管理が行き届いているから治安は大丈夫だよ。その分やってくる賞金稼ぎが住み着いているけど」
「それ大丈夫なんですか? 本当に? ディラブのお兄ちゃんは此処に滞在していたんですか?」
「ああ。此処は俺の様に金の無い人間からすれば金を稼ぐ数少ない方法なのでな。此処に滞在を!?」
「しません!! 言ったでしょ!? もう首都に行くの!」
「なんでアンヌの姉ちゃんは必死に首都に行こうとするの?」
「その後にリゾート地で遊ぶことで頭の中が一杯一杯なんだろ?」
皆で呆れながら列車のある駅まで歩いて移動すると皆で首都行の列車に乗り込んでいった。
どうでしたか?
次回から少しナーガ大陸で会話劇をした後円環のドラゴン編は終わりにしたいと思います。
では次は円環のドラゴン第四十八話でお会いしましょう!




