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巨木と自然の街ガーナンド・ロウ 2

ガーナンド・ロウ二話目となりますが、今回は改めてジャックの化け物具合が伝わればいいなと思っています。

では本編へGO!

 ガーナンド・ロウの自然と一体化している街並み、大きな露店が立ち並ぶ商店街を越えていくと、今度は深い森と一体化している一本道、ツリーハウスのような家が立ち並び、足元には綺麗な甘い香りのする花々が咲き誇っている。

 アンヌはそのうちの一輪に顔を近づけてクンクンと匂うと漂ってくる甘い香り、白い花びらとは想像もさせない甘い香り。

 どうやらこの花はこの区画でしか咲いていないようだと思いつつも、アンヌは前を歩くリアンの後ろへと急いでついていく。

 ドラゴン族とヒューマンが街中を歩いていても、ナーガの人達はそこまで動揺していないようだ。

 最も、ドラゴン族はともかくヒューマンは比較的珍しいはずで、本来であれば騒いでいてもおかしくはない。


「ナーガ族ってそこまで他種族を警戒しないものなんですか? 街中を歩いていても少しヒソヒソ話が聞こえてくるぐらいで、騒いでいる素振りが無いですし」

「無いはずじゃ。まあヒューマンは珍しかろうがその程度じゃな。ジャックだって直ぐに馴染めるぐらいには基本人当たりは良いはずじゃ」

「見たいですね。あまり気にしている風じゃないというか」

「他種族に対して差別的感情を抱いていない感じじゃよな。というより、他種族は所詮他種族と考えているんじゃろ?」


 ツリーハウスの上で近所話をしている女性や仕事をしている男性の姿、中には妊娠しているのかお腹を大きくさせている男性だっている。

 ナーガの独自性を改めて発見できる光景であり、アンヌは左右を見ながら時折ぶつかりそうになりながらも、森を抜けると大きな五階建ての建物へと辿り着いた。

 広いグラウンドも存在しているその姿からここが学校なのだと分かる。


「ここに居るはずじゃ。今日一日はここで明後日行われる大会の調整作業じゃからな」


 そういって学校の中へと平然と入っていくリアン、若干感じる後ろめたさを隠しながらも後ろをついていく。

 リアンはそのまま学校の玄関へと入っていくが、中では靴を履き替えるという習慣が無いのかそのまま遠慮なく進む。

 曲がり角を曲がって体育館と思われる建物へと進んでいくと、中から楽し気な声が聞こえてきた。

 中には三名のロウ族の男性が甚平姿で話しており、アンヌ達へと背中を見せている紫色のロウ族がジャックだとアンヌは気が付いた。

 そして、ジャックもアンヌの存在に気が付いたのかふと振り返りアンヌと目と目が合う。



 ジャックとアンヌは二人で外にある大きな木の近くにあるベンチに座り込んで黙り込む。

 先ほどまでジャックと話していたロウ族の男子はそのまま何処かへと別れていった。


「あの二人は? 一緒に話していたんじゃないの?」

「いや。同い年の友人で。今日俺が此処で明後日の大会の調整をするって聞いたら手伝ってくれてさ。お陰で色々助かったよ」

「そっか」

「今日は悪かったよ。本当は朝一で向かおうと思ったんだが、どうしても駄目だって言われてさ。こっそり行こうと思ったんだが、家の前で出待ちされて…」


 そのまま連れて行かれてしまったと説明する。

 アンヌが何を想いジャックを見ているのか、ジャックにはどうしても分からなかった。


「どうした? らしくない…言いたいことがあるならはっきり言えって。そんな風に考え込んで黙り込むと良いこと無いぞ。何時まで経っても元に戻れない」

「関係ある? はぁ…別に。ねえジャック君は…」

「昔はジャックって言っていた気がする」

「ジャックはナーガだって分かったわけだけど、追放されて見知らぬ土地で生きていくこと不安てないわけ? ヒューマンに対して不満は無い?」

「無いと言えば噓になるが、生きていく上で不安は存在しないな。だって実際ここで生きていて楽しいしな。それに、アンヌだって来てくれている。それだけで今は良いさ」


 アンヌとしては未だに納得が出来ない話であり、不貞腐れているような顔をしては黙り込む。

 ジャックは結構深めのため息を吐き出してから背の低いアンヌの顔を無理矢理のぞき込むと、アンヌはそんなジャックの視線に見向きもしない。


「アンヌはさ。ヒューマンが嫌い?」

「嫌いになりそうね。正直自分がヒューマンであることを嫌になっていくのが分かるの。聞いた?」

「聞いてないな。詳しくは聞いていないが…多分聞いていない」

「今中央大陸では貴方の事を『嘘つき元勇者』って皆罵っているのよ。助けてもらっておいて、今更…!」

「…でも真実だしな。俺自身すら騙した。嘘つき。ハハ。知っていたか? 俺が知らなかっただけで、俺の両親はヒューマンとナーガとヒューマンのハーフなのに、俺は純粋なナーガなんだって。生まれつきのさ。俺は生まれてから両親すら騙して生きてきた」

「笑い事じゃない!! 何がおかしいの? 嘘つき!? 知らなかったんだから…仕方ないじゃない」


 涙を流すアンヌに今度はジャックが慌てる番であり、すると周りからどんどんナーガの男女が集まってくる。

 大粒の涙を流しているアンヌ、今まで堪えていたものがこんな会話で噴出してくることに驚くアンヌ。

 驚きと悲しみと怒りが混じりあってどんな感情を持てばいいのかすら分からない。


「良い子じゃないか。お前の為に泣いてくれるなんて」

「なんで俺が責められているの? 今、責めてるよね? 泣かせたの俺?」

「泣かせるなんて最低よ。これだからナーガの男子は」


 ジャックは心の中で(なんで俺が責められてるの?)と不満を抱く。

 しかし、アンヌの気持ちをまるで理解が出来ないわけじゃないが、正直を言えばジャックにとってアンヌが他人の為に涙を流すような人間だとは知らなかった。

 こればかりは流石に性格が変わったという話ではなく、元より他人の為に涙を流すことが出来たはずだと考えた。

 知らないことばかりだと今更思う。


「言ったけどさ。お前が居る。お前が信じてくれる。俺が大切だと言える人達が俺を信じてくれているだけで今は良い。今すぐどうにかしようとは思わない。今はとにかくお前をそんな体にした奴等をどうにかすることが重要なんだ。俺の問題はその後にゆっくりと解決するさ」

「教会が意見を変えなければ? 貴方は一生ノアの村には帰れないのよ?」

「帰ろうとはおもう思ってないよ。流石にナーガの大地で生きていくさ。それぐらいはもう決めているんだ。さっきも言ったけど、俺の大切にしている人が俺を信じてくれれば、その為に俺は頑張れる」


 きっとジャックにとってはそこだけは変わらない部分であり、勇者の頃から自らに立てた指針でもある。

 見知らぬ誰かの為に、自分を信じてくれる人の為に信じて生きていく。


「騙されても?」

「人を見る目はあるつもりだよ? だって…ほら。お前は俺の為に泣いてくれてる。そんな人が俺を信じてくれる。だったら頑張るさ。いつか『嘘つき元勇者』という不名誉な称号を撤回してくれるって信じてな」

「…馬鹿ね。仕方がないから付き合ってあげる。だから、さっさと将軍になりなさい! 良いわね! 将軍になれば動きやすくなるわ」

「そうなのか…」


 周りからジャックに向けられる「知らなかったのか?」やら「知らずになろうとしたのか?」という視線と言葉が向けられた。

 ジャック自身まるで気にしている素振りを見せないのだが、アンヌは大き目なため息を吐き出してからジト目をジャックに向けた。


「あのね。ナーガ十将軍と言えば世界最強とも言われていて、一人だけで師団と戦うことが出来るって言われているのよ? 一人一人に様々な権限が与えられて、研究所や訓練施設など本人が欲しいと言い出したらその通りになるの。その代わりなるにはナーガに貢献できるだけの性格や実力が問われるの。候補に選ばれているだけ名誉なことなのよ」

「よく知っているな…俺知らなかったのに」

「本当にアンタって座学が苦手よね? ジッと勉強しているぐらいなら体を動かそうとはするけど」

「苦手じゃない。嫌いなだけだ。だから熟すべきことは熟す。やるべきことはやる」


 アンヌとしては『嫌い』ではなく『苦手』だと思っている。

 ジャックは座学を苦手としているのだと、学校の授業をあまり真剣に聞いている感じではないが、その代わり運動などもそうだがある程度基礎が出来れば応用までを感覚で理解できる。

 実際、ジャックは最低限の魔術の知識に魔術の想像力を手に入れてからはあっという間に魔術の全容をつかんでしまった。


「昔っから基礎さえ覚えれば授業なんて聞いていなくても大体の事が理解できるアンタの性格は分かっているつもりだけど」

「? だからと言って怠けるつもりはない。常に高みを目指して努力をしているつもりだ」

「誰もそんなことは気にしていないわよ。基礎と想像力を手に入れさえすれば魔術の全容を掴んだ人だもの、誰も気にしていないわよ。でもさ…聞いていい? どの程度まで魔術で出来るようになったの?」

「う~ん。説明が難しいけど…『術式ストック』『術式融合』『詠唱破棄』『術式複製』なんかは出来る」

「十分よ。この化け物」

「失礼な。敵が展開中の術式をただレイピア一本で敵の体ごとぶち抜く人に化け物呼ばわりされたくないな。脳筋聖女様はやることなすことが強引すぎて」

「ハハ。才能にものを言わせて相手を一掃する人に化け物って呼ばれたくないわね」


 お互い目が笑っていないことだけはここに記しておき、周囲は若干引いている状態である。

 ジャックも大体化け物であるが、それに迫る勢いで本来アンヌもまた化け物なのであった。

 本来であれば暴走したドラゴンであれば一撃で撃破できるが、ドラゴンを落ち着かせようと手加減をしていたうえでの動揺と不意を突かれたことでの敗北。

 ジャックに迫るレベルな人間がこんなことになっているからこそのジャックが動く理由にすらなるのだ。


「お前達って両方化け物なんだな」

「「失礼な!」」

どうでしたか?

ジャックは殆ど感覚だけで魔術を極めてしまったと言えるでしょう。

今は弱いアンヌですが第一章の時点では元通りの力を取り戻しているので、まあ身長はこのままなのですが…一生ロリです(笑)

では次は十八話でお会いしましょう!

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