高難易度ダンジョン同時攻略戦 4
円環のドラゴン第三十九話目となります。
今回はリアンパーティーのディラブの戦闘回になります。
では本編へGO!
旧首都の中心地にある巨大なビルの一階にあるロビーに入るとそこには人っ気が無くなっている寂しい空間が広がっていた。
そこまで来てようやく国家元首が目を覚ましてぎゃあこらと騒ぎ出し始めたのをリアンは口に布で猿ぐわをしてから複数人で担いで最上階へと向かって移動し始める。
エレベーターが動くわけが無いが念の為にとボタンを何度か押して確認してみるが、やはり動く気配が無い。
「ていうかこれってずっと前の建物だよな? それなのにエレベーターがあるのか?」
「エレベーター自体は魔道技術時代に真っ先に作られた道具だよ? ナーガだと結構当たり前だって聞くけど? ねえ? 姉ちゃん」
「うん。ホビットは馴染みがあまり無いんだけど。ナーガは元々魔道技術が最も優れている種族だから。何せ魔人族って言われるぐらいだし」
「魔人族。確か生まれつきモンスター同様に魔力を宿して生まれてくる種族。魔道技術はその過程で生み出されたって聞きました。正確にはモンスターはこの世界由来ではないそうですが」
「そうなのか? あまり深く考えたことは無いが?」
「女神達曰く「この世界には存在しない別の世界の愚かな負の遺産の産物」とのことでした。生み出してはいけない遺産」
「ドラゴン族だけが語り継いでいる秘話という事かな?」
「かもしれません。私の生みの親ならもっと詳しいはずですが。集落の長が言うにはこの大陸とナーガの大陸と中央大陸には『魔道区画』と呼ばれる場所があると」
「そこにジャック達が向かった可能性は!?」
ディラブからの問いに対して残りのメンバー達は一斉に黙り込む。
これから階段を上ろうというタイミングで「そうかもしれない」なんていえば踵を返してそのまま向かいかねない。
このパーティーの最大戦力を失いたくはないという想いが嘘を口から吐き出したわけだが、流石にそんな簡単には騙されなかった。
「騙されんぞ。やはりさっさと奥に行き魔道区画とやらに行くしか無いな!!」
「前向きで助かるわい。なら早めに行こう。どうやらモンスターが徘徊しているようじゃしな」
階段を急いで登っていき、襲ってくるモンスターを返り討ちにしつつ然程難しくないダンジョンを最奥へと向かって進んでいくが、流石に半分ほど登ったところでネリビットとメイビットとリアンが多少疲れたようで丁度真ん中の階層にある大広間で一休みしようと中へと入る。
すると大広間のど真ん中には西洋風の騎士人形が西洋の剣を突き刺した状態で佇んでおり、大広間に入った人間を自動で認識し襲撃する人形兵器。
「多分だけどホビットが作った作品だけど。この場所が霊的に不安定だったことも考えると地脈から魔力…嫌この場合霊力を練り上げていたんでしょうけど。その結果あの騎士人形を動かすエネルギー代わりにしているんじゃないかな?」
「ていうか国家元首さんは此処に来たことがあるんでしょ? なら止め方知ってるんじゃない?」
猿ぐわをしているので喋る事は出来ないが、そもそも喋るつもりすらなかったようで「フン」と言いながら目を瞑るが、ディラブは大斧を振り回しながら騎士人形へと歩いていく。
騎士人形も一定の距離まで近づいてきたからだろう迎撃モードへと移行し、騎士剣を中腰の状態で低く構え始める。
「騎士剣と大斧だと戦いとしてはどうなの?」
「小回りと言う点では騎士剣に一票じゃな。じゃが、重量のある斧の攻撃が少しでも騎士剣に当たればその時点で壊れるじゃろうから、戦い方次第じゃな。何も考えないまま突っ込んでいけばディラブでも負けるが…」
「はい…多分この勝負は…」
ディラブと騎士人形が同時に地面を蹴る。
持っている武器の重量の差はもはや関係は無かったようで、同速度で掛けていくディラブが大斧を振り上げて振り下ろそうとするより騎士人形の方が圧倒的に早く振り抜こうとするが、その途端騎士人形の動きが止まった。
そのまま力一杯振り下ろした大斧の一撃で騎士人形が粉々になってしまう。
国家元首からすればこれは予想外だったようで唖然としていた。
「場の魔力をコントロールし制限と制約を設ける呪術。その対象はあらゆる物体すべてに及び、緻密なコントロールさえすれば個人個人一人一人にすら対象に出来る」
「そんな呪術を持っているオーガと霊力を供給している騎士人形では話にならんじゃろうな。やれやれこの様子ではあまり休ませてくれないようじゃな」
慌て始める国家元首はその場から何とか逃げ出そうとするが、無論ファリーダはそれを逃がすわけではない。
国家元首についていた猿ぐわが自然と外され大きな声が空間内に響き渡る。
「鐘なら渡す!! 頼む! それともそのドラゴン族の親の事を知りたいのか!? お前ファリーダだろう?」
「どうして私の事を?」
「知っているさ。お前の親は有名人だからな。何せ円環のドラゴンの子孫は流石に目を付けていたからな。何せ私がどうしても知りたかった魔道区画を唯一知る人間だからな」
「いいえ。教えてくれなくて結構です。私に会いに来ないという事は会いたくない理由が在るのでしょう。それを無視して会いたいとは思いません」
「じゃて。残念じゃったのう」
「最上階に行きたくない!!! 行けばあの女に取り込まれる!!」
「ああ~やっぱり最上階へ行けば一緒に封印されるわけだ。そして、それこそが国家元首の証を取り戻す方法ってわけだ」
「等価交換ってわけだね。国家元首の身を差し出せば代わりに返すという取引」
「ですね。さあ…行きましょう」
リアンは再び猿ぐわを国家元首にした状態で最上階へと向かって歩き出すわけだが、国家元首は何とか逃げ出そうと必死になっていた。
メイビットはそんな国家元首の体を更に餅のような粘着物で拘束してしまう。
「良くそんな物要していたね? 姉ちゃん」
「こんなこともあろうかと」
「憧れる言葉じゃのう。この様子でディラブに案内させればよかろう。儂等はその間に楽をさせてもらえば良いわい」
「流石にそうはいきませんね。この先更に厳しくなるでしょう。私も戦いますから、リアンさんは国家元首をよろしくお願いします」
「なら俺と姉ちゃんでサポートするよ。早く上に上がろうぜ。こんなおっさんドラゴンどうでも良いし」
そんな冷たい言葉と共に歩き出す一行に文句を言おうとしている国家元首のパーティーは最上階へと向かって更に足を踏み出した。
どうでしたか?
次回はいよいよ勇者の剣が手に入ります!
では次は円環のドラゴン第四十話でお会いしましょう!




