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巨木と自然の街ガーナンド・ロウ

ロウ族首都ガーナンド・ロウのお話一話目になります。

自然と共にある街並みを想像しながらお読みください!

 ガーナンド・ロウは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が特徴的で、流れが緩やかな川が三つほど流れていて、一般のナーガ人は下の居住地で、観光客は大木内で過ごすことが当たり前になっている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しており、アンヌもそこに降り立つことになった。

 大きな風船のような空気の入っている空気袋とプロペラのついた大型飛空艇が大木の上に降り立つと、中から沢山のナーガ人と共にアンヌがリアンと共に降りてきた。

 ナーガ人からすればドラゴン族とヒューマン族が居る時点でかなり目立つのだろうが、ナーガ人達はまるで気にしている素振りは無い。


「ヒューマン族以外は異種族同士の交流があるんですよね?」

「そのはずじゃ。というかヒューマン族でも儂等みたいに交流を持っておる人間はおるぞ。基本教会が嫌がっておるだけじゃ」

「リアン様はそれで教会から距離を?」

「それもあるが、そもそも最高司祭の二人と気が合わないんじゃよ。実際あ奴は儂を追い出すことに躊躇いが無かったじゃろ?」


 アンヌは心の中で「そういう問題なのだろうか?」と思ってしまったが、ドライ最高司祭はそもそも教会内の規律を重要視する方で、私情は決して挟まない方だと思うとリアンとは相性が悪いとは思えた。

 二人で下へと降りていき一般住宅街への出入り口までたどり着いたところで、アンヌは眩しい光を右腕で防ぎながら一歩足を踏み出す。

 木で出来た家が立ち並び、地面は石造りで作り上げられていて非常に調和が出来ている綺麗な街並み、家には草が生い茂っている自宅も存在している。


「自然をそのまま使った感じの家が並んでいて凄く綺麗…」

「ここがガーナンド・ロウじゃ。ロウ族の町は『自然との調和』がテーマらしくてな。下手に人工物はあまり使わないそうじゃ」

「それでこんな作りを…そういえば何となくノアの村にも似てる」

「それは逆じゃな。ノアの村がこの町に似ているんじゃよ。あれは自殺したロウ族を慕った村人が彼を想い立てた村らしい」

「そうなんですね…でも、こっちが何倍も綺麗ですね」

「そうじゃな…さて。儂等もジャックの元へと向かうか?」


 アンヌの「はい」という言葉と共に歩き出す二人の女性、幼女のような女性のヒューマン族はともかく、老人言葉の美女のドラゴン族だけは異様だったのだろう。

 周囲からナーガ族のコソコソ話がアンヌの耳元にまで聞こえてきた。


「目立っていますね…リアンさん。老人言葉をお止めになったらいかがです?」

「嫌じゃよ。今更じゃし…今は若い美女かもしれんが、ヒューマン族としては老人じゃしの。そこを誤魔化すつもりはない」

「少しぐらい誤魔化す努力を重ねたら良いのに…。それだけで最高司祭との関係だって違うのに…」


 アンヌの言葉にまるで聞く耳を持たないリアン、巨木前の露店が立ち並ぶ店先に視線を向けながら歩いていくアンヌ達。

 店の大きさも全て長身のナーガ用になっている為アンヌには少々高すぎるのか、アンヌはつま先立ち露天などを除いている。


「儂が担いでやろうか?」

「大丈夫です。リアンさんは担ぐときに胸を触ろうとするでしょうし…」

「儂が今までしたかのように語るでないわい。流石に自重するぞ」


 イマイチ信用は出来なかったアンヌ、来るときの飛空艇内でしつこく胸を触ろうと策を練ってきた前科を持っている人である。

 リアンの言葉を全部無視しながら歩いていく中、アンヌはふとすれ違ったナーガ族の男性へと視線を泳がせる。


「どうした? あれはジャックじゃなかろう? 角が上を向いているぞ? ジャックはねじれた状態で下向きじゃ」

「いいえ…皆ジャック君に似ているから」

「それは仕方なかろう? 逆にナーガとか他の種からすればヒューマンなんて同じに見えるはずじゃしの…」

「そういうものでしょうか? でも、どうして異種族間の交流を持とうとしないんでしょうね? ヒューマン族は」


 アンヌがナーガを知っていく過程でどうしても不思議に思ったこと、ヒューマン族以外は交流を持つのに対し、ヒューマン族はそれ以外とは交流を持たない。

 それどころかやってきた異種族を追い出す始末で、もしヒューマン族が他の種に種族転生をすれば追放処分である。

 実際そうやってジャックとリアンは中央大陸を追放処分されているのだから。


「リアン様は追放処分されて悲しいとか寂しいとか思いませんでした?」

「? そうじゃな…正直に言えば未練がないと言えばうそになる程度じゃな。なるようになれ。そのぐらいか。長い人生じゃ。何かある。ジャックも同じ気持ちじゃなかろうか? 抵抗したところで無駄という気持ちはあるじゃろうしな」

「…私は悲しいです。ヒューマン族がどうして他の種をそこまで嫌がるのか。私にはどうしても分からない」

「…ヒューマン族は他の四種とは違って短命じゃ。他の種が長く生きるのに対しヒューマン族の人生は短すぎる。耐えられないんじゃろうよ…きっと」


 アンヌ自信自分が短命という気持ちを理解できないわけじゃないが、聖女は特殊なジョブ故に基本ヒューマン族の中でも長命の種となり、特別扱いを受ける。

 勇者が短命だとすれば聖女は長命と区別され、教会でも特別扱いを受けることが多い。

 何故勇者が短命なのか、その理由をこの前初めて知ったアンヌだが、同時にそんな重要なことを自分にすら隠そうとする教会の在り方に今更疑問を抱いてしまう。


「そういうことは口には出さないものじゃ。それに教会の権威など所詮は中央大陸でしか発揮されん。外ではむしろディフェンダーの方が権威を振るっておる。その辺も教会とディフェンダーの仲が悪い理由じゃな」

「確か外では女神の信仰自体が無いんですよね?」

「その通りじゃ。儂が言うのもなんじゃが…ヒューマンを除く四種族は女神の伝説の詳細を知っておる。それ故に教会ほど信じてはいないんじゃよ」


 アンヌは首を傾げて「真実?」と問い返すと、リアンは「今は語れんよ」とだけしか言わない。


「儂もナーガと交流を持った時に貿易を担当しておった船乗りに聞いただけじゃ。それも断片的な内容をな…気になるか? まあ儂は今はドラゴンじゃ。ヒューマン族の問題はもはや無縁。口を出すつもりは無いさ。ヒューマンの問題はヒューマンで解決すべきじゃしな」

「他種族が口を出すことじゃないと?」

「そういう事じゃ。それが他種族間の問題なら話は別じゃ。今回の事態のようにな。それより、聞きたいことがあるんじゃが。良いかの?」


 露店が並ぶフロアを抜けてから細く隣に木が並ぶ道を進んでいく中で、リアンはアンヌにふと尋ねる。

 まるで今思い出したかのように。


「メメはどうしておる? 教会に文句を言いに行っていなければ良いが…儂の事はいい加減諦めてほしい。この際結構すっきりはしておるんじゃよ? これはジャックの奴にも言えることじゃが。儂等は教会の支配から抜けられたのじゃから。落ち着いたらドラゴン族の里にでも隠居するわい」

「メメ様ですか…最初は納得できなかったそうですが、リアン様が正気を失っていた時に国を襲っていた話があるせいで国民に真実を話せないようで」

「国民には酷いことした。いくら正気を失って居るとはいってもな。そういう意味で儂は自分の処遇に対しては些か不公平感があるとは思って居る。まあ、教会側の配慮だと思っておく」

「でも…どうしてドラゴンになったんですか?」

「……儂等は遥か昔にドラゴン族に才能を分けてもらったんじゃが、その時に『人体抽出を行えば力が暴走する可能性がある』と言われたのじゃ」

「でも使用したのはライノルドですよね? 息子さんの…」


 アンヌはそう記憶していたが、実際にライノルドが行使しているところを見ていたわけじゃない。


「そうじゃ。ライノルドが儂を生かしていたのは、本来自分が受ける副作用を儂に押し付けていたからじゃ。次第に肉体がドラゴンになっていき奴が作った薬で正気を失ってしまったんじゃよ」

「…息子さんはジャック君が?」

「ああ。そうじゃろうの。あれじゃ骨も残らなかったに違いない。じゃが、あれに同情してはならん。お前さんを苦しめていた時に高笑いをしておったのじゃろう? その話を聞いた途端ジャックはぶち切れたんじゃ」


 その話を聞いて足を止めて驚くアンヌ。


「そういえばあの時の話を詳しく聞いていませんでしたけど…」

「なんてことは無い。あの二人が戦っていると興奮し始めたのかライノルドが馬鹿みたいにお前さんの事をペラペラ喋りだしたのじゃ。それを聞いて怒ったジャックがメビウスインパクトを食らわせた。それだけじゃよ」


 メビウスインパクトという聞きなれない言葉に「それってどんな呪文なんですか?」と聞く。


「そうじゃな…お前さんは魔術という内容をどのくらい知っておるか? 一般的に五大属性と言えば『炎』『氷』『雷』『風』『土』の五属性じゃが、実はその上に『光』『闇』『重力』『反射』『防壁』の五属性があるんじゃ。その内『光』と『闇』の術式を強引に融合させた場合に作り出せる『無属性』の『爆発属性』を持つ術式が完成するんじゃ」

「無属性って強いんですか?」

「弱点が無く、相殺できず、発動した場合は高出力の爆発を起こすだけ。それ故に単発での攻撃力で『メビウスインパクト』を超える術は存在しない。ナーガの十将軍は皆メビウスインパクトを使うことが出来る。あれはナーガの切り札じゃからな」

「そんな凄い技だったんですね? なんかジャック君だからあっさり使ったのかと」

「いや。あっさり使っておったぞ。あれはあえて最初は使うつもりがなかっただけじゃな」


 アンヌはジャックという人間をよく知っているつもりだが、よく考えてみても付き合いは彼と中学校で出会った時しかない。

 その時も背の低い奴が勇者に選ばれた程度の印象しか持たなかったし、実際はその辺で困っている人が居れば手を差し出して助けるお人好し。

 ただし、ジャックが一番気に入らなかったのは彼自身はどこか他の人と付き合い辛いような顔をして過ごしていた事。

 嫌なことがあるのならはっきり言えばいいのに、それを言わないまま自分ががまんすればいいと思っている部分が嫌いだった。


「そうか…儂にはそれしか言えんの。もしかしたらその頃からナーガとしての違いがはっきり出ていたのかもしれんの」

「そうなんでしょうか?」

「儂がここ数日あ奴を見てみて思ったことじゃが、ナーガでは意外と友達も多いイメージじゃよ。結構若者って感じじゃな」

「ならそれがジャック君の本来の姿なのかもしれませんね。友達か…昔っから誰も居なかったんだけどな…」


 友達のいない孤独な人。

 それがアンヌの学生時代から変わらないジャックのイメージ。

どうでしたか?

自然と共に生きている感じが出せたらいいのですが、なかなか難しいですね。

最も自分は虫が大が付くぐらいに嫌いなので多分住めませんね(笑)

では次は十七話目でお会いしましょう!

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