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白と黒の輪舞 4

円環のドラゴン編第三十二話となります。

今回は戦いの前のお話となっております。

では本編へGO!

 アルクの箱と言う中央大陸出身者以外からすれば全く理解が出来ない箱について、詳しく聞きたいと言い出したのはメイビットの方だった。

 その為には中央大陸の歴史について最低限でも語らなければならなかったが、ディラブが担いでいる国家元首は未だに目を覚ます気配が無い。

 するとファリーダが「それはそうですよ。強力な睡眠薬をかがせましたから。それに催眠系の聖術も同時に掛けたので絶対に一日以上は目覚めません」と断言した。

 ディラブがドン引きしながら「何をした?」と聞くが、ファリーダは答える気が無かったようでそのまま口笛を吹きながら先頭を歩いている。


「それはそうと。中央大陸は古くから幾つもの国が出来ては滅びを繰り返し、その中でも教会が長年最低限の治安体制を維持してきた。国が滅んだ経緯は様々じゃが、その中でも行き過ぎた技術が何度も滅びを誘発してきた」

「まあ、ありがちな結果だな」

「ディラブの言う通りでありがちな結果ともいえる。その中でも長年対策されてきたのが、封印じゃ。中央大陸でもそのまま戦闘で死ぬことを阻止する際にも、封印と言う百年以上先に残す方法を取ることも多かった」

「実際封印と言う技術が栄えた国があるんですよね?」

「そういえば爺ちゃんがそう言っていたよな?」

「じゃから、封印という方法に対して耐性のある道具を開発するようになった。そのお陰か中世と呼ばれる時代になると、体内に埋め込むことで永続的な耐性を作る人間が多くなったんじゃ」

「あまり褒められた状況とは思えませんよな? 私だったら嫌だな」

「まあ、姉ちゃんは嫌がるよな? でも、道具を取り上げられるよりマシじゃね?」


 ネリビットがメイビットに対して不思議そうな表情を作りながら聞くが、やはり姉の方は嫌な感覚だったようで表情が良くならない。

 ファリーダはそんな中で「どうやって埋め込むんですか?」と聞くとリアンは即答で「手術じゃよ」と答える。

 更に表情が曇るメイビット。


「そんな人間にも対抗策を作ろうと様々な国が躍起になったが、メリットとデメリットは両立するもの。封印は「他者を殺さない」というデメリットを設ける代わりに「半永続的な行動不可」を設けることが出来る。それを超えるレベルでの術なんて簡単に開発できるわけが無かったんじゃ」

「まあ、それが出来るならナーガとかドラゴン族が開発していそうだしな」

「そうでしょうか? そもそもナーガは屈強である程度の耐性を秘めているから興味が無かったはずですし、生命力の強いドラゴン族も似た感じですし」

「そうじゃろうな。しかし、ヒューマン族は短命という宿命がある。じゃからこそ様々な技術で対策を講じるしかない。肉体も他の四種族より弱いからこそじゃな。そんな中で開発されたのがアルクの箱。肉体と箱を完全に同化させることで封印に対する耐性がある人間でも強制的に身動きを封じる術。その代わり「絶対に解除出来る」という制限を設けることでな」

「成程です。要するに封印のデメリットとメリットの方向性を更に偏らせた。でも…やはりそれは」

「ですよねぇ? 意味が無い。さっきお爺ちゃんが言っていたように、意味が無いものになった」

「まあ、考えたほうじゃね? 俺なら作らないけど。意味が無いし、作っても使えないだろうし」

「一時的に対策出来ると考えたんじゃないか。数日だけでも封じて適当な場所に放置しておけば戦場で有利に出来るとか。実際の戦場でも一騎当千と呼ばれる人間は居たらしいし。ナーガやドラゴン族からすれば珍しい事じゃ無いんじゃないか?」


 結果的に言えばそういう人間は一時的にでも良いから封じたいと考え付いた道具だったのだろう。

 意味があるか問えば全く意味が無いとは言えなかったが、後の結果を思えば失敗という意味合いが強い。


「技術は廃れ。作られた道具は極少数でしかもその行き先は何処かすら分からん。それを探し出したという事じゃろうな。教会の目を掻い潜って」

「教会という組織は中央大陸でも有名な組織なんですよね?」

「有名と言うか唯一続いているような組織じゃからな。中央大陸では知らん人間はおらんよ。ジャックの様に好んでおらん人間はおるがな」

「あれ? 爺ちゃんも好んでいないんじゃなかったけ?」

「好きではないよ? 無論。内情を知ってしまうと嫌がる人間は多い。儂とジャックも少々理由が在って内情を知っておるからのう。あれはヤバい。政治としての統一力があるわけでもなく。中央大陸の治安維持というふんわりとした活動理由だけで維持されている組織じゃ」

「良く分かんないんだよな。俺みたいな知らない人間からすれば余計なのかもしれないし。俺だけの感覚なのかもしれないけど」

「俺も分からん!」

「ディラブさんはいつも通りな気がします」

「私です。ここ一日ほど一緒に過ごして分かりましたけど。私達が難しい話をすると黙りますからね」


 ディラブは「まあな」と胸を張りながら頷くだけ。


「治安の為なら非情で悲惨なことだってする。表の人間はそれを知らないだけ。自分達が多くの人から預かっている寄付金がそんなことの為に使われているのだとな。ヤバい道具だってその一つじゃが。ジャックが好んでおらん理由じゃしな。そんな道具さっさと破壊してしまえば良いんじゃ。なのにも関わらず所有する」


 リアンは渋い表情を浮かべながら深いため息を吐き出し、ファリーダは腕組をしながら何か考え込む素振りを見せた。


「ジャック様はそもそも元勇者としては教会に所属をしていたわけじゃないんですか?」

「無いな。儂はそう聞いておるよ。歴代の勇者は代々教会に所属していたと聞くが、ジャックは唯一所属しなかったと聞く」


 ネリビットが「なんで?」と素朴な疑問という感じで聞いてきた。


「知らん。本人しか知らんことじゃしな。アンヌはなにやら知っているようじゃし。何かあったとは聞いた。ジャックとアンヌは同じ師匠の下で剣術を習って居るし、その師匠は風変わりな男だった。正直に言えばあれがただのヒューマン族とは思えん。その師匠であるあ奴も教会には一切所属しないで活動しておると聞いておるしな」

「ふうん。変な人だな」

「失礼よ! 人の事をそんな風に言うなんて!」

「真実じゃからな~」

「それも失礼な気がしますけど。ジャック様にとってその剣術の師匠の影響もあって教会嫌いになったと?」

「かもしれんと言うだけじゃよ。そのお陰で知識に対して若干偏りがあるがな。実際、アルクの箱に対して教会関係者ならある程度の知識が抜けておる様じゃし」

「でも、知らないわけじゃないんだろ?」

「ジャックに聞く箱と聞いて直ぐに考えに至らなかった時点で分かるよ」


 あらゆる耐性を持つ勇者に対して効果的な手段はこれしか無いだろうとリアンは昔っから考えていた。

 実際に使った人間は居なかったらしいが、教会は長年回収しようと動いていたのだからジャックが知らないわけが無い。

 それでも、知識が欠落していたのは教会嫌いな上に教会に所属をしていなかったから。


「じゃから儂もアンヌも不思議なんじゃよ。元勇者と考えればジャックが教会に所属しているのではと考えるのが普通。なのに、アルクの箱に引っ掛かると半分確信を持って行動しているあの悪魔がな」

「え? それって…」

「まさか…あの悪魔の男は?」

「かもしれんな…」


 リアンは大きな魔力が後方からやってくると同時に一瞬だけ振り返る。

 戦いの火蓋が切って落とされた。

どうでしたか?

次回からはいよいよバトル開始です!

では次は円環のドラゴン第三十三話でお会いしましょう!

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