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底なしの悪意 3

円環のドラゴン編二十七話となります。

前面衝突の前日譚となっています。

では本編へGO!

 国家元首の姿を確認しようと俺達は彼がこの街にやってくるタイミングでこの街の出入り口を抑えているとそれらしい人間を見つけた。

 と言うかあれがそうなのかと正直に言えばショックでしかなかったが、ファリーダが「そうだ」と言うので信じるしかない。

 なんというか肥えた金持ちのオッサンというイメージ湧かないのだが、なんであんな奴を好きになるのか全く理解が出来ないが、顔も汚く油まみれのような男なのだ。


「趣味趣向は人それぞれだというぞ」

「そういう問題じゃない気がするが。あれで性格が悪いなら何処に俺達は救いを求めれば良いんだ? あんな奴がトップとはこのドラゴン大陸は終わりだな」

「だから変える意味でもあの人を拉致する意味はあるはずです…? ジャック様端末が震えていますよ」


 どうやら誰かから電話が掛かってきたようで俺は電話に出て耳に当ててみると、エロ爺の声がはっきりと聞こえてきた。


『ジャックか? 今そちらに車で向かって居るところじゃ。街の出入り口の外で待機しておるから埒が終了したらここまで来てくれ』

「アンヌ達はついてきているのか?」

『いや。アンヌ達はダンジョンの出入り口一帯を確保して貰っておるよ。アンヌ曰く中はそのまま通り抜けすることが出来るようじゃな』

「だと良いがな。下手をするとセキュリティが発生して無駄に移動する羽目になるかもしれない」

『それは良いが。拉致した後に追われるのは儂は勘弁じゃぞ?』

「最初は私達はそれは大丈夫だと思っていたんですけど…思ったよりも厄介そうで。敵の強さ次第ではそのまま追いかけてきそうです」

「最悪はダインジョン内で待ち構える必要がありそうだな」

『厄介じゃのう。まあ良い。儂は夕方には到着できるはずじゃ。到着次第再び連絡を入れるからの』

「作戦前には一報だけする。それじゃあ」


 電話を切りながら俺達は国家元首が車に乗っている姿をしっかりと確認するが、俺はファリーダにふと疑問に思ったことを聞く。


「もしかしてだが、国家元首に一度選ばれた者は男の姿を取ることが出来るのか?」

「らしいですね。好みが出るとは聞いていますけど。単純に女の姿の方が好きだからと女の姿を取る人も、男の体の方が楽だからと男の姿を取る人と様々ですね」

「ドラゴン族は変わっているから一般的な感性が通用しないな」

「そうかもしれませんね。ディラブさんの言う通りでドラゴン族は一般的な他の種族とはかなり違い性的な感性は特に別物ですから。それでも今代の国家元首は少々酷いは聞きますけど」

「あの肥え具合。相当自堕落な生活を送っている証拠だな。普段から適当で食生活も自分の好きな物ばかり食べ、運動はまともにしないまま生活しているんだろう」

「それも国家元首という立場に油を売っているという事か?」

「そうですね。まあ、そもそもドラゴン族の国家元首は其処まで役割を求められるわけではないので、最悪何もしなくても困らないんですけど…」

「にしてもな…普通外の大陸の事を気に掛けたり、情勢はしっかり把握して交渉するべき時は交渉するなり手を尽くすなり色々するだろう。この街、正直に言えば何か重要な拠点と言うわけでもなさそうだ。となると…綺麗で見どころが沢山ありそうなこの街にやってきた理由」


 観光以外にあり得ないだろうと考えながらため息を吐き出す。

 ディラブは小さい声で「露骨だな」と呟き、ファリーダは苦笑いを浮かべていると改めて男が移動した先の屋敷へと顔を向ける。

 相も変わらず漏れ出る溢れんばかりの悪意、遠くにいるにも関わらず皮膚がピリピリしてくる。


「この悪意。相当のレベルだな。実力も大したものだろう。ドラゴン族だと思うか? ファリーダ」

「どうでしょうか? 古くからドラゴン大陸は他種族が紛れて入ってくるのは今に始まったことじゃありませんから」

「そうなのか…あら雇われた他種族が入ってきている可能性も?」

「ありますね。特に国家元首なら金は十分にあるでしょうけど。逆に言えばこの状況で雇った人間がこんな悪意に満ち溢れている人という事は焦っているんだと思いますよ。金にモノを言わせて後を考えないで雇ったのですから」

「だろうな。厄介なことになってきた」



「楽しいことになってきたと思わないか? 此処からでもはっきりと感じる実力者達が三人も…ククク」

「兄者は楽しそうだな。しかし、最初は金にモノを言わせた楽な仕事だと思ったのによぉ」


 スキンヘッドの悪人面の人相の悪い男は楽しそうに笑い、それを見てため息を吐き出す先端が尖っているナーガ族の男はため息を吐き出しながら鬱陶しそうにもう一人の男へと向ける。

 もう一人の男は顔を付けているサングラスを動かしながら「別に」とクールさを装う。

 サングラスで目を隠している為に顔は良くは分からないが、高い背丈と黒くショートカットの髪の毛をしている男は口を開いた。


「で? どうすれば?」

「変わらない。あの雇い主がどうなろうと別に構わないが…せっかく現れた楽しい敵だ。精々楽しませてもらおうか!」


 底なしの悪意を撒き散らすように男は高笑いを浮かべるさまを見て二人はドン引きしていた。

 楽しそうに、愉しそうに、悪そうに、邪悪そうに、誰よりも邪悪な笑いを浮かべていた。

 きっと彼は誰よりも彼らが此処に来ることを望んでいる。

 自らの溢れんばかりの、器が壊れんばかりの悪意を壊さない様に必死で繋ぎ留めながら待ちかねていた。

 その顔はまるで恋人を待つ愛人のごとく…憎しみと邪悪を込めて…


 ジャックは背筋がゾッと冷えつくような錯覚を覚えた。

 それはまるで底なし沼に両足を捉えられ、沈む先に恐怖を覚えているかのように。

 それが見えているような溢れんばかりの悪意なのだと、ジャックは改めて屋敷の方へと向かって顔を向けた。

 相も変わらず底なし沼のような悪意を前にしてジャックは大きくため息を吐き出す。

 どす黒く、まるで氷の山のよう大きく巨大な悪意をジッと睨みつける。

 震えるように己の右拳を握りしめ、ジャックは勇者の剣を抜き真直ぐに屋敷へと構えた。

 勇者の剣はその鋭い刃をしっかりと輝かせて悪意に負けじと輝いている。

 両者は今夜激突する…

どうでしたか?

次回はいよいよジャックVS悪意の者達となります。

では次は円環のドラゴン第二十八話でお会いしましょう!

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