底なしの悪意 2
円環のドラゴン編第二十六話となります。
今回は半分はジャックサイド、もう半分はアンヌサイドのお話となります。
では本編へGO!
俺達は事前に用意されていた宿泊先ではなく、あくまでも遠すぎず近すぎずの距離感を維持し、同時に人通りが多い大通りに面した簡素なビジネスホテルを抑えた。
セキュリティを考えれば高級なホテルを抑えるべきなのかもしれないが、下手に高いホテルを抑えると政府につながりのある面々の可能性を考慮しバレると判断したからだ。
実際あの屋敷から放たれていた悪意の主が此処まで探しに来ることは無かったが、あれだけの悪意を放つだけの人物だどんなアクションを起こすのか分からない。
そのまま昼過ぎまで寝てから改めて屋敷前を探っていると、やはり案の定悪意は決して消えることなく放ち続けており、周りを歩いている人達すらも時折そちらを見ている。
明らかに悪目立ちしているわけなのだが、国家元首がやってくるのは夕方、観光は彼が夕食を取る夜中になるだろう。
と言うよりは俺達は事前にスケジュールを聞いているわけじゃないし、例え聞いていたとしても相手がその通りに動く保証が無い。
ならある程度その通りに動くと分かるタイミングでこちらは襲うしかないわけだ。
「夕食を襲うとして、ジャック様が襲撃役ですね?ディラブさんが呪術で場に負荷を掛けつつジャック様のサポート、誘拐は私が」
「それで頼む。俺が派手に暴れた後お前達と合流、そのままアンヌ達が先行して調べているであろう旧都へと再び向かう」
「だが、本当にお前の言う通りあの二つに割れた山に別の出入り口があるのか?」
「ある。それは間違いが無い。ちょうど隣にあるし、あの奇妙な割れた山が金属などを錬成するための施設だったとするなら外から入れるようにしているはずだ」
「ですが、あの山には中に入るような場所は外からでは見受けられませんでした。ならば…」
「ああ。必ず少し遠いところに別の入り口が用意されている。それもトロッコのような乗り物で出入りできるような場所を。後はあの地下を通って旧都方面へと無合うだけだ」
「なるほど…まあ、あのメンツなら大丈夫だろう。俺達は俺達の仕事をしよう」
「とりあえず外から内部の大凡の間取りを調べよう。何処から侵入すればバレやすくバレにくいのか。隠れやすい場所や食堂の場所を含めて調べるぞ」
時を少し巻き戻し翌朝を迎えたアンヌ達はその足で二つに割れた山へと向かっていた。
流石に歩いて移動したのでは時間が掛かると判断した一行は、ネリビットとメイビットが用意した車に乗って移動。
最高速度で二時間かけてダンジョンの入り口まで移動、一度車を別空間に隠してから改めて探索を開始していた。
「本当にあるのかしらね? この二つに割れた山に別の入り口が」
「えっと…旧都が向こうの方角だから…」
メイビットが大凡の方角を指さしながら山へと近づいていく、リアンは地図を広げながら各町や山などの地理条件を算出し始める。
その結果リアンは「此処じゃろう」と言う場所を指さした。
「旧都の丁度反対側。この方向に別の出入り口があるはずじゃ」
「なんでわかんの?」
「此処はジャックの推測通り基本は金属などを大量に錬成するための施設、それを山肌に見せかけて隠している。なら中に本当の施設があるのなら、物資を運び、完成した品を旧都に運ぶルートがあるはずじゃ。旧都の反対側なら大きな山脈が広がっておる。そっちにはそっちで大きな鉱山都市があるようじゃしな。そっちから鉱石や魔石を運んで錬成する」
「そして、完成した品をそのまま地上を経由せずに真っ直ぐ旧都地下へと運ぶね。分かり易いわ」
「はい。とりあえず鉱山都市方面に向かって移動しましょう。歩いて確かめながら探してみましょう」
そう言いながら四人で探すこと三時間、昼を超えた辺りで四人は昔使われていたトロッコの線路後を発見した。
錆びついた金属や腐った木の板などを発見し、それが二つに割れた山の方向へと向かって伸びている。
「リアンの爺ちゃんの言う通りでまっすぐ山の方へと向かっているな。この路線に真っ直ぐ進めば出入口が分かるわけだ」
「出入り口を探して入り口を抑えましょう。中はどうします? アンヌお姉ちゃん」
「私が軽く見てくるから三人は外回りの敵を寄せ付けない様に魔除けをしていてくれる? 軽く中を見てどんな感じなのか見てくるから」
発見した出入口は洞窟に偽装されており、路線後を発見しなければここが山の地下へと通じる道だとは思わないだろう。
ネリビットとメイビットが出入り口にモンスターを避けるための魔除けを作り始め、リアンは高いところからジャック達に出入口の場所を地図にマッピングした物を転送し始める。
アンヌはランタンに灯を灯してから奥へと進みだす。
ゴツゴツした整備されていない路線を進み、壁際に手をつきながら迷わない様に一本道を進む。
「これ、天然の洞窟に路線を引いているのね。よく考えているわ。そこから施設を作った感じかしら? にしても結構奥に進むわね…」
歩くこと三十分が経過してから奥に広い空間を感じたアンヌ、敢えて走らない様に気配を殺しながら広い空間のの入り口に立った。
天井や壁には使われなくなってなお明るく照らす街灯のようなものが設置されおり、路線は一種の駅のホームのような場所までしっかりと繋がっている。
無論旧都方面へと向かって伸びていた。
路線を中心に左右に広く作られており、右側は上へと向かって道が作られており、左側は下へと向かって道が続いている。
「どうやら左側は当時の居住区画になっているみたいね。で、右側がこの施設の本命か…居住区画の方からはモンスターの気配がするけど…上まで上がってこないわね。となると…この場所に魔除けになるような何かがあるのか…」
アンヌは怪しい場所を探り始めるがイマイチピンとくるものが見つけられなかった。
これ以上ウロウロすると下にいるモンスターが勘づいて上に登ってきかねない。
来た道を戻り魔除けの準備をしているメンツの前まで行くと、リアンが居なくなっていることに気が付いた。
「リアンのお爺ちゃんは?」
「ジャックお兄ちゃん達を迎えに行くと車に乗って走っていきましたよ。街の中に入ると目立つから出てすぐの外に隠れると」
「俺達は此処の確保。で? アンヌ姉ちゃん。中の様子はどうだった?」
「結構広い建物みたいね。広い場所まで行くのにソコソコ歩くけど、広い場所まで行けばかなり明るいわよ。地下にいるモンスターが昇ってこないのが不思議だけど。魔除けみたいな装置も見受けられないのよね?」
「灯に偽装しているのかもしれませんね。ホビット大陸では灯に偽装して街中に散布して街中にもしモンスターが現れても人っ気のない路地まで追い詰められるようにしているんです」
「だね。その技術を応用しているんだと思うぜ。アンヌ姉ちゃんが居た場所は明るかったんだろう?」
「うん。そっか…あの灯で…」
ちょっと感心したアンヌ、紫色の煙を放っている人の頭程度はあるお香の入れ物を見てふと尋ねる。
「あれってどれくらい持つの?」
「えっと…二十四時間は」
「そっか。後はジャック達が上手くやるのを祈るしか無いわね。さっき連絡が来た通り私達は此処で彼らを待ちましょう。どうやら向こうは向こうで厄介な相手がいるみたいだし」
「大丈夫かな? 向こうは封印を使ってくるなら結構厄介だよ?」
「大丈夫よ。ジャックお兄ちゃんとファリーダお姉ちゃんは効かないはずだし」
「一番危ない人が一番聞くじゃん!」
「それも大丈夫よ。それが分かっているジャックがディラブを最前線に送ることはしないし、もしそうされてもすぐ救出できるように手は打つはずだから」
作戦を立てる上で隙の無い男なのだとアンヌはため息を吐き出しながら言葉を漏らす。
なんだかんだ言って戦術と戦略の達人ではあるのだ。
勇者と言うよりは指揮官が一番似合うかもしれないとアンヌは昔っからそう思っていた。
どうでしたか?
次は再びジャックサイドのお話に映ります。
では次は円環のドラゴン第二十七話でお会いしましょう!




