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真実の手前 2

円環のドラゴン編二十三話目となります。

今回は国家元首のお話の前半戦となります。

では本編へGO!

 屋敷の中には人の気配が少なく、一番奥に一人住んでいるのが分かるぐらいなのだが、まあドラゴン族が群れて過ごすというのはあまり想像できないので多分だがこれが一般的なドラゴン族の感性なのだろうと思い深くはかんがえないようにした。

 別段案内があるわけではないが別段広い屋敷と言うわけでもないし、人の気配がはっきりと奥から感じるので迷うことは無かった。

 サクサクと奥へと向かって歩いていき、家主が居るであろう部屋の扉の前へと辿り着いたわけだが、どんな美女が居るのか、それとも老婆なのかと想像しながら木製のドアをノックしようと右手を伸ばすところで奥から「ノックは必要ない。入ってこい」という素っ気ない反応が返ってくる。

 多少の戸惑いと共に俺達は両開きのドアをそっと開けて中へと入っていく。

 広い部屋の壁を埋め尽くすような量の大量の本棚、その本棚にはもう本を差し込むようなスペースは存在しない。

 それ以外にも豪華な装飾のある灯、書斎にありそうな大きな机とその上に乗っている大量の本と書類は此処の家主が智者であることを物語っているようにも思えた。

 無論その本をインテリアなのではと疑いたくもなるが、その割にはどの本も随分と読みこまれているのがぱっと見で分かる。

 何よりその書斎の椅子に座り込んで俺達はまるで睨みつけるような鋭い目つきの目、それ以上に貫録を感じさせる佇まいが彼女…ではなく彼に智者であることを裏付けている。


「ドラゴン族って皆女の姿をしているって思いましたけど…」


 メイビットの戸惑いも分かる気がする。

 男なのだ…どう見ても、どう認識しても目の前にいる人は男、頭に角が生えているし纏っている魔力も彼がドラゴン族だと認識させてくれるが、ドラゴン族は本来単一で種を残すことが出来るので女しかいないと聞いている。


「私達ドラゴン族は人の姿が本来の姿ではない。爬虫類の様に見える姿こそが本来の姿だ。あくまでも住みやすいように人の姿を取るようになっただけだ。それだけに人の中にドラゴン族の血が混じると魔力の暴走具合でドラゴン化することが時折起きる。それはドラゴン族単一でしか種を残せないドラゴン族にとっては数を増やす方法でもある。一昔前まではそうやって連れてきてドラゴン族の数を増やしていたと聞いている。実際そこにいるドラゴン族はそうやって血が混じり結果ドラゴン族になったのではないか?」


 まあそう言われてしまえば分からないではない気がするけど、要するに種としての生存本能が他より強いのだろう。

 それに単一でしか種を残せないとなると自然と他者を自らの種にするしか生き残る道が無かったのかもしれない。

 あまり褒められるようなことではない気がしたが、そんなことを言ったら俺もヒューマン族の中にナーガの血が紛れているからこそ生まれてきたナーガ族なので人の事は言えない。


「元よりヒューマン族は他者の血を混ぜると突然変異の様にその種族に変異することは時折起きていた事だ」

「え? そうなんですか?」

「君達ヒューマン族は知らないだろうがな。いや…教会とやらが規制しているという話だったか? それ故に追放なんていう制度があるんだよ。あれは都合の悪い真実を捻じ曲げる為にある」

「秘匿にするの間違いじゃなかろうか?」

「同じことさ。都合が悪いからこそ秘匿にするのさ。身勝手なもので自分達で受け入れるかどうかも分からない。下手をすれば秩序が乱れて人の世が壊れるかもしれない。怖くて恐ろしい真実から目を背け、遠ざけて生きる。下手をすれば殺すことも辞さない。ヒューマン族とはどこまでも中途半端な生き物さ。進化の過程にある種族」

「ですが、今そのヒューマン族は脱しようとしています」

「そのようだ。そのヒューマン族の女を見れば分かる。フン。まあ良い。貴様達が私の所まで訪ねてきた理由は分かっているつもりだ」


 そうだ。俺達が此処まで来た理由はこの人から今代の国家元首が何を考えているのか、今どうしているのか、何をしようとしているのかを知るためだ。

 その為にここまで来ている。


「今代の国家元首の名は『ベルメール』と言う奴だ。性格は…臆病で自らは絶対に前に出たりはしないが、そのくせ野心が人一倍強く、古くからドラゴン大陸においては資産家の一家だったそうだ」

「ドラゴン大陸に住んでいるドラゴン族に資産家なんてあるんだな」

「別段珍しくは無かろう? 文化を形成していくうえで資産は必要だ」

「まあのう」

「だからと言うわけではないが、自ら狙われる立場を嫌がり代々国家元首のような立場とは無縁で生きてきたわけだが、今代はどうやらそういうわけでは無い様で、野心に駆られて様々な人を金の力で利用して蹴落とし、結果国家元首を務めたわけだ」


 そこまで聞いているとそういう形でトップに立った人間がろくに政治が出来るとは思えないけれど。

 そう思い込んでいると案の定だったようだ。


「実際そんな動機で国家元首に政治が出来るわけが無かったのだ。君たちは一人の人物と恋に落ち結果国家元首に成る際に裏切られたと聞いているはずだ」

「ええ。そのように話を聞いています。違うんですか?」

「正確には始めっから恋になど落ちていなかったのさ。そういう形で相手を騙し自らが上に立とうと考えた。しかし、そんな形で上に立ったは良いが、結果相手にそれを見抜かれ、継承の証を盗まれた挙句彼女事封印してしまった。これでは次に次ぐことも出来ないが、このままズルズルと長引けば自らの身が危うくなる。だが、危険なことはしたくない」

「呆れた。めんどくさい」

「儂もそう思うよ? そんな折君たちの噂を外から仕入れた。ディフェンダーの連中が最近頼りにしている他に見ない他種族を無数に抱えるパーティー。種族ごとの問題に顔を突っ込んでは解決して回っていると」

「別に狙っているわけじゃないぞ? ナーガ政府から要請にこたえるとなるとそれしか無いわけで」

「分かっておるよ。そんな所じゃろうなとな。儂の要請に応えてくれるなら解決方法を伝授しよう」


 めんどくさいおっさんだな~嫌と断ったら最後そのまま俺達の情報を流しかけない、多分するだろう。

 実質脅しである。

 内容次第なんていっても教えてくれないのが目に見えて分かるのがより一層質が悪いのだ。

 俺が代表して「分かった」と答えると彼は物怖じせずにはっきりと告げたのだ。


「その封印場所に今代の国家元首を連れて行け。そうすれば国家元首を巻き込む形に継承の証が手に入るはずじゃ」


 などと言い始めた。

 それがこのドラゴン大陸の事件を解決する方法らしい。

 国家元首の拉致と護衛をしろと?

「安心しろ。国家元首などと言っても最早傀儡に近いただの嫌われものじゃ。儂が長い時間を掛けて奴の周りを儂の協力者で固めてある。その所為もあり奴は最近外からの協力者を雇って居るようじゃがな」


 それであの襲撃犯と言うわけだ。

 納得した所で一旦閑話休題。

どうでしたか?

次回はそこから先の話となります。

では次は円環のドラゴン第二十四話でお会いしましょう。

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