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封印は何を齎す

円環のドラゴン編二十話となります。

今回は次のダンジョン前の小休止回となります。

では本編へGO!

 反対側の出入り口へと辿り着いた俺とディラブ、先に見えるこの地下水路の出入り口から漏れ出る微かな光、先にチェックしに行くかそれともここで待つかと思っていると、ディラブがそそくさと歩き出す。

 どうやら待つ気が無い様で、俺はため息を吐き出しながら同じように歩き出すのだが、神殿から遠ざかると同時に後ろの方へと視線を移すと未だにあのメンバーが現れない。

 灯から外へと出ていくと今度は見えてきたのは綺麗な渓流、秋の時期に相応しい赤や黄に染め上がっている紅葉が美しいと思える場所だった。


「ほう…景色が綺麗な場所だな。ダンジョンで無ければ…? ダンジョンじゃない?」

「そのようだな。どうやらこの先がダンジョンになっているようだし、このまま歩いて移動すればいいはずだが、時間が遅いし今日はこの近くで野宿かな?」

「アンヌが駄々をこねないと良いけどな」

「こねる。諦めろって。どのみちこの辺りに宿なんて無いだろ? もう少し先に進めたらあるのかもしれないけど…いや、無いだろうな。他の大陸ならありそうだが、ドラゴン大陸には無さそうだ」

「それもそうか。安全な場所を探したいけど…」


 未だ神殿から出てくるつもりの無いあのメンバーを置いてここを離れるわけにはいかないが、俺はディラブにこの場を任せてこの辺りにあるそうな安全な場所を探すことにした。

 出来る限り遠すぎず、近すぎずの距離感を守りながら歩いていくと野宿できそうな手ごろな開けた場所を発見した。

 俺はポーチの中にある小袋を取り出して中にある砂のような道具を取り出してお香入れに入れてから火をつけて香り放ち始める。

 ピンク色の煙が徐々に上空へと向かって登っていき、俺はその間に周りに野宿の為の道具を取り出す。


 あの男がこの外の大陸にまで足を運んでいるとは知らなかったと思っていると、俺の端末が鳴り響く。

 どうやら例の人物から連絡が来たらしく、俺は早速メッセージを確かめるように眺めていると草がほんの少し動いた音が聞こえた。

 俺は見ようとしてた手を止めて草が揺れた方向へと顔事視線を向けてジッと眺める。

 動物やモンスターなら呼吸音で分かるのだが、呼吸音が全くしていないという事は呼吸音を隠しているという事だ。

 なら動物ではないだろう。

 向こうから出てくるのを待っているが一向に出てくる気配が無い、かといってこの場から逃げ出したのかと確認するのもためらわれる。

 だが、このまま平行線も良くないだろうと思い俺は襲われるのを覚悟にして透視をしてみると、白い人形のようなものが浮かんでいるだけだった。


「あれは…遠距離で使う式神か? 古臭い術式を使うな。今時人形を使った式神なんて流行らないだろうに。それに…気になるんだよなぁ…あの式神」


 式神にも様々な種類があるわけなのだが、動物型や死体を使うという奴も存在するが、中でも最近有名なのは紙切れなどを使う方法だ。

 手軽で使い捨て出来る式神なので最近は結構人気がある様で、俺も何度か見たことがある。

 一昔前までは確かに人形タイプが人気だったと聞いたことがあるが、今では流行らない。

 問題なのは式神の中にはカウンター型と呼ばれるタイプの式神が居ることだ。

 要するに式神自身が攻撃を受けることを前提に作り、同時に攻撃を受けると術式を発動することが多い。

 あの式神どうにも纏っている魔力からしてカウンター型のようだが、バレない様に魔力をギリギリまで抑えているようだ。

 攻撃をするわけにもいかないが、このまま逃がすわけにもいかない。

 カウンター型だとしてどんなカウンターを術式として登録しているのか、という一点なのだが。

 単純に攻撃術式が一番個人的に面倒だが、この場合『封印』と言うのもあり得る。

 しかし、俺にはそれが一切通用しない。

 こうなれば一か八かで掴めばいいと思い草むらに手を突っ込んで式神を掴んでみると、掴んだ瞬間術式が発動する音と俺の刻印が反応して術式を中和する音が同時に聞こえてきた。


「やっぱり封印か…嫌な感じがするな…このタイミングで封印の術式を組み込んだ式神を使う奴がいる。だが、こういう式神は近くに術者が居るはずだ」


 俺は広範囲に向かって魔力を使った索敵術式を展開、エコーでも使って周りを調べるように詳細を確認すると、ここから一キロほど離れた木々の間に人の気配を感じた。

 パッと見た感じホビット族の様に思えるが、式神を使ったのはあいつのようだ。

 だが、式神も基本は魔力をある程度扱える種族で無ければ使役できない。

 ホビットはその術が無いというわけだが、となるとあいつは式神を渡された使っただけで、黒幕では無いという事になる。

 俺は瞬間移動の術式を使い奴の後ろに回り込む。

 回り込まれたホビットは驚きながら俺に向かって黒いナイフを取り出すが、俺は冷静にナイフを持っている右手首を弾いてナイフを飛ばす。

 そのまま首を軽く占めてから腕の骨を折る。


「喋れないということは無いはずだ。誰に命令された? 何故ドラゴン大陸にいる?」

「名前は知らない! ドラゴン族に頼まれたんだ。今この辺りをウロウロしている様々な種族で集まっている奴らを妨害しろと!」

「じゃあ。式神もそいつから貰ったのか?」

「そうだ! そいつも別の奴から貰ったと聞いている! 許してくれ! もう手を出さない!」


 嘘をついている感じがしないので本当の事を言っているようだし、俺は念には念を入れて今後近づかないと約束させてから解放した。

 俺は敢えて式神を返さずに握りしめ、式神をジッと眺める。

 俺達に刺客として放ったあのホビット族を雇ったドラゴン族は間違いなく国家元首の手の者だろう。

 先ほどのメールにもそのことが描かれていたし、そんな回りくどい方法を取るのは腕に自信が無い証拠、そんなことをしそうなのは国家元首しかいない。

 問題なのはその国家元首の手の者にこんな式神を手渡した奴の方が気になるわけだが、これは持っていた方が良いだろう。

 もう式神として使えないだろうが、後でナーガの研究員にでも調べさせればいいさ。

 どうやら国家元首は俺達が邪魔らしい。

 まあ、向こうの内情を調べようとしているんだから分からない話ではないが、こうなると意地でも知りたくなる。

 俺はそう思い悪い顔をしながら微笑んだ。

 見えないけどさ…俺ナーガだし。

どうでしたか?

次のお話も小休止回となりますが、ここで出てくる国のお話は中央大陸でも話題に出てきます。

では次は円環のドラゴン第二十一話でお会いしましょう!

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