勇者と女神 4
円環のドラゴン編十四話目となります。
では本編へGO!
バル曰く現在の政権トップが何を隠しているのか、今現在俺達が何を出来るのかを俺達は知る必要があるわけなのだが、バル曰く「自分はあまり良くは知らない」とのことで、その人ぐらいしか知らないのではとのことだった。
現政権トップが何をやらかして引きこもっているのか、それを知るいい機会にはなるだろうし、現状の打破を行うにはどうしても必要な事だろう。
俺達は帰り道の最中その話を聞くことになった。
そもそも現在政権の置かれている首都は封鎖状態になっており、とてもではないが外からやってきた他種族を通してくれる状態ではないとのことだ。
中へと入る術を含めてそれを教えてくれる人は此処から更に首都の方へと向かってダンジョンを二つ超えた先にあるとのこと。
「とはいえ。昨日まで超えてきたダンジョンとは違うディフェンダーがモンスター討伐を行っていない区画です。突破するのなら少々準備をしておいた方が良いでしょう。引き続きファリーダが同行しますので。こき使ってやってください」
「そのダンジョンはどんな…?」
「一つは地底湖ですね。地底湖に作られた人工的な神殿となっております。地上を超えるとなると断崖絶壁の山を越える必要が出てくるんです。回り込むとなると更に面倒な道を進むことになります」
「ファリーダの言う通りで、この神殿はクイーン種とキング種が揃って中心部分に居座っております」
「もう一つは旧都ファルデリーナですね。霧が立ち込める亡霊が住み着いた古い都です。とあるドラゴン族が死んだ際に恨んでその町を呪ったと言われています。この二つを突破する必要があります」
中々面倒な気がする。
まあ、ダンジョンが面倒なんて大体面倒な気がするので今更かと諦めモードで居ると、目の前に街の出入り口である木で出来た門が見えてきた。
まあ、出迎えをするような奴等じゃないので全く誰も居ないのは想像したわけだが、いざ誰も居ないと流石に不満が残る。
後で不満を口にしてやろうと思っていると、門の端っこに背を預けて項垂れているエロ爺を発見した。
基、元爺のエロドラゴンを発見したのだが、この爺は一体何をしているのだろうか。
「何をしているんだよ」
「…誰も相手をしてくれん!! 儂は早くこの大陸を出ていきたい!」
「………面倒だな。用事が終わるまでは我慢しろって。後で中央大陸にでも帰った時に楽しめば良いだろうに」
「ほう…リアン殿は女子の体を欲しておるのかな? 私で良ければ今夜共に」
テンションが爆上りするエロ爺、俺はこの爺の後ろ姿を前にして勇者の剣を抜きそうになるのをぐっと堪える。
深いため息を吐き出して俺はファリーダに「宿は何処にあるのか知っているか?」と聞くとファリーダは案内してくれた。
「あまり使われない宿なんですけど。そもそも外から人が来ることが珍しい大陸なので。時折旅をしているドラゴン族がやってくるぐらいです」
「ドラゴン族で旅をするのなら外に出ないのか?」
「そうですね…あまりと言うべきかもしれませんね。勇気が無いのかもしれません。怖いんですよね。他の種族を知ることで自分たちの価値観を失うのが。皆」
「そう言うものかね? 俺はそれが当たり前だから今更だが」
「色々と旅をしてきたんですよね?」
「まあな…」
色々な場所を旅をしてきたのは確かだし、同時に俺がその旅の中で仲間を求めなかったのは事実だ。
勇者時代の俺がどうして仲間を求めなかったのか、俺自身はっきりと分かっているわけじゃない。
「一人で寂しいと思わなかったんですか?」
「どうだろうな。思っても我慢していただけなのかもしれない。多分心の何処かで俺はこの旅で終わりなんだって諦めていたんだろうな。その時は俺は自分がナーガ人だとは知らなかったし」
「では今はどうして仲間と共に旅をしているんですか?」
「…理由は無いさ。死ぬつもりで旅をして、結果生き残って、新しい旅が結果から始まった時、付いてきたのがリアンとアンヌだっただけで、この時にあの二人が付いてくると言わなかったら今でも俺は一人で旅をしていたかもな」
「成り行きですか?」
「そういってしまえばそうだな。でも、俺は人生なんて成り行きが半分だと思うんだよ。全ての行動が必然だったという方が無理があると思うんだけどな」
人生はきっと半分以上が成り行きなんだと俺はそう思っている。
きっと俺は他人を巻き込みたいと思っていたわけじゃないのだろう。
ただ俺は勇者時代の知り合いに一緒に旅をしてくれる人間なんてアンヌぐらいしかいなかったんのだが、俺はアンヌを巻き込みたいとは思わなかったんだ。
嫌だった。
でも、アンヌがあんな体になって初めて連れて行かなかったことを後悔した。
だからアンヌを連れて行くことに躊躇いを持たなかったのかもしれない。
「…良いですね。私はそんなふうに思える人は居ませんでした。この角が折れた時ですらバル様しか気にしてくださらなかった。ドラゴン族は引きこもりがちで変化を恐れる。でも、私はそれが嫌で外を旅してみたいと何度もダンジョンへと繰り出して角が折れてしまった」
「勇気の産物なわけだ。なら痛い買い物かもしれなくても勇気の証なわけだ」
「そうなのかもしれませんね。世界は何色に溢れていて、歩くたびにどんな音がするのか楽しみです」
「知ることが出来ることが幸せだと思えるその完成が大切だと思うぞ」
怖いから引きこもるのか、怖くても知りたいと前に進むのか。
迷う事も、躓く事も立ち止まるよりはよっぽどマシだと思う。
大きな木で出来た二階建ての家の玄関の前までやってきてファリーダは笑顔で俺を仲間で案内してくれた。
「では。私はこの辺りで。明日の朝向かいに行きますね」
俺は「ああ」だけ言って自分の部屋へと入って壁に二本の勇者の剣を立てかけてから窓際にある木で編み込まれている椅子に座り込む。
すると部屋のドアをノックする音が聞こえてきて部屋の中へと堂々と入ってくるのはアンヌだった。
「終わったの? どうだった?」
「? なんというか…特に面白みは無かったな。必要な過程だと言われたらその通りだけど。明日の朝にはダンジョンを二つ超えて目的の人物に会いに行くぞ」
露骨に嫌そうな顔をするアンヌに対していつもの感じてため息を吐き出しふと微笑むのだった。
どうでしたか?
次からはいよいよダンジョン攻略の開始となります!
では次は円環のドラゴン第十五話でお会いしましょう!




