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勇者と女神 3

円環のドラゴン編十三話目となります。

いよいよ勇者と女神のお話の中心です。

では本編へGO!

「そもそも女神はこの世界の住民ではなかったそうだ。別の世界からやってきた彼女は『モンスター』と呼ばれている化け物と戦うために自らを戦える体へと改造していたそうで、その結果彼女は短命と言う宿命を受け入れていた。だが、結果からすれば彼女は当時この世界を襲っていた脅威そのものを討伐することには成功した。その際に協力したのがドラゴン族とオーガ族とホビット族だった」


 語られるその言葉一つ一つに重みをしっかりと感じてしまう俺なのだが、その話の中で疑問に思う部分があるとすればどうしてナーガがその中に居ないのかという事だ。

 当時からナーガは居たはずであり、ドラゴン族ですら協力していたのにナーガが参加しなかった理由は何なのだろう。


「自らの命と引き換えに女神と後に呼ばれる彼女は討伐したわけなのだが、その時共に討伐した者達の中にナーガは…いなかった。その代わりこの先彼女の世界に危機が訪れた際に立ち上がると決め、彼女の力を継承することにした。しかし、女神が宿していた『勇者システム』と彼女自身が名付けた勇者の刻印は協力過ぎた」

「協力過ぎた?」

「はい。無制限に強くなり続けていく勇者の刻印を安定するためにも策を弄するしか無かったのです」

「その通り。その策の中心にいてその策を完成させるために彼女自身と共にやってきた共通の力を与えられた彼女自身が言うところの『実験体』の男性を複製し複数のパターンを製造して勇者の刻印を完成させるために中央大陸を使用した。これが一連の話の真相だ」

「中央大陸が当時人が住んでいなかったのはホビット族の争いごとが原因で他の種族が不干渉を決めていたからか?」

「ええ。当時の内海が浮遊大陸へと変貌したことで未開の地となった中央大陸、その中央大陸にヒューマン族を解き放つことで彼らを私達勇者にゆかりを持つ一族は管理してきたのです」

「もう一つ分からないことがある。どうしてナーガなんだ?」

「ナーガが勇者の候補にいち早く決まったのは体細胞のデータがヒューマン族と比較的似ていたからです」


 似ているだろうか?

 全く違うような気がする。


「そういう意味ではなくヒューマン族、魔力そのものに対する耐性率や細胞の詳細な部分の一部が他の種族に対し似ており、同時に勇者の刻印との適合率と言う点では百点満点だった。ヒューマン族では『絶対に耐えられない』という結果は女神で分かっていたからな」

「はい。ナーガは代々耐えられるどころかその耐性や適合率故にナーガはむしろ肉体を最大値まで強化できるという点があり、勇者の刻印の継承者として決まったのです。ですが…」

「この話は当時のヒューマン族には伝えられませんでした。ですが、勇者の刻印のシステムを完成させている間にモンスターに関連するトラブルが生まれた。そのトラブルを解決するのに勇者の刻印はまだ強すぎた。だから一旦ヒューマン族を適合車として選び、失敗した後にナーガに継承させるという仕組みを作り、その為だけに教会を想像したのです。女神と言う都合のいい存在がいましたから」

「教会は勇者のシステムを完成させるためだけの傀儡という事か?」

「睨まないでおくれ。決めたのは私達ではないし、これは当時の一部のヒューマン族の同意を得た上での決定だった。その際に別の実験もヒューマン族の中で行われた。ヒューマン族の長命化という実験がな」

「ジャックさんもご存知の通りでヒューマン族は他の四種族と比べて寿命が短いという欠点を持っています。それを解消したかった。ヒューマン族とナーガ族とドラゴン族の間で協定が定められ、こうして運命の時を迎えたという事です」


 勇者システムを完成させるために作られた教会という傀儡、その為に犠牲にされたヒューマン族の勇者達、それこそあの男が裏切った理由なのだろう。

 知ってしまった真実と失敗が前提の計画、自分を土台にしているこの世界の在り方、いずれ忘れられていく自分が嫌になったのだろう。

 勇者として期待され、その期待に応えられず、期待に対しての重みが憎しみに変わり果てて、それ故にこの世界を壊したいと願ってもおかしいとは思わない。

 それを俺は受け入れるつもりは一切ないが。


「ある意味彼に味方している者達もその裏にいる黒幕もきっとこの世界の在り方が作り上げた歪みなのでしょう。だからこそ、貴方の様な勇者を完成させる必要があるのです」

「そして、その当代の勇者とヒューマン族の長命化の成功体を作ることを命令され、自分の息子と娘に生きていて欲しいという我儘で実験を行ったのが…」


 ドライ最高司祭というわけだ。

 それはエゴだよ。


「そうでしょうね。結局で女神と呼ばれた彼女の意思を受け継ぎ、いずれ別の世界を救うと約束し、その約束を果たすためだけにヒューマン族を作ったこともエゴです。我儘です。でも…その我儘が貴方を作ったのですよ?」


 その言葉に俺は口を閉ざしてしまう。

 その言葉を否定する言葉を俺は持ち得なかった。


「どんな世界だって結局でエゴなのでしょう。歴史を動かしてきた人間は誰もが結局でエゴで動かしている。そして、エゴが時に世界を滅ぼすのでしょう。そして、決してそれを抑えることが世界を救うという事にはならないことは貴方が良く分かっている事では?」

「………」

「貴方がその真実を知りどうするのかは分かりませんが、いっそ重たいと言って投げ捨てるというのも一手だと思いますよ?」

「出来ないよ」


 その言葉は考える前に俺の口から出てきていた。


「出来ないんだよ。背負うとか重みとかそんなことを考えたことは無い。でも、例えば目の前で「助けて」と言っている力の無い子供が居たとして俺は見捨てられるかと言われたら俺は出来ない。目の前に困っている人を救う為に世界を救わないといけないのなら俺は救うよ。それは俺が勇者だからじゃない。俺だからだ。それが俺のエゴなんだよ」


 俺の我儘なんだよ。

 女神なんて知らない女性の為ではないし、今まで傀儡となり果てても計画を遂行した人達の為でもないんだ。

 俺が俺の為に、俺が俺であるためにこの道を進むんだ。

 するとバルはクスクスと笑った。


「あの日のドライを見ているようですね。貴方に背負わせると決めた時も、アンヌというあの少女に生きていて欲しいと願っていた時も彼は自分の責任で自分の選択で、自分の我儘で選んでいました。ならその我儘を私達も信じてみましょう」

どうでしたか?

そろそろ再びダンジョン攻略ですね。

では次は円環のドラゴン第十四話でお会いしましょう!

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