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見得ぬ思惑 3

円環のドラゴン編十話目となります。

では本編へGO!

 地下に広がるダンジョンには一切無視をすることとして、俺達一行はディラブの暴走のお陰で魔物と戦うことなく無事山の麓へと辿り着いたわけだが、真下から覗き込むように谷間を見上げると高さに首が痛くなる。

 谷間には大きな川が一本流れており、この川を上流へと向かって歩いていけば目的地にたどり着くわけなのだが、俺達の足が完全に止まった。

 その理由は丁度谷間のど真ん中に鎮座している巨大な一つ目の人型モンスターが一般的なヒューマン族の倍はあるだろうこん棒を握りしめて座り込んでいる。

 まあ、倒すことは別段困る事ではないのだが、ああいう敵の場合大きさなどから考えてもうろつくタイプじゃない。

 という事はこの場にずっと大人しくしているという事になるわけなのだが、そんな場所を彼女…ファリーダは通ったのかと言えば彼女曰く「来るときはいなかった」とのことだった。

 無論彼女が嘘をついているという推測もあるが、それは何となくだが無いような気がする。

 しかし、俺達が此処を通ることを誰かが知り、それに対する対抗処置を取ろうとしたのなら随分雑な処理だというしかない。


「前の街で出会ったあの金持ちはあり得るか? いや…無いな。元勇者がこれから向かうのに足止めにもならない敵を配置しないだろうな」


 ディラブの言う通りで、もし元勇者の足止めなり討伐なりを目的にしているのならこんな中途半端な戦力を送り込まない。

 確かに大型タイプなのだが、キング種にも至れないぐらいの強さで、正直俺一人でも瞬殺出来るだろう。

 あるとすればファリーダの足止めなのだろうか?

 ならどうして彼女が街に行く段階で足止めをしなかったのか、どうして足止めをする必要性があるのか?

 どのみちさっさと倒すべきだろうという判断を下し、同時にディラブがダッシュで襲い掛かろうとしているのを俺は制止した。

 そろそろ俺も準備運動がてら戦いたいと思っていた所で、俺は大太刀の方を抜いてから右足に力を込めて一気に距離を埋める。

 地面を蹴った瞬間に生じる大きな音は一つ目の巨人の意識を俺の方へと向けさせるには十分で、巨人は俺の走る速度に合わせるようにこん棒を振り下ろすが、俺は当たる直前で速度を一気に上げて巨人の足元へと辿り着く。

 そのまま速度を緩めない様に両足を切り落とし、そのまま敵の後ろで急停止しつつ前へと向かって倒れようとしている敵の胴体を駆け上がっていき、ブラックホールの術式を大太刀へと込める。

 そして、黒い一閃を俺は巨人の胴体を縦に切り裂いた。


「ジャック様…やはり強いんですね。ナーガ族の勇者は代々強いというのが通説ですが、ジャック様はその中でも頭が一本分とびぬけていますね」

「だが…負けたよな?」

「武器の差ね。同じ性能の武器を同じレベルで引き出しているのなら条件は変わるわ。それでなくてもナーガ族とヒューマン族の間には差がデカいもの。特にジャックは魔術の腕前も剣術の腕前も上手いはずだし」

「じゃがジャックは大剣より太刀の方が上手く使えて居るのう」

「と言うよりはジャックお兄ちゃんは元々両手を使うような両手剣みたいな武器より、刀や片手剣のような武器の方が在っているんでしょうね」

「それでも太刀を片手で扱うのはジャック兄ちゃんがナーガ族で体が大きいからでしょ? 一般的なヒューマン族は太刀を片手で扱うのは難しくない?」

「出来る人はそれなりにいるとは思うけど、その状況で重みの違う小太刀を扱えるのはジャックぐらいでしょうね」


 失礼なことを言っている気がするので俺は彼らに対してしかめっ面をして返すが、残念なことにナーガは表情を読めないので全く理解されなかった。

 今でもヒューマン族時代の癖が出てしまう。

 癖を直さないとな。


「でも、誰かしらね。私達の邪魔をしようとしているのは…」

「ディフェンダーじゃないじゃろうし…かといって勇者ゆかりの地のドラゴン族でも無かろう。となれば…」


 このドラゴン大陸の政府トップの関係者か…トップ自らか…問題は何処で情報を入手したのか。

 まあ、街に情報源をしっかりと配置していたのかもしれない。

 その情報はどうやらあまり当てにはならないようだし、この際気にしないで良いかもしれないが、どうにもピンとこないのだ。

 邪魔をするのならもっといい手段がある気がするし、相手の素性も目的もイマイチパッとしないのだ。

 そのせいもあり非常にモヤモヤするような感じをずっと感じている。

 今は前に進むことを考えたほうが良いのかもしれない。


「他にも罠があるという可能性は?」

「あるかもしれないけど、ならもう発動していた方が良いでしょ? 罠があるかもと警戒されてからじゃ遅いでしょ?」


 アンヌの言う通りで俺が巨人を殺したタイミングで発動しなければ意味が無いだろう。


「まあいいさ。とりあえずここを抜けよう。何があるか分からないし」


 俺が山の谷間を抜けるまで先頭を歩くことにし、ゴブリン種の群れを蹴散らしながら先に進み、山の谷間を超えることに成功して俺はふと先ほど通った谷間へと顔を向けた。

 特に巨人が復活している様子も無く。

 何か罠のようなものが発動している素振りも無い。


「分からんな。結局あれは何だったんだ?」

「こうして考えさせて足を止める時間を延ばすのが狙いかもよ? 早く行こうよ。こんな場所で足を止めている時間が勿体ないでしょ?」

「ネリビットの言う通りよ! 早く行きましょ。敵の思惑が何か分からない以上推測することにも意味は無いわ。早く向かって用事を済ませてしまいましょ」

「ですね。アンヌお姉ちゃんの言う通りです。行きましょう」


 まあその通りだと思って歩き出す中、俺はポケットから携帯を取り出してとある方向へと向かってメールを送る。

 するとものの数分で返事が返ってきた。


『報酬は?』


 まあ、そう来るよな…タダ働きはしないという主義の女、俺がこの世界で最も金銭関係と情報と言う一点においてのみ信頼している奴だ。

 多分知りたいと言えば調べてくれる。

 だが、同時に俺が今まで絶対に頼らなかったのは物凄い金額を要求されるからだ。

 今までなら大陸内にいるディフェンダーなり政府の関係者なりに頼ることが出来たが、今回はこの手段があまり役に立てない。

 となれば情報屋に頼るしかないのだ。

 俺は大き目のため息を吐き出して前金を入金すると、彼女からは『明日には報告する』と言うメールがあっという間に帰ってきた。

 まさか、明日には情報がやってくるとは、前金でどれだけやる気を出したんだ?

 アンヌだけが俺の方をジッと見ているので、俺は「何でもないよ」と言いながら携帯をポケットにしまい込む。

 とりあえず明日になれば分かるはずだ。

どうでしたか?

次からはいよいよ勇者の剣と刻印にまつわるお話の始まりとなります。

では次は円環のドラゴン第十一話でお会いしましょう!

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